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Naturist(裸体主義者)と二晩過ごした話

20代の頃、Couch Surfingというサービスを利用していた。外国人旅行客に無償で自宅のカウチを提供してあげる(泊めてあげる)システムだ。フィリピン人の友人に教えてもらい、長野県の実家にいるときには計4組を受け入れた。みんなフレンドリーで礼儀正しく、時間があればお互いのことを話し、翌朝には見送る。家に招くのは多少の負担ではあるが、田舎で国際交流ができるので気に入っていた。

20代後半、イギリスにワーキングホリデーで住んでいた期間は、しばしばヨーロッパ各地を旅行していた。中でもドイツはロンドンから安い航空便が出ていて、ヨーロッパ旅行の入り口として何度も足を運んだ。

2018年8月、またドイツに渡航することになった。ブレーメンからハンブルク、ベルリンへと移動し、チェコに行く計画を立てた。ハンブルク、ベルリンではCouch Surfingを利用しようと思い、事前に現地のホストを探した。ハンブルクではシングルマザーでホストとしての口コミがたくさんあった方にコンタクトを取り、1泊快適に過ごさせてもらった。

ベルリンでの滞在先を探していると、1人のホストが目にとまった。「私はサンフランシスコのビジネスマンで、仕事でベルリンに滞在する予定のため、ホテルの部屋に一緒に泊まっても良いですよ。Naturistであることをご理解ください。詳細はこちらのウェブサイト(Naturistの説明)をご覧ください。」といった自己紹介を読み、Naturistという単語を知らなかった私は、リンクからサイトを見てみた。「えっ、これはヌーディストじゃないの?」と思い、改めてGoogleで「Naturist」を検索してみると、「裸体主義者」と出てきた。

どうしようか、すごく迷った。裸体主義者はヌーディストビーチに出没するという情報ぐらいしか聞いたことがなく、実際に会ったことはない。自己紹介文によると、ホテルの部屋では全裸になると書いてある。宿泊者に全裸を強いることはないと書いてくれているけど・・・。迷った末に、ベルリンに行く日も近づいていたことだし、コンタクトを取って2晩宿泊させてもらうことにした。

彼の宿泊しているホテルの住所を教えてもらい、ベルリンに着いてから電車で向かった。部屋で初めて会ったときは、着衣の状態だったため少し安心した。バックパックを下ろしてから、一緒に近所のスーパーでワインを買い、屋台でおすすめのカリーブルストを買って、公園に座って飲み始めた。とても紳士的な方で、ビジネスの話やアメリカの話を聞かせてくれて、楽しい会話になった。

部屋に戻り、飲み直すことになった。ベッドに座って、少し打ち解けた感じで話していると、会話の切れ目で彼が「Can I?」と言った。いつくるのかなと思っていたが、このタイミングで「Can I?」といえば、もちろん服を脱ぎたいんだろうなと思い、「Sure!」と答えた。全裸になった彼の下半身を直視しないようにして、ただしコミュニケーションの基本であるアイコンタクトは常に忘れないようにして、その後も楽しく会話した。部屋には大きなベッドとソファベッドがあったため、ソファベッドを借りて寝させてもらった。

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翌日はサンスーシ宮殿やブランデンブルク門などの観光地を1人で回る予定で、朝から出かけた。彼は「午前中に仕事をして、午後には近くのヌーディストビーチ(湖畔?)に行くから一緒にどう?」と声をかけてくれた。(出た!ヌーディストビーチ!)と思いながらも、「うん、行けたら行くわ。」と返した。

見所がたくさんあったため、一通り観光地を回り終える頃には日が暮れていた。彼に、「そろそろ見終わるよ」と連絡すると、「じゃあドイツのビアホールに一緒に行こう。良いお店を知ってるから」と誘ってくれた。ドイツのビアホールでドイツビールを飲むなんて夢みたい!と思った私は、ウキウキでお店に向かった。お店はとても広く、地元の人も観光客もいる感じでとても賑わっていた。ドイツの曲の生演奏が流れ始めると、お客さん達が飛び入りでダンスを始めて、とても楽しい雰囲気だった。大きなジョッキビールを飲んだ。

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お店を出て、部屋に戻り、また彼は全裸になった。その日も同じように彼の身体を直視しないようにしながら話していたが、「Youも全裸になったら?」と何度も聞いてきた。「いやいやいや、私はいいよ。」と断り続けて、なんとか受け流し、ソファベッドで就寝した。

翌朝は一緒にチェックアウトし、彼は仕事へ、私はチェコへと向かった。最後はハグをして、感謝を伝え、彼は最後まで紳士的だった。

行くまでは少し不安だったけれど、彼と一緒に過ごさせてもらったことは、私にとって貴重な経験になった。ベルリンでの滞在が1人で過ごすよりも何倍も楽しく、思い出深いものになった。今後Naturistを含めて世界中の人々と交流していきたいし、これからも多様性を受け入れられる人でいたいと思う。

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