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糞フェミでも恋がしたい (その11)

私の名は能條まどか。糞フェミだ。

糞フェミだって運転免許は持っている、そうだ、身近に作れる密室といえば、車の中しかない、近距離コミュニケーションにも最適だ、なんか理由をつけて、綺羅君といっしょにドライブしちゃえば、後はどうにかなる、そう考えた私は、作戦を実行に移すのだ。

というわけで急遽カメラを購入した、そんなに値段高くないけど、レンズ交換の出来る本格的なヤツ、なんせ母親がカメラマンなのだし、もともと綺羅君の女装が可愛くて写真を撮ろうとして始まったことなのだから、私が綺羅君の写真を撮りたいと言い出すのは、流れとしては説得力があるし、カメラ初心者として、綺羅母にあれこれ教えてもらい、心証をよくする効果もあるから、ひとつぶで二度美味しい感じ、我ながら策士だ。

もちろん車なんか持っていないので、父親に借りようかと思ったけど、あれはなんか高級過ぎて不審なので、母親に借りて、準備は完璧だ、下調べしたけど、ハンドルを握りながらも、助手席に手を伸ばしやすいナイスな設計、…いやそれ母親どうよどうよ、あいつ雌豚だからなー、まあいいや、ありがたく利用させてもらおう、綺羅君と、この空間に閉じ込められれば、あとは悪巧みしほうだいだ。

物事は結局、運と縁だと思う、どんなに求めても、苦しんでも、あがいても、運が向いて、縁が繋がらなければ、欲しいものは手に入らない、希望はかなえられない、みんなそんなことわかっているくせに、頑張ればなんとかなると言う、努力すれば報われると言う、そんなの嘘だ、どれだけ努力しても、運と縁が無ければ、ぜんぶ無駄なんだ、それだけ運と縁というのは大事で、運と縁が廻って来ている時には、そのチャンスを大事にしなくちゃ駄目なんだ。突撃だ。

気合いでえいやっとお膳立てして、綺羅君を車に乗せて、綺羅母に見送られながら、初秋の日曜日、まだまだ暑いけど、風はちょっと気持ちいいよ、私はハンドルを握って、心なしかエンジンの調子もいい、綺羅君はちょっと緊張してるけど、ドライブインの休憩では、少しずつ打ち解けて、笑ってくれたよ、リラックスリラックス、パスタにサラダに、お昼も食べて、名物のソフトクリームだ、甘いもの好き?って聞いたら、照れくさそうに好きですって言ってた、いいね、いい感じ、高速を降りて、山間に入って、コスプレイヤーの友達にリサーチした、撮影の穴場、避暑地にあるテーマパーク的な、由緒ある洋館に着いた、まだまだ蝉が鳴いていて、森に入るとちょっとシーンとして、木漏れ日が綺麗だ、ヒールは履かない方が良かったな、半袖のワンピースでも、ちょっと汗ばむよ。

私、外で撮影の準備するからと、綺羅君を車に残して、あたりをひとまわり、その間に、綺羅君に車のなかで着替えてもらう、もう私の心はドキドキで心臓バクバクだけど、それは悟られちゃいけないんだなあ、こういう時には、意外と強い、でも、身体の方はもう、興奮しまくっていて、どうしようもない、しょうがないな、会いたくて会いたくてたまらなかった人に、やっと会えるんだもの、どうなるかぜんぜん分からないけど、でもそんなことどうでもいいや、どうなろうが、どんな目に遭おうが、私はそれを受け入れるだけだ、受け入れることが出来るという、そのものが私の幸せだ、濡れて濡れてどうしようもないよ。

そうして何分経ったか、車のなかでゴソゴソやっていた綺羅君が、静かになった、ようやく着替え終わった気配、さてさて、静かに深呼吸、ふー、抜けるように青い空を見上げ、目を閉じる、揺れる陽射しでまぶたがくすぐったい、鼓動が聴こえる、あなたさま、恋い焦がれたあなたさま、私をぶっ壊してくれるあなたさま、お会い出来る日を、お待ち申しておりましたよ、今こそ、今こそ、私の前に現れてくださいませ、祈るように、いや、ほんとに祈りながら、車のドアノブに手をかける。

ガチャッ。

人生が変わる音がした。

つづき→ https://note.mu/feministicbitch/n/n2d7dc9f6139c



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