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ファンケル肌研究の最前線(後半)

皆様こんにちはファンケル総合研究所note編集部です。前回は「ファンケル肌研究の最前線」の前半をお届けしました。
皮膚の触覚の鋭さと肌の見た目=キメはリンクしている
という発見がありました
(https://note.com/preview/ne27571bf4bd0?prev_access_key=bc264b26ed4b7ed98ed16c470898138d

今回お届けする後半部では、
肌の触覚の鋭さと、肌の物理的性質=ハリの関係性、そして本研究の今後の展望についてお届けしたいと思います。

触覚と肌のハリ

高橋:次は触覚の鋭さと、肌の「ハリ」の関係についてです。

編:肌のハリですね。肌の弾力、指で押したら跳ね返すかどうか、みたいなイメージですか?

高橋:はい。正確に言うと「たるみ」を評価していて、ここでは肌を「押す」のではなく、「吸う」ことで検証しています。キュートメーターという機器を使って、ストローのような筒で肌を吸い込んだとき、肌がどれくらい吸い込まれるか、その高さを測定しました。

Cutometer®︎ dual MPA580 (Courage+Khazaka electronic GmbH Suchen製)


編:面白いですね!肌をストローで吸い込むとは。吸い込まれる高さが低いほど抵抗力があってハリがある、ということでしょうか?

高橋:はい。正確にはストローでの吸い込みを2秒間行うのですが、
0.1秒から2秒までのの持続的な吸い込み高さは、肌のたるみに起因
します。

編:持続的な吸い込み。ちょっとイメージが追いつかないです(汗

高橋:頬を指でつまんでゆっくりと引っ張る様子を想像してみてください、これが持続的な吸い込みです。引き締まった肌は元に戻ろうとしますが、たるんだ肌では戻ろうとする力が弱いために、より引っ張られてしまう。

編:なるほどなるほど、わかります(笑)

高橋:このグラフは、このキュートメーターの試験で、肌のたるみを評価した結果です。このグラフ難しいですね(汗)
つまり値が低いほど、たるみがなく肌が引き締まっている、と理解頂ければ大丈夫です。

触覚の鈍化と肌のたるみ

編:「キメ」と同じような関係にありますね!先程と同様に、触覚が鋭敏な群の方が肌にハリがある(正確には、肌が引き締まっている、、でしたね)、という結果になったということですね。

高橋:はい。そしてここまでで示す通り、
二点識別閾値7mm未満の群は、7mm以上の群よりも有意にキメが整っていて引き締まった肌である
という結果が得られました。
肌の触覚が鋭い程、肌状態は良いということです。

編:仮説は裏付けられた、ということですね!
 

ここまでのまとめ
・触覚の衰えは肌のキメ、肌のたるみとリンクする。触覚が鋭敏な肌ほど状態が良かった。

触覚の鈍化と肌状態のリンク


高橋:ここまでの結果から、触覚の鈍化と肌の状態はリンクしているのでは、という仮説を裏付けることができました。

編:解説ありがとうございました。
ただ1点だけ気になるのですが…
今回のデータは30〜40代の方で解析されていた
ということでした。
といことは、二点識別閾値が
7mm以上の群には40代後半が集中していて
7mm以下の群には30代前半が集中していた

ということではないですか?
 この二点識別閾値は年齢と相関があるということでしたし。
 もしそうなら、年齢の経過と肌の状態はリンクしている、という至極真当な結果のように思えてしまうのですが。

高橋:鋭いですね(笑)! でも大丈夫です。
今回データ解析した30〜40代の方の二点識別検査結果と年齢についてまとめたものがこちらです。7mm以上の集団と7mm以下の集団、縦軸は年齢です。

編:有意差なし!つまり
7mm以上、7mm未満の群に年齢の偏りはない
ということですね。

高橋:はい、20代や50〜60代の広い年代も含めて考えれば相関がありますが、恐らく触覚が変化しつつあるこの30〜40代では、個人による差が大きいようです。だからこそ、この年代に絞って解析を行いました。

 更にアンケートを実施してみたのですが、とても面白いことがわかったんです。この2つのアンケート結果をご覧ください。

アンケート結果1
アンケート結果2

高橋:二点識別閾値が7mm未満の群には、
スキンケアを楽しいと感じる方や、マッサージを取り入れている方が多い傾向にあるということがわかったんです。

編:普段から肌を触る習慣がある方は、肌の触覚の鋭敏さを保てている、という可能性があるのですね。ということは、スキンケアやマッサージで触覚の鋭敏さを保たせれば、肌の老化は防げるということなのでしょうか?

