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糞フェミでも恋がしたい (その2)

私の名は能條まどか。糞フェミだ。

糞フェミになったについては、まず家庭の事情があるのだ。だからかならずしも自分だけのせいではないのだが、でもなんだかこう、脈々と受け継がれる血の呪いみたいなものがあって、それが疎ましいというか、恨めしいというか、つまり嫌だ。

事情というのはこうだ。私が生まれたのは東京の山の手の緑の多い閑静な街で、大きな家というかいわゆるところのお屋敷で、お屋敷というのは代々の家柄が政界とか経済界とか、まあ要するにいろいろと権力に近いところの、日本のそういう感じの部分を担って来たという歴史があって、つまり父親もそれを受け継いで政界で影響力を持つような人で、つまりは強くて、自信家で、傲慢で、人を人とも思わないところがあって、それがそのまま魅力になっているような、そんな人だった。

それほど厳しく育てられたわけではないけど、というか厳しいか厳しくなかったか比べようがないので分からないけど、世間で言うところの箱入り娘みたいなもので、行儀作法は厳しく言われて、素行は厳しく言われて、それは私の中のいちばん深いところから私自身を作り上げている骨組みのようなもので、私が毎日を生きて暮らして行くあらゆる瞬間に顔出し、私の言葉や表情や態度を決めていくのだけど、きっとその中には、私が見て来た父親の欠片が、いっぱい散りばめられているんだろうなあと思う、自分じゃ見えないけど。

父親は強い人、それこそ怪物のように強い人だったけど、それに連れ添って、私を生み、家庭を築いた母親は、とてもなんていうか、なんていうか、なんていうか、なんていうか………狂った人だった。もともと花街の出で、しかし華やかというよりは物静かな、うちに炎を秘めたような人柄で、それがどんな炎なのか妖しくて、娘から見てもちょっと怖いようなところがある、時々何を言っているのかわからない不思議なことを言い出す、どうも素でおかしなところがある、その血が自分の中にも流れていると思うと奇妙な気持ちになるけれども。

そして彼女は妾だった。つまり私は妾の娘。父親にはもともと家柄よろしく良家から嫁いで来た正妻が居たのだそうだけど、残念ながら石女で、子供を持つことが出来ないまま病気で亡くなった、それは私が生まれる前のこと。正妻が亡くなって、もちろん由緒正しく後添えをもらうこともできたんだろうけど、父親はそうしなかった、妾である母親に私を生ませて、いっしょに暮らす道を選んだ。

それがどうしてそうだったのかを私は知っている。知っているというか、見てしまったのだ、見てしまったというか見ざるをえなかったのだ、父親と母親の、あのなんとも禍々しい、呪いに満ちたセックスを、何度も何度も、見てしまったのだ、何度も何度も何度も何度も、父親が母親を犯しながら、拳で、足で、容赦ない暴力によって蹂躙するのを。

そうだ、私の母親は、犯されながら、父親に殴られていた。胸と言わず腹と言わず、着物を着れば見えなくなるところなら何処でも、父親は母親を殴って、その身体に印を付けた、暴力の印を。母親は犯されながらいつも泣いていた、這いつくばって、涙をぽろぽろぽろぽろ流しながら、くぐもった嗚咽の声を漏らしていたのを、その声を、その姿を、今でもはっきり覚えている。物心ついた後ですら、子供だった私の目の前で、父親は毎日母親を犯したのだ。昼間の、社会的信用だの、世間付き合いだの、政界や財界の偉い人たちとのやりとりとはまったく違う、取繕った外見とはまったく違う、夜の世界の、父親と母親の姿がそこにあった。

その姿は、欲望に満ち満ちていた。

つづき→ https://note.mu/feministicbitch/n/n2d8aa16b4c8e

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