Bounty Dog【Science.Not,Magic】24

24

 ーー18歳になると、出来る事が大幅に増える。祖国では酒と煙草を人前で堂々と飲み吸い出来る。保護者が居なくても恋人との合意だけで結婚出来るし、娼婦も男娼も思う存分に買える。車も家も己だけの名義で買えるし、全ての乗り物の運転免許が取得出来る。ーー
 飛行機の操縦免許は持っていないものの、”彼”は3種の運転免許を取得していた。但し彼が持つ免許証は正規品では無く偽名での偽造品である。20人分の免許証に混じって本名でも同じ乗り物の運転免許を持っているが、万一の際に必要になるので作っている品だ。バーテンダー資格とカード賭博場のディーラー資格は、12歳の時に祖国から特技を魅入られて極秘受験をさせられ、合格して作成されて渡された。
 ーー大物の人間を”処理”する時、賭博場と酒場は絶好の狩場。其れを使えば其の場所は、お前にとって”自由”の空間になるだろう、と。
 時々、自由が何なのか分からなくなる。だがこれだけは確信している。今のおれは自由だ。
 あの人から命令を受けた。今回の任務は、すっぽかす訳にはいかない。ーー

 タクト・ディスペルは声だけ聞いても怒っている事が明瞭だった。遠い国の小さな組織の人間達に保護されたと知るなり、学会を途中で抜け出て連絡してきた親代わりの存在の兄に、カイは案の定、遠隔で延々と説教された。
 のべ30分余りの大目玉を喰らい、相手が学会に復帰しろと係員に促されたので、簡単な会話をしてから弟がスーパーハイパーを付けた挨拶をして、一方的に通話を切った。
 電気と電子を用いた此の世と此の世の交信に使った通信機を世話係の人間に返したカイ・ディスペルは、小首を傾げて尋ねた。
「あの真っ赤な兄ちゃんは?」
「YES、パーフェクト・ビューティー・ヒューマン」コノハ・スーヴェリア・E・サクラダは即答した。キンキン声の早口で言葉を続ける。
「パーフェクト・キュート・ワーウルフと、オマケの煙草臭いデジタルオタクおっさんの所に行ってる。あんたの事での相談よ。イケメンを私の視界から喪失(ロスト)させたNOな罪を、土下座して償え。ミニマム・ヒューマン」
 カイは途中から話を聞いていなかった。地面を蹴りながら「ふーん」と興味なさげに呟く。コノハのNOな気分が濃くなった。イケメン大好き三次元オタク女も、目の前にいる人間は唯の生意気な子供としか思わず興味なかった。
 カイの特技というオブラートに包める悪癖が、また発動する。コノハが通信機の操作をしている間に、1人で広場から支部に戻って施設内を探索する。狼の亜人ヒュウラを”ヒュラ兄”と呼んで慕うようになっている魔法研究中の科学者見習いは、ヒュラ兄よりも個人的に気に入っている”赤い兄ちゃん”を探す小さな旅を始めた。

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