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タヒチの星の下20最終話BL 突然の別れわが愛するTAO

           ノンフィクションBL

                             

              <突然の別れTaoの星>


2日前に日本から荷物が届き開いていたら手紙が入っていた

あなたがアメリカに渡って、もう5年になります。
病気になってないか。ご飯は食べているのかとても気になりますが
あなたのことだから大丈夫だとは思います。
美味しいお米が手に入りましたので一緒に送りますね・・・・・・・母

日本と同じように日本食は沢山売られているのにな・・・と思いつつ中身を
取り出して、ふと窓の外を見た。
もう午後10時だというのに真下を通る車の音や人の声がいつもより騒がしかった。もうすぐタオが食事をするために戻って来る。今夜はタオの好きなカレーを作っていた。

ドンドンドン激しいドアのノックがした。鍵を開けると真っ青な顔をした
トムとマーガレットが痙攣したように立っている。
「どうしたんだよ2人揃って、カレー作ったから二人もどう?日本の母から荷物が届いて・・・」言葉を遮るように

「トニー!落ち着いて聞いてくれ」真剣な目をしたトム
一瞬、言葉を飲み込み唇を噛んだ。真っ青な顔をしたマーガレット
「taoが・・・事故に遭った。トラックに追突された。今、病院から連絡がきて手術をしている」
「トニー直ぐ行こう!」外の音が瞬時に全て消え去りボクは言葉なく
マーガレットとトムに支えられトムの車に乗った。
ずっとマーガレットは、ボクの手を震えながら握り無言だった。

病院に到着すると入口に向かい全速力でボクは走った。
「こっち!急げ!トニー!」足が縺れて走れなかった。
ゼーゼーとボクの息は乱れ手術室の扉が開いた。
そこからドクターが出てきて
「手は尽くしました」と言葉少なく言われ
「タオは?・・・」これ以上の言葉が見つからず精一杯だった。
「できるだけ近くにいてあげてください。もうすぐ処置が終わります」

30分ほどしてドアが開きストレッチャーに乗せられたタオはほゞ全身に
包帯が巻かれ、特に頭部の部分は顔も見えないほど痛々しく巻かれていて
言葉も出なかった。何本も繋がれた管、回りには3人ほどの看護師が慌ただしくガラガラと病室に向かい始めた。入ると冷たい色がボクらを包み、心拍数を図る器具点滴と呼吸器などおぞましい光景だった。
それらが如何に重篤であるか想像できた。

タオの片側にはトムとマーガレットが座り、反対にはボクが座りタオの右手を握っていた。
モニターの心電図の波長は安定しているように見えたが時々
大きく乱れる時がある。


tao

神さまマオヒの神々どうか どうかどうかタオをボクから奪わないでください

繰り返しボクは必至に祈り続づけていた。
煌々とした明るい病室には、酸素の音とボクらの呼吸があるのみだった。

ボクは、タヒチに初めて行ったことを思い出していた。
灯りの少ない浜に寝そべって
      トニーオレの右腕を持ってみろ こう? そうだ!              
                                       

         動かすぞ、ゆっくりと空に向けあれだ!
         十字架になってるだろ お前に見せたかった南十字星だ  

         あ!見える見える!

ピカピカには光ってる頂点、
真下にある星横にある2つの星
これが南十字星なんだと教えてくれた
初めて見る星座に興奮していた


南十字星

タヒチには、この星を見ると
困難や希望を乗り越えられると信じられているんだ

いつでもオレはこの南十字星の中にいる

タヒチの満天の星の中で聞いたタオの言葉が思い出され….
握っていた右手を握り返してくれた気がして……タオ?……
ボクはここにいるよ---我に戻った。

「日本にも行こうねタオ!
タヒチで約束してくれたんだから忘れてないよね」
静かにタオの耳元でボクは囁いた。

窓側に立っていたトムが、「トニータオの右足見てみろ」シーツをめくると
「お前は知らないだろう。よく見てみろ」
太陽-バニラの花-TONYの文字を見つけた。
いつの間に…..