高橋:現時点の研究成果からは、まだそこまで断定できません。
スキンケアやマッサージ習慣と触覚の関係はあくまでアンケート結果なので、関連の有無は実証ができていなんです。
そして、そもそも今回の研究では
触覚が鈍化したから、肌が老化したのか
肌が老化したから、触覚が鈍化したのか

は、まだ明らかにできていないんです。

編:ニワトリが先か、卵が先か、というやつですね!でも、幸せなら笑顔になれるから「笑顔でいれば幸せになれる」みたいな原理も成り立つようにも思えます。

「触覚」を切り口に広がる可能性

高橋:今回の研究成果で
「触覚の鈍化を防げば、若々しい肌を保てる」
これが証明できれば、冒頭の
触覚というアプローチで肌をプラスに→新しいアンチエイジングを達成できるのではないか、と期待しています。

 また、今回発表した内容とは別に
・感覚受容器への刺激が肌にもたらす影響
についての研究にも取り組んでおり「触覚」を起点とした新規アンチエイジング法の確立に向かって少しずつ前進しています。

編:ワクワクしますね!もし外からの働きかけで触覚を鋭く保つ、あるいは鈍化したものを蘇えらせることが出来たら、肌を若返らせることも夢じゃないのかもしれませんね。

高橋:そうですね!さらにこの研究は
皮膚の研究に留まらず、分野を超えて行けるのではないかと期待しています。

編:他の分野というのは、健康食品分野や医療分野ということでしょうか?

高橋:それは少し飛躍しているかもしれませんが、まず一番興味深いのは脳科学です。
 今回触覚と肌のリンクを検証してきましたが、外的な刺激は感覚受容器が感知して信号を送り脳で知覚しています。
 触覚の鈍化が脳内の情報処理に影響し、それが肌状態の変化に関わっていたとしたら、面白くないですか?
 この脳が肌、あるいは体内へもたらすフィードバックが何なのか分かれば、脳から肌や臓器へ影響を与えることも可能かもしれません(妄想多め)。

編:凄いですね、肌への刺激を介さずに、脳という切り口で肌へ影響を与えていくということですね。

高橋:さらにその脳の働きを助けるような成分を探索する、という健康食品や医薬品分野にも波及していくことも想定されます。
これらはあくまで仮説段階のお話ではありますが、十分可能性はあると信じています。

今回の研究と分野を超えた研究への展開

編:スケールが大きいですね!高橋さんはビューティサイエンス研究センター所属ですが、他の研究所や外部機関とも共同で取り組めそうなテーマになりますね。

高橋:はい。触覚と肌の研究を切り口に、さまざまな分野へ広がっていく、そんなことを夢見ながら日々取り組んでいます。また成果をお話しできる日が来ると思います。楽しみにしていてください。

ここまでのまとめ
・アンケートの結果、スキンケアを楽しんでいたり、マッサージ習慣のある被験者ほど、肌の触覚が鋭敏であるという傾向が認められた。
・触覚の衰えと肌の老化の因果関係はまだ不明だが、それを明らかにし、新たなアンチエイジング法を確立するための研究を進めている。
・本研究は、皮膚科学だけでなく、脳科学など分野を超えた研究になる可能性を秘めている。

編集あとがき

「触覚」という新しい視点からのアンチエイジング研究。
 本研究には高橋さん一人ではなく、多くのグループメンバーが関わっていて、チームとして未開拓の分野を切り拓いているそうです。
 未開拓な分野だけに「果たして本当に実を結ぶのか?」という不安もあったそうですが、メンバーとディスカッションを重ねながら、着実に研究を深めていっているとのこと。

そして
誰もやっていないがために不安になるが
新たな分野を学び、開拓することは楽しく
誰もやっていないからこそ成果になる

そう話してくれました。

また、実際に開示してくれるデータひとつひとつに発見があり、刺激に満ちていて、あっという間にインタビューの時間が過ぎて行きました。
きっとこの新しい取り組みが、まだ見たことのない成果、新しいアンチエイジングの形を見せてくれる。そんな期待をせずにはいられません。

お読み頂いた皆様も、未知の研究に挑む高橋さんの今後にご期待いただれば幸いです。


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