詩「はじめの言葉」

どういうわけだろうか
静かなのに
かえって 騒がしくなる
静けさが、積もる
納豆をかき混ぜ 朝飯、朝飯、と
たった8語呟くだけでも
騒がしくするのは 朝なのか 納豆なのか

初源の言葉
言葉をもたない未開のひとびと かれら
はじめて海を見たとき 何と言ったのか
納豆から海へ 海から初源へ
触手は伸び イメージは広がる
沈黙は降り積もるだろう
言葉をもたないならば、だ
だが 内蔵は 脳は 手は震えたはずだ
はじめて海を見たときに
真っ白な現実へ 叫びとして 呟きとして
傷をつけたにちがいない

今日で定年退職します
という老教師が
チョークに書き付けた 
別れの挨拶 背中からは
言葉になることのない
初源の言葉 
そのとき
教師ではないのだ かれは
未開のにんげんだ




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