バニラの花言葉 永久不滅

「もう半年になるんだぞ。自慢気にこのタツーゥを見せてた」

「太陽は、神聖な意味があってな、そこにお前の名前を入れたんだ」
全く知らなかった…..タオ…..

「お前とずっと一緒だと思っているはずだ」
愛する人の名前を入れる習慣は、世界中あるけどタヒチ人にとっては特別なんだとか言ってたぞ」
「心からあなたを愛しているのね。タオはそういう人…..」
マーガレットがぽつりと呟た。

「トニー?タオがね。あたなの気持ちを思って、日本にいる時から悩んでいるあなた。あなたの家族。性への違和感を話してくれたわ」
「タオは、あなたに必死でそうじゃないって解らせたかったのよ。オレがトニーを護るって立ち直させるって」「そうしてあなたはタオに愛されたの」あなたをタヒチに連れて行ったのも理由があったのよ」マーガレットがボクの肩をさすりながら言った。
                         

                                             ---tao視線からのsailingを読み説く---
           Gavin Sutherland/Eng    IPPEI Tachibana /Jp翻訳-

I am sailingオレは航海する
I am sailingオレは航海する 
Home again再び故郷へと 
Cross the seaこの海をこえて

I am sailingオレは航海する
Stormy waters嵐の海に
To be near youお前の近くで
To be free自由になる

I am flyingオレは飛ぶ
I am flyingオレは羽ばたく
Like a birdあの鳥のように
Cross the sky渡るぞこの空を

I am flying,オレは飛ぶ
Passing high clouds通り抜けて もっと高い雲を
To be with youお前と一緒にいるために
To be free自由になるために

Can you hear me, can you hear me聞こえるかお前には聞えるかオレの声
Through the dark night, far away暗い夜通し はるか遠く
I am dying, forever cryingオレは死にそうに ずっと泣き叫んでいる
To be with you, who can sayお前といるために誰にも知られずに

Can you hear me, can you hear meお前には聞こえるか
Through the dark night far away暗い夜を通し永遠と遠く
I am dying, forever cryingオレは死にそうに ずっと泣き叫んでいる

We are sailing, we are sailingオレ達は航海する 
Home again故郷へと再び
Cross the seaこの海をこえて

We are sailingオレ達たちは航海する
Stormy waters嵐の中の海を
To be near youお前の近くに行くために 
To be free解き放たれるために

Oh Lord, to be near you, to be freeおお神よあなたの近くで解き放たれる
Oh Lord, to be near you, to be freeおお神よあなたの近くで解き放たれる
Oh Lord, to be near you, to be freeあなたの近くで解放されるために
Oh Lordおお神よ         
  
                              Gavin Sutherland/Eng    IPPEI Tachibana /Jp翻訳-

         タオがタヒチの海で歌ってくれたSailingが頭の中で
         繰り返し流れていた

         タヒチの星の下
         タオが海に向かってボクに叫んだのを今も覚えている


         トニー!オレはいつもお前と一緒にいるからな!
         
                                過去を乗り越えて新しい物語をオレと生きろ! 
         今!あの星に向かって誓え!
                                 オレと生きると!

                 
                ----突然けたたましい警告音が響いた----

握りしめていたタオの手。ボクはタオを失う恐怖で震えていた。
数人の看護師、ドクターが駆け足で部屋に入ってきて、ボクらは部屋の隅に
追いやられてゆく---ドクターが何か叫ぶ
ボクはその場にヘナヘナと座り込み タオ・タオ!--- 


No!!
No!!
No~! Tao!!

Please don't die!…Tao!!

Stay with me …Tao!

Don't leave me! Please! Tao----!

死なないで!タオ!逝かないで!ボクは狂ったように

言葉にならない大声で叫んで泣いた

ドクターは、聴診器を胸にあて、タオの目を開くボクらを凝視すると
深いため息をして

         ……..看護師たちは、全ての器具を外し病室から出て行った…..

