詩「土浦」

3月21日 豪雨
傘をさした バス運転手がいた
妻に死なれ また妻をもらい 今日はバスの窓を割ってしまった すべての失業者は 運転手になるといい 雨のなか 
眼を開けて言った(雨、止む) 運転手には苦労が多い バックミラーで眼が合う 客 この時代に生きている、ということ
そして 死別

「太宰治と 宇宙物理学には 共通点があるんだ」と友人が話す 「ええっ?どんな?」世間の風向きとは別に 考えては見たが 豪雨は止まない バスが走る
 
鉄の体を震わせ 護謨車の足を踏みしめ 眼を光らせ 闇を見据えて「共通点があるんだ!エレガンスということ」「大喜利みたいだな」バスは飛沫をあげた 叫び声は そのままに 妻とも死別した ぼくの友人も 消えた 「太宰治と宇宙物理学か」とぼくも眼を光らせた だから、土浦なんだ ここは 

平将門の反乱から 1500年くらいの
時間が過ぎていた 当時、バスはない ここには戦乱の手も伸びない 無数の死別はあったかもしれない いくさに負けた男たちは バスに乗った 浄土へは片道いくらなのか そこには 妻はいるのか そもそも果たしてそこは 本当に浄土なのか いいや、土浦です 運転手が言うと 乗客の鋭い視線は バックミラー越しに、刺す 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?