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かき氷が変身するとは

夏至も小暑も過ぎたので、かき氷びらきをすることにした。くちびるの左端に仲良く3つ居候していた口内炎は治りかけだし、知覚過敏気味だが、季節は待ってくれない。

ちなみに口内炎が3つまとめてくちびるの裏にできると、腫れあがって口角が下がり、ピグモンのようになる。

関東のかき氷有名店と言えば、谷中のひみつ堂や、飯田橋のまめ茶和んが浮かぶが、わたしのお気に入りは鎌倉・長谷のvuori cafeである。

海産物の卸問屋の倉庫として使われていた建物をリノベーションした建物で、1階はカフェ、2階はくらしの器や道具を集めたギャラリー兼ショップ。

江ノ島電鉄長谷駅から徒歩5分。紫陽花で有名な長谷寺の近くで、バスの往来が激しい通りに面しているが、うっかり見落としてしまいそうな隠れ家的な雰囲気を醸し出している。

ホームページには、ぴしっとこう書かれている。

「おとなしく過ごせないお子様はご遠慮ください」

店内に流れる空気と時間は、図書室のようにゆったり静かで、おひとりさまがコーヒーを飲みながら文庫本を読む姿もよく見かける。
特に、2階はワレモノがたくさん並んでいるから、走り回ることを生業とする元気なお子様をご遠慮するのもうなずける。

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(無機質な壁と木の調度品。インテリアも小物がおしゃれ)

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(手前は土間風、奥は小上がり風でうなぎの寝床のような構造)

だから、時間を選べば大体待たずに入れる。夏以外は。

流行りの「映える」派手な見た目や、迷うほどの品種数ではないのだが、一度訪れて以来、この店の雰囲気もあいまって、かき氷はここ一択だ。

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こちらもぴしっと但し書き。
お写真はほどほどに、お召し上がりはお早めに。

メニューは数量限定の生いちごミルク、白いんげんミルク、酢ベリー、黒糖麦焦がし、ほうじ茶ミルクの5種類。

前に訪れたときは、あまりの暑さに耐えかねて酢ベリーを選んだ。

キンキンに冷えた氷と、キュッと酸味のきいた酢ベリーシロップが、干からびてバテた体の隅々まで染み込む。氷の中には甘いバニラアイスが隠れていて、酸味を受け止めてくれる。トッピングの赤いなにかもぷちっと弾けた。

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今回は、治りかけの口内炎に配慮して、ほうじ茶ミルクを選んだ。

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器が見えないくらいこんもり。お写真は適当に、崩さないように、そうっとかき氷入匙。

冷たさの中にもほわっと温もりを感じるミルクティーの控えめな甘みと、ほうじ茶の香ばしさ。じっくり煮出されたであろうほのかな渋みが後味を引き締める。トッピングの茶色いなにかがやわらかくておいしい。

山を崩さぬように、バランスをとりながらサクサクと食べ進める。かき氷は提供時がいちばんおいしいのだ、手早く味わわなければ。

ウルトラマンのカラータイマーが脳内で点滅する。いや、おいしいので気にせずとも手が止まらない。知覚過敏もなんのその。

無事に氷山を攻略した、が…



あれ…



シロップってこんなに余るもんかな…

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これは、さながら…


この色は、さながら…


目が覚めない朝食世界代表、オートミール…


久しぶりだから忘れていたが、かき氷というのは下にもシロップが入っているものだ。

氷部分を爆速で平らげてしまったせいで、ほうじ茶ミルクシロップが大量に残り、見た目がオートミールに変身してしまった。

もっと氷を下に沈めながら食べるべきだった。もはや飲めるかき氷、もといキンキンに冷えたほうじ茶ミルクティー。

セットで付いてくる温かいほうじ茶を口に含むと、自業自得で冷え切った歯という歯が浮いた。iPhoneでいらないアプリを消すためにアイコンを長押しした時、アイコン全体が「イヤだァ消さないでェーー」とカタカタ震えるあの感じに似ている。

食べている途中にも、あったか~いインターバルを挟むべきだった。

かき氷自体は間違いなくおいしかった。
そして、何事もバランスが大事だと学んだ。

できれば、今夏もう一度行こう。

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