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第15回赤十字国際会議を記念して発行された錦織記念アルバム 

田誠(でん・まこと) / 国際観光局 / 鉄道省
『第15回赤十字国際会議代表団訪日記念アルバム1934年10月』 [1934年]、[東京刊]

Den, Makoto / Board of Tourist Industry / Japanese Government Railway, Souvenir Album of the Visit to Japan October 1934 of Delegates of the XVth International Red Cross Conference,[1934], [Tokyo]. <R22-197> 

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Oblong 23x31cm, no pagination[62pp], each ca 9x15cm 60 photographs mounted, with printed captions, punch sewn at gutter margin, white silk braids in Japanese style, original padded decorated silk post binder, patterned end paper, gilt edges, dedication letter by former owner on rear end paper “To Mr. L Loback, Overseas Telephone Office Tokyo T. Fujimoto 19 June 1948, “ 一九四八年六月十九日 贈ロバック君 藤本武雄”

本アルバムは鉄道省・国際観光局局長であり、日本の「観光事業の父」と呼ばれた田誠によって編集された、1934年第15回赤十字国際会議の海外代表団に対して配布された豪華装丁アルバムです。第15回赤十字国際大会は当時の日本赤十字社社長であった徳川家達が東京での開催のために海外へ協力を求めて実現した、アジア地域で初めての国際組織による会議といわれています。

茶の湯
鎌倉の大仏

掲載されている写真は、このアジア初の国際会議の報告というよりは、日本各地の観光地、自然風景、風俗、伝統行事、産業が前面に押し出されており、錦織和装丁の豪華さも相まって、日本がいかなる国かを対外的にアピールしようという意欲にあふれた内容になっています。


第15回赤十字国際会議が招致・開催された当時の日本は、満州事変や国際連盟からの脱退に代表されるように、国際政治から孤立を深めていった時期でした。このような時期であったからこそ、国際組織の人道的な分野では世界とのつながりを深め、日本の実態を知ってもらうという意志表明として、東京での国際会議招致と本アルバムの発行をおこなったものと思われます。


日光杉並木


 1930年代当時の日本はこの赤十字国際大会に続いて、1940年第12回オリンピック東京や紀元2600年記念日本万国博覧会の招致を表明しており、国際政治分野での孤立に反して、人道、スポーツ、文化・産業の分野ではむしろ国際組織との協力を通じてそのつながりを深めようという動きがみられました。また、赤十字国際会議の招致活動を見ていくとその後のオリンピック・万博招致活動との共通点があり、それぞれに関連があったことが窺われます。

組織においては鉄道省・国際観光局が関わっており、人的には徳川家達が第12回オリンピック組織委員会委員長も務めていたことや田誠が1930年代の長期にわたり国際観光局局長の任にあり、東京オリンピック開催決定や皇紀2600年万博の開催といった日本の大型の観光事業に一貫して関わっていたこと、手法においてはビジュアルを重視した日本紹介の豪華アルバムが断続的に刊行されています。アジアで初めての国際的な組織の催しを主催した成功事例として、赤十字国際会議の招致の経験がその後に続く国際的イベントの招致にも活用されたことは想像に難くありません。

「都をどり」京都
茶摘み

本アルバムは、日本の国際イベント招致の成功したプロトタイプであるとともに、1930年代日本の成功したもう一つの国際協調を象徴するものという点で貴重なものであるといえます。

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