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ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説46―The World Was Wide Enough 和訳


はじめに

ミュージカル『ハミルトン』は、ロン・チャーナウ著『ハミルトン伝』(邦訳:日経BP社)をもとにした作品である。

物語の舞台は18世紀後半から19世紀初頭のアメリカ。恵まれぬ境遇に生まれたアレグザンダー・ハミルトンは、移民としてアメリカに渡り、激動の時代の中を駆け抜ける。アメリカをアメリカたらしめる精神がミュージカル『ハミルトン』には宿っている。

劇中では、友情、愛情、嫉妬、憎悪など様々な人間ドラマが展開される。ここでは、そうしたドラマをより深く理解できるように、当時の時代背景や人間関係を詳しく解説する。

”The World was Wide Enough”

※歌詞の和訳はわかりやすく意訳。

※歌詞の原文は『Hamilton the Revolution』に準拠。

MALE COMPANY:

One two three four

「1、2、3、4」

FULL COMPANY (EXCEPT HAMILTON AND BURR):

Five six seven eight nine—

「5、6、7、8、9・・・」

BURR:

There are ten things you need to know.

「君が知るべきことが10個ある」

COMPANY:

Number one!

「まず一つ目」

BURR:

We rowed across the Hudson at dawn. My friend, William P. Van Ness signed on as my—

「未明、我々はハドソン川をボートで渡る。友人のウィリアム・P・ヴァン=ネスが私の介添人になることを・・・」

解説:ウィリアム・P・ヴァン=ネスはニュー・ヨークの有力な法曹家である。バーの親友であり、1800年の大統領選挙でバーに協力している。決闘場は現代と当時で地形が変わっている。以下は19世紀と現代の比較。

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BURR AND COMPANY:

Number two!

「二つ目」

BURR:

Hamilton arrived with his crew: Nathaniel Pendleton and a doctor that he knew.

「ハミルトンがナサニエル・ペンドルトンと知人の医者を連れて到着する」

解説:ナサニエル・ペンドルトンはヴァージニア出身の法曹家であり、ニュー・ヨーク州知事選挙の際にハミルトンとともに活動していた。

COMPANY:

Number three!

「三つ目」

BURR:

I watched Hamilton examine the terrain. I wish I could tell you what was happ’ning in his brain. This man has poisoned my political pursuits!

「私はハミルトンが地勢を書くにするのを見守る。彼の脳裏に何が浮かんだか君に伝えてみたいね。この男は私の政治的野心をだめにしたんだ」

COMPANY:

Most disputes die and no one shoots! Number four!

「争いの大部分がなくなれば、誰も撃たなくてすむ。四つ目」

BURR:

Hamilton drew first position. Looking, to the world, like a man on a mission. This is a soldier with a marksman’s ability. The doctor turned around so he could have deniability.

「ハミルトンは最初の位置を決める。とにかくそんなことをしている男を見てみよう。狙撃の腕前を持つ兵士だ。医師が[殺人ではなく決闘だという]法的否認権を持てるように確認する」

COMPANY:

Five!

「五つ目」

BURR:

Now I didn’t know this at the time, but we were—

「その時まで私は知らなかったことだが、我々は・・・」

BURR, PHILIP:

Near the same spot your son died, is that why—

「君の息子が死んだ場所の近くにいた。それは・・・」

HAMILTON:

Near the same spot my son died, is that why—

「私の息子が死んだ場所の近くにいた。それは・・・」

COMPANY:

Six!

「六つ目」

BURR:

He examined his gun with such rigor? I watched as he methodically fiddled with the trigger.

「なぜ彼はそんなに綿密に銃を調べるのか。彼が几帳面に引き金を確認するのを私は見ていた」

COMPANY:

Seven!

「七つ目」

BURR:

Confession time? Here’s what I got. My fellow soldiers’ll tell you I’m a terrible shot.

「告白の時間か。よしよしそうか。戦友たちは私がすごい腕前だと君に教えるだろう」

COMPANY:

Number eight!

「八つ目」

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