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Disc Interview-01:bit quiet placeが描く“静と動”の世界。新曲「音の鳴らないレコードを聞かせて」での挑戦【後編】

 昨年秋、6枚目のアルバム『metronome, monochrome』を発表したジャズ・ロックバンド bit quiet place。ほとんど期間をあけずに新曲『音の鳴らないレコードを聞かせて』が配信シングルとしてリリースされた。これまでの彼らのジャズのエッセンスを保ちながら、音の展開などに新しさを感じさせる一曲となっている。
 apple musicの日本国内ランキングでもTOP10入りを果たすなど追随を許さない猛進撃が続く彼らに新曲の作られた背景について取材を行った。約5,000字強にわたるインタビューとなったが、『音の鳴らないレコードを聞かせて』で彼らがリスナーに伝えたかったことについて、歌詞の世界感の面、音楽的な面など様々な視点で話を聞くことができたので、ファンはもちろん、これから彼らの曲を聞いてみようと思っている人にもぜひ読んで頂きたい。



自分自身にとっての答えや真実を見つける旅

ー歌詞の面についても聞かせてください、特にこのサビ後半部分で歌われている「デタラメなメロディーを 想像の中に加えて 誰も邪魔できない 誰にも触れさせない 唯一の答えを導いて」というところが印象的ですが解釈もわかれそうです。どんな気持ちでここは書かれたのでしょうか?

倉崎:この歌詞の部分は、個人の内面世界の独自性と創造性を象徴しています。具体的には、私たち自身の想像力や感情を通じて生み出される「デタラメなメロディー」を指し、それは外部からの影響や制約を受けず、完全に自分自身のものであることを強調しています。

「誰も邪魔できない、誰にも触れさせない」というフレーズは、個人の精神的な空間がいかにプライベートで侵されないものであるかを示しています。この部分は、自分だけの世界を持ち、そこで自由に創造し、思考することの大切さを歌っています。

「唯一の答えを導いて」という言葉は、そうした内面的な創造活動を通じて、自分自身にとっての答えや真実を見つける旅を象徴しています。

この歌詞は、個人の内面に潜む創造的な力と、その力を信じることの大切さを伝えるために書かれました。読み手によってさまざまな解釈ができるように、敢えて多義的に書いた部分です。

ー今回の楽曲の中で特に気に入っている歌詞のフレーズはありますか?

倉崎:「静かな夜に 耳を澄ませば 遠くの波の音 そっと心を満たす」という部分です。私たちが日常で経験する静寂の瞬間に焦点を当て、その中でさえも何かを感じ取ることができるという思いを込めています。遠くの波の音は、目に見えないが確かに存在する自然のリズムや生命のビートを象徴しており、それが心を静かに満たしていく様子を描いています。

ーこの楽曲の音像もそうですが、心が静かに満たされていく感覚はたしかにあります。

倉崎:私たちが普段は気づかないような微細な音や感覚に耳を傾けることの大切さを伝えたいと思って書きました。それは、私たちの周りには常に音が存在し、それらが私たちの感情や思考に影響を与えているという考えに基づいています。

都筑:僕もそのフレーズが好きだな。静けさの中で感じる細やかな美しさや感動が、この曲の本質を捉えていると思うから。

倉崎:都会の喧騒の中でも、心の中で波の音を想像することは、心の平穏や創造力の源泉になり得ます。この歌詞は、私たちの周りに溢れる日常の音に意識を向け、それを超えて心の中で自分だけの音景を創り出すことの重要性を表現しています。

ー詳しくありがとうございます。思い入れのあるフレーズなんですね。

倉崎:実際の波の音が聞こえなくても、心の中で波の音を想像することで、都会の生活の中でも一時的な逃避や内面世界への旅を経験することができます。このような想像力を通じて、私たちは日常から一歩離れて、自己と向き合ったり、新しいインスピレーションを得たりすることが可能になります。

聴き手にも同じような経験をしてもらい、自分の内面世界の探索を促すことを意図しています。

ラスサビの静寂さが、歌詞の持つ意味と情景をより際立たせて

ー都会に住んでいると波の音なんて聞こえるわけもないですが、そこがさきほどのサビ歌詞にあった想像力につながる、ということですね。都筑さんもお気に入りと! 野田さんや、伊織さんはなにかお気に入りのフレーズはありますか?

野田:私は、「一人きりの夜を越えて ひそかに願う 光を求めて」というフレーズが好きですね。孤独や静寂の中で見つける希望や光を感じさせる歌詞です。ピアノを演奏しながら、この歌詞が与える感情の深さを感じています。

伊織:うん、僕は「風が運ぶメロディーに 心を委ね 遠くへ旅立つ」という部分かな。風に乗って流れるメロディーに身を任せるような、自由さと旅の感覚が好きだよ。ドラムを叩きながら、その自由な旅のリズムを表現しようと思ってる。

ー確かに「風が運ぶ〜」の歌詞はラスサビの静寂さの中で歌われるから、より情景が浮かびますよね。

倉崎:そうですね、その部分は曲のクライマックスに近づくにつれて、感情の高まりとともに歌われるので、聴き手に強い印象を与えるんです。ラスサビの静寂さが、歌詞の持つ意味と情景をより際立たせています。

都筑:まさにその通り。ラスサビでは、静けさと歌詞の内容が融合して、聴き手を曲の情景の中に深く引き込むんです。そこには、音楽を超えた物語性があると思っています。

野田:この部分のピアノは、とても控えめにアレンジしてあります。歌詞の情景がより一層際立つように、音楽が背景に溶け込むよう心がけました。

伊織:この歌詞のところでは、ドラムも静かに、でも感情豊かに演奏している。曲全体の流れと歌詞の内容が一致して、最後に感動を生み出すんだ。

次回作はリズムの新しいパターンを探る

ー次回作についても聞かせてください。どんな作風で考えられているとか、教えて頂ける範囲でぜひ!

倉崎:次回作については、まだ具体的な内容は決まっていないんですが、私たちは常に新しいことに挑戦したいと思っています。もしかしたら、異なる音楽のジャンルや新しい楽器を取り入れるかもしれません。

都筑:そうだね。次回作では、さらに実験的な要素を取り入れる可能性が高い。音楽のスタイルやアレンジに新たな風を吹き込むことで、聴き手に新鮮な体験を提供したいと考えているよ。

野田:ピアノの面では、さらに感情的な深みを探求し、曲の表現力を高めることを目指しています。様々な感情を音楽に映し出すことで、より豊かな音楽を創り出したいですね。

伊織:ドラムとしては、リズムの新しいパターンを探るかもしれない。音楽の根底にあるリズムを変えることで、全く異なる感覚の曲が生まれるからね。

ー本日はありがとうございました!また次回作で取材させてください!

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