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雨の日を楽しく

息子が保育園児だった頃、週末の午前中を大抵は公園で過ごしていた。

息子3歳のとある週末。その日の予報は一日を通して雨。
何をして過ごそうか考えた。
私も息子も長靴を持っていて、息子はカッパと傘の両方を揃えていた。
「長靴はあるし、とりあえず公園に行ってみよう。」
お家遊びを知らない私の脳は 公園に行けば何とかなると指令を出した。

公園は静かだった。
子供連れの家族や、三世代ファミリーのピクニック、いつものにぎやかな公園はどこにもなかった。
とりあえず長靴を履き、息子には長靴とカッパ&傘のフル装備をさせて車を降りる。 これをしよう! なんて、雨の日の公園を目の前に固まった答えなど出るはずもない。
「とりあえず、公園をお散歩しよっか」息子にそれらしいことを言ってみる。

公園に足を踏み入れて、すぐに雨の日の遊びは始まった。
水たまりがあれば入りたい 3歳児の本能だ。

今日は30代児だって理性を家に置いてきた。
長靴越しの水たまりの感覚がたまらない。ワクワクが止まらない。

足をつけてるだけなんてナンセンス!とばかりに、水たまり遊び歴大先輩の3歳児が、その足をバチャバチャさせる。
中学の部活で先輩の教えは絶対と教わっている。私は3歳児先輩の右に倣う。
身体は私の方が大きい。水たまりの泥水は大きく激しく跳ね上がる。3歳児先輩もキャッキャと喜ぶ。先輩が喜んでくれることが嬉しくて、私はもっともっとと泥水を跳ね上げた。
泥水は飛ばされて、水たまりは随分小さくなった。

仕方がないので次の遊具を探しに公園を歩く。
公園には大小さまざまな木々が生きている。

「雨・傘・長靴・木」このフレーズで思い出すもの、、
トトロ!

始まりは偶然だった。自然の原理と相まって、息子の傘にしずくが落ちた。一瞬で私の脳が記憶を呼び覚ます。
「よし!ジャンプだ!」3歳の息子の手を取り大きくジャンプ!
トトロほどの体重じゃあるまいし、ジャンプにどれほどの効果があったかは知れないが、大木は私たちに遊びの恵みを与えてくれた。

ボタッ ボタボタボタボタッ

私と息子の傘にアレが来た。
「きたねー!」
すぐさま息子声をかける。
「もう一回やる?」
そう言って2度目のジャンプ。

ボタッ ボタッ ボタッ

さすがにこの一瞬では、雨水も木に宿りきらない。
「ほかの木にいってみよう」
少し場所を変えてまたジャンプ!

ボタッ ボタボタボタボタッ 

またあれは来てくれた。
しかし30代児の問題は体力だ。数回ごときのジャンプで辛さを覚える。
そこで体力に代わって出てくたのが経験と知識。
手を使えばよい 
知識と呼ぶにはあまりに汚れているうえに浅い知恵だ。
息子を枝の下に立たせ、枝を下へ引っ張り手を放す。

どーーーーどどどどどどっ どどっっ

ジャンプとは比べ物にならない量で、滝のような雨水が息子の傘に注がれた。

何が起きたか分からない様子の3歳児。
目の前の状況に笑いが止まらない30代児。

愛くるしい息子の姿より、内から沸き起こる子供心が勝ってしまう。
「もう一回やろ!」

どどーーーーっどどどっ どどっっ

またも超局地的ゲリラ豪雨が私と息子の傘に注がれた。

その後も、私は息子の手を取り木々を渡り歩いて雨の日の公園を遊び回った

「もうイイ。」
雨の日の遊びは、息子のクールな言葉で終止符を打れる。
車に戻り、息子のカッパを脱がせて、長靴を靴に履き替え帰路に就く。
思いのほか体が冷えていた。

トトロの瞳の輝きは本物だった

あの日、私は息子にではなく、己の内にトトロの姿を見た。



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