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海が大好きな癌末期の患者さんの海を見に行く1泊2日の旅行同行①


快晴の瀬戸内海をバックにピース

てごナースきたひろです
今回は私にとっても貴重な経験になった案件をご紹介します。画像の使用はご家族から許可を得ています。

その①は
依頼から依頼を受けるまでの経緯と各種手配を記します。
11/14

訪問診療医師から久しぶりの連絡
「Aさんという方が海が見たいと言ってるから、てごナースさんを紹介しました。もしかしたら連絡があるかもしれません。」
以前コロナワクチン接種のアルバイトに行っていた医院の医師から電話がありました。私の起業目的である旅行の付き添いのことをその医師には話していました。
Aさんは癌末期の80歳代男性でした。ドクターの見立てでは7日の診療の時点で予後3週間となっていました。毎週火曜日に訪問診療をしているとのことでした。診療の時にAさんの奥さんから、『Aさんが「海が見たい」と言うから出かけさせてあげたいんだけど、どうですか?』と希望されたとのことでした。
私は、紹介していただきありがたいけれど、だいたいその後に連絡があることは稀だから期待せずに連絡を待っていました。

11/16
奥さんから電話
「夫が海が大好きなので海を見に連れて行ってあげたいんです。お願い出来ますか?」と奥さんから依頼の電話でした。
希望日を伺うと21.22日の1泊2日をご希望されました。
長時間の座位を保つのは痛みがあるので、出かけるためにはストレッチャーの介護タクシーが必要とのことでした。
普段から介護タクシーなどの手配はケアマネージャーさんにしてもらっているとのことで担当ケアマネージャーに連絡してみました。
担当ケアマネジャーはAさんを1泊2日の旅行に連れて行くのは難しいのではないかと
否定的な感触でした。
医師が許可したということは可能性があるから許可したはずなのに何かおかしいと私は違和感を感じました。
そこで医師に確認の連絡をしました。医師は「あれ?1泊2日ですか?私は1.2時間で外出して海を見てくればいいんじゃないかというつもりだったんだけどなぁ。」という返答でした。
それから数分後
医師から「確認したんだけど、Aさんは本気ですわ、途中でコロっと逝ってもええから1泊2日で行きたい言うてます、家族もそうしたい言うてるし」との電話がありました。そして「何かあった時のために紹介状を書くし、駆けつけられるなら駆けつけます」ともおっしゃいました。

依頼を受けるかどうか葛藤
さて皆さんは旅行中にコロっといく可能性がある人の旅行に付き添いますか?付き添えますか?
私はしばらく悩みました。しかし、悩んでても仕方ないので、まずは本人の状態を確認することにしました。一度もお会いせずに依頼を受けるのは判断に迷うからです。
「自分の目で確かめてから決めよう」と
これは私の基本的な考え方です。他人の意見は意見として聞くけど、鵜呑みにせず、自分の目で確かめることが大事です。

ご家族に連絡して面談する時間を決めました。時間は差し迫っておりゆっくりする余裕はないので16日の夕方にお会いすることにしました。

本人ご家族と面談
 Aさん宅に伺うとAさんはベッド上でウトウトされていました。ご家族にご挨拶してから Aさんにお話ししました。
何事も本人の意思が1番大切だからです。
やはりAさんは1泊2日で海を見に行くと意思は固かったです。
ADLは立位困難、車椅子移動、ポータブルトイレ使用、ほぼ寝たきり。
時々在宅酸素を使っています。
本人の意思と状況を確認したところでご家族とお話ししました。奥さんも娘さんも Aさんに
「海が大好きだから海を見せてあげたい」
とのことでした。
これが今回の旅行の最大目的です。
私は自身の経験として、旅をするのに目的がはっきりしておいた方がいいと思います。今回は目的がハッキリしていたことも私が依頼を受けやすくしました。
そして本人の姿を見てなんとなく
「行ける気がする」と私は思いました。
私もモットーは
あなたのしたいやりたいをお手伝い
です。
何としても
「 Aさんと家族の願いを叶えてあげたい」
と思い依頼を受けることにしました。
そうと決まれば環境整備です。急な依頼だけに宿泊場所、移動手段の確保が急がれます。特に宿泊場所はコロナ後の旅行需要の高まりでホテルの予約がなかなか取れないと予想されました。
海を見る旅行なので、広島で海が見えるホテルはどこか。私の少ない情報量で真っ先に思いついたのがグランドプリンスホテル広島でした。早速ネット検索すると海が見える部屋がありました。 この旅行にはAさんとご家族と私の計6名3部屋が必要です。ホテルに連絡すると予約が取れました。16日に21.22日の宿泊予約が取れるとは奇跡的と思います。
そして介護タクシーも予約が取れました。
宿泊場所と移動手段は確保しました。
これで段取りはついた、あとは携帯酸素を持参すれば良いと考えていたのが落とし穴でした。

旅行時の酸素の手配が落とし穴
携帯酸素でも予備を持参すれば対応可能だと考えていたら、旅行で酸素を使う場合は宿泊場所に酸素濃縮器を手配しないといけないと訪問診療をしている病院の事務から連絡がありました。
直ぐにネットで調べてみました。
帝人という酸素を取り扱う会社によると、「旅行支援サービス」というのがあり旅行の10日前から手続きをして医師の指示も必要なようでした。
今回は事務員の方が帝人さんと折衝して下さり、急だけど対応してくださる手筈となりました。
いろいろと知らないことがあるなぁと実感しました。病院勤務の看護師をしていたら間違いなく知らずにいたと思います。

以上が依頼から依頼を受けるまでの経緯と各種手配でした。




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