Bounty Dog【Science.Not,Magic】14-15

14

 猫が爆睡している鳥と鮫を檻越しに見ながら、大きな声でニャーと鳴いた。己が今居る故郷の地で、数え切れない程多く居た仲間達と一緒に群れを作って暮らしていた時から、鮫の亜人に関しては相手に子猫を時々食べられる事もあったが、大人の猫は戦闘力が高く無くても、どの個体も易々と退治出来ると認識している。
 陸鮫族はボール遊びのボールにすると楽しいが、刺身には出来ず、焼いても煮ても生臭くて全然美味しく無く、他の食べ物が無い時だけ時々捕まえて食べている程度の魚である。
 なのに人間は此の全然美味しくない魚を、わざわざ辛くて苦い植物を一緒に入れて何時間も茹でて臭みを取ってから、貝で作ったソースで煮込むという手間を掛けてまで、大量に獲って喜んで食べている。何百年も鮫の亜人を捕食して生きている猫の亜人には『流行』という、人間が集団で行う無意味な資源と労力と生きる時間の無駄使い祭りが全く理解出来なかった。

 猫がニャーと大声で鳴いても、珍味に狂った人間達は1人も現れなかった。相棒兼、己より先に生まれたが種の成長速度的に弟になる狼の亜人も、何処かに駆けてしまって帰ってこない。
 年齢は8月3日に19歳になったが人間換算すると32歳程になっているリングは、目立たないが端に小皺がある口で大きくもう一声ニャーと鳴いてから、ブルブル震え出した左腕を持ち上げた。
 手首に付いている発信機から、人間の女保護官が話し掛けてくる。
『リング、リーダー命令で今からターゲット2体を回収に行くわ。居るのはターゲットと、あなただけ?