ドクターがボクらに近寄り
I'm so  sorry for your loss.(お亡くなりになり残念です)言い残し
ボクは狂ったように泣きながらタオを抱きしめる
まだタオは温かく膝まついてタオの手をとりボクの頬に当て
その手に何度もキスをした。

トムは大声で泣き、マーガレットもトムに抱きつき大声で泣いている
声が聞こえた。

幾つもの言葉と笑った顔のタオが目の前に現れて消えていく
トムはボクの肩を強く握り
「外にいるからな」と声をかけ2人は病室の外に出てゆく

一部を残して頭の包帯が外され、まるで寝ているようなタオの美しい顔 
寝ているような穏やかなタオの顔が見えていた。

ボクは何度も何度も顔に手を当てて
そのまだ温かい顔を確かめるように髪をボクは触った。

「聞える?タオ?ボクはまだ魔法にかかってるよ。
タオに出会えたんだよ?」

「今もでもこれからもずっとボクの心にいる!」震える声で囁いた。


         Tao…
                 
                                …I love you…

                  そしてまだ温かいタオの唇にキスした

        
         タヒチの透き通る青い海 

                             満天の星 
           
                            ボクに笑いかけたTaoの顔 

                            タヒチの星の下でふたりで見た南十字星 
                           
                            波音…

                           フラッシュバックするタオとの焼き付いた思い出---

タオ?死んでしまったの?ボクはどうすればいいの?

ボクらはなぜ出会ったの?

こんなに短い物語のために?出会ったの?・・・

                                                    耳元で聞えるタオの声--------

    トニーごめんな。突然いなくなって、もうお前は一人じゃないんだ!
    オレはいつもお前の傍で見てるからな
    南十字星の中にいつもいるからな

    タオの言葉がハッキリと聞えた!

まるでボクをバックハグして耳元で話すタオの声だ!
確かに聞えた!でも目の前にはタオの体が横たわる……


30分ぐらいしてトムとマーガレットが病室に戻って来る
トムは、ボクの背中を何度もさすりながら声を詰まらせ

「トニー!大丈夫か?お前にはたくさんすることが残っている。タヒチのパパとママに電話して知らせるんだ!すぐに来て欲しいと、お前を見てると俺たちも苦しい。でも結婚した以上苦しくてもやることをしないとタオも安心して天国にはいけないんだぞ!」泣きながらトムがいう

「トニーあなたができることは、限られているから
今は、タオのためにしてあげよう。あたし達も手伝う!ね?」そういって
マーガレットは、またボクの背中に頭を押し付け泣いている。

2日後。
パパとママ、モエ、夫タヒリがシアトルに到着。
聖ヨセフ教会に安置されたタオの亡骸は、神々しいまでに美しく
眠っているような顔そのものでした。

パパとママは、ボクに抱きつきずっと付き添ってくれたことへの感謝をいわれその後、タオの顔を見ると泣き崩れてしまいました。

パパとママは、ボクを抱き「愛するトニー。君のおかげでタオらしく生きた!君は希望に満ち溢れているのだからタオがいなくなってもタオの愛する人に代わりはいない。ずっと息子だと思っている。これからも私たちの家族だ。愛しているトニー」

教会が満席になるぐらい友人達が参列して、ビューイング(タオの顔は綺麗に修復され弔問ゲストとの対面が行われ顔に触ったりキスができる)

                                                                          --タオは荼毘にふされた--

今もTaoの遺髪をボクは持っています。

世界中に行けるように遺灰の一部を海に撒き。

そしてボクはこれからもタオと生きていくために遺灰を口にした

タヒチでも盛大な葬儀が行われ、半分の遺灰は墓地に埋葬された。

ボクとタオは夫夫でありタオを今でも愛しています。

そして変わらずタヒチのパパとママにも会いにゆきタオを感じながら近くで

仕事をしています。ボクがどこにいても世界の海はボクに通じているから。

     ボクはTaoの零した一滴で溺れてしまいそうだけど
    
     溺れないようにオレが見てるTony---
     
     愛してるTao---

Tao

                                     --- 愛するtaoのために  ---

                                I will always be here for you!
                                     
                                            And I will  you forever. Tao!
                
                
                  ---fin---