韓国の国会が、食用を目的とした犬の飼育や犬肉の流通を禁止する法案を1月9日に可決しました。韓国では、犬肉料理は滋養強壮、精力増強に効果があり、美容にも良いとされており、病気見舞いに犬肉を差し入れたり、夏には犬料理を食べて暑気を払う習慣があるそうです。

　韓国聯合ニュースによると、この法案は食用の「犬の消費を根絶する」ことを目的としており、賛成208票、棄権2票と、めったにない全会一致可決といってもよい成立劇でした。その内容は、犬を食肉処理すること、食用犬の飼育や販売、食用犬肉の流通を禁止するものです。違反した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン（約330万円）以下の罰金が科せられるそうです。

きっかけはソウルオリンピック

　この法案に繋がる動きはかなり前からあったように思いますが、韓国の犬肉食に諸外国が注目するようになったのは1988年のソウルオリンピックがきっかけでした。オリンピックを控えた韓国政府は欧米諸国の批判をかわす為、犬肉を提供する飲食店に対する取締りを行いました。といっても、一見して犬肉料理店とわからないような店舗名に変更させたり、大通りから裏通りへ移転させたりしただけのことでした。それは犬肉を好んで食べる人や食用犬の飼育・流通に従事する人が一定数いて、禁止すれば大きな反発が予想されたからでしょう。2002年のFIFAワールドカップの開催に際し、犬肉食を禁止して欲しいとのFIFA側からの要請を、FIFAの名誉副会長だったチョン・モンジュン氏が拒否したのも同様の理由だと思われます。

　しかし、諸外国が犬肉食を批判していることは韓国内でも大きく取り上げられ、若い世代を中心に、犬肉食に対する嫌悪の声が次第に大きくなりました。
　

犬肉食は無くならない

　現在、韓国内で犬を好んで食べる人はそう多くはないようですが、この法案で完全に犬肉食が無くなるとも思えません。というのも、この法案は食用犬の飼育や流通・販売を禁止するものであり、犬肉を食べること自体は禁止していません。自分で飼育している犬を食べたり、知人からもらった犬肉を食べることは問題ないのです。これは犬食文化自体を否定すると、自国の文化・歴史に汚点を残すことになりかねないことと、犬肉愛好家からの反発をやわらげるためだと思われますが、今後は犬肉食が地下化する懸念があります。アメリカの禁酒法の例を上げるまでもなく、禁止されればやりたくなるのが人の世の常なのです。
　
 

闇犬肉

    犬肉食が地下化するとどうなるのか？   まず問題になるのは衛生面です。禁止されている犬肉ですから、大っぴらに解体処理することはできません。人目を忍んで解体されるのですから衛生的な処理施設で解体されるとは思えません。また、流通・販売をめぐって反社会的勢力が暗躍します。そして場末の飲食店ではこんなやり取りが見られます。

客「オオカミ(犬肉の隠語)あるかい？」

店主「オオカミ？   シベリアか中国にでも行きな！」

客「隠さなくてもいいじゃないか。食べさせてくれよ。大好物なんだよー」

店主「しかたないな。少し値がはるぜ…   ほら…喰いな…」

客「あるんじゃねーか。出所を詳しく聞かせてもらおうか」と客が立ち上がる。

店主「うそだろ！」

犬肉Gメンのおとり捜査でした…。