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痛み

風のささやきに
肩を抱かれながら
静かにあなたを思い出す
あなたとは
ともに向き合った時間は
長いようで短かった
片田舎の小さな町で
私たちはしばらく暮らした 
分かち合えたものは
優しさに見立てた
貧しさだったのだと
今は思う
力のない両腕で 
あなたを支えようとしたけれど
あなたに私の声は
届かなかった
あなたは私を吸い取った
目を輝かせながら
グラスの中のソーダを飲み干すように
広告紙のように
薄くなった私の手を放し
優しい言葉の一つもなく 
あなたは帰っていった
私が愛したものとは
本当はあなたではなく
私の中の歪んだ幻想だった

今でも
胸のあたりが痛む気がするのは
現実が私に釘を刺すから
たった一言、強く
被った痛みを忘れるなと

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