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ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説44―Your Obedient Servant 和訳


はじめに

ミュージカル『ハミルトン』は、ロン・チャーナウ著『ハミルトン伝』(邦訳:日経BP社)をもとにした作品である。

物語の舞台は18世紀後半から19世紀初頭のアメリカ。恵まれぬ境遇に生まれたアレグザンダー・ハミルトンは、移民としてアメリカに渡り、激動の時代の中を駆け抜ける。アメリカをアメリカたらしめる精神がミュージカル『ハミルトン』には宿っている。

劇中では、友情、愛情、嫉妬、憎悪など様々な人間ドラマが展開される。ここでは、そうしたドラマをより深く理解できるように、当時の時代背景や人間関係を詳しく解説する。

”Your Obedient Servant”

※歌詞の和訳はわかりやすく意訳。

※歌詞の原文は『Hamilton the Revolution』に準拠。

BURR:

How does Hamilton, An arrogant, Immigrant, orphan, Bastard, whoreson Somehow endorse Thomas Jefferson, his enemy, A man he’s despised since the beginning, Just to keep me from winning? I wanna be in the room where it happens—

「横柄な移民、孤児、私生児、売女の息子であるハミルトンが敵であり、最初から軽蔑していたトマス・ジェファソンを応援して私の勝利を邪魔するとはどういうことだ。それが起きる部屋に私はいたい・・・」

解説1—Alexander Hamiltonと対になっている。

「神の思し召しでカリブ海の忘れられた島で生まれ落ち、貧しくむさ苦しかった私生児、孤児、売女とスコットランド人の息子が英雄でお偉方になろうとは」

29—The Room Where It Happensと対になっている。自分も日の当たる場所に出たいというバーの野望が示されている。

「それが起きる部屋に私はいたい。それが起きる部屋に。それが起きる部屋に私はいたい。それが起きる部屋に。それが起きる部屋に私はいたい。私は私はそれが起きる部屋にいたい。ああ、ああ、そうできたら。そうできたら。まさにその大きく古い部屋にいられるようになりたい。いられるようになりたい」

BURR, COMPANY:

The room where it happens. The room where it happens.

「それが起きる部屋に私はいたい。それが起きる部屋に私はいたい」

BURR:

You’ve kept me from—

「君は私を・・・」

BURR, COMPANY:

The room where it happens.

「それが起きる部屋から締め出している」

BURR:

For the last time.

「もうこれで終わりだ」

Burr begins to write a letter.

Dear Alexander: I am slow to anger, But I toe the line As I reckon with the effects Of your life on mine. I look back on where I failed, And in every place I checked, The only common thread has been your disrespect. Now you call me “amoral,” A “dangerous disgrace,” If you’ve got something to say, Name a time and place, Face to face. I have the honor to be Your Obedient Servant, A dot Burr.

「親愛なるアレグザンダー、私は怒りっぽくはないが、これまでの人生における君と私の関係を考えると我慢の限界だ。失敗を振り返ってすべてを入念に確認した。いつもいつも君にあるのは軽蔑だ。今、君は私を『不道徳な』とか『危険な面汚し』と呼ぶ。もし君が何か言うことがあるなら対面できる時間と場所を指定してほしい。敬具、A・バー」

解説:「Your Obedient Servant」は文字通り訳すと「あなたの忠実な下僕」になるが、これは当時の手紙によく使われた結びの言葉である。例えばワシントンが生前、ハミルトンに最後に送った手紙にも「Your most Obedt Servt」と記されている。

Hamilton writes a letter in response.

HAMILTON:

Mr. Vice President, I am not the reason no one trusts you. No one knows what you believe. I will not equivocate on my opinion, I have always worn it on my sleeve. Even if I said what you think I said, You would need to cite a more specific grievance. Here’s an itemized list of thirty years of disagreements.

「副大統領閣下、あなたが誰からも信用されないのは私のせいではない。誰もあなたが何を信じているかわからない。私は自分の見解をごまかさない。私はいつも自分の見解に忠実だ。君が私の語ったことだと思っていることをたとえ私が言っても、君はもっとはっきり不満の種を言わないといけない。ここに箇条書きにした30年分の不和の一覧表がある」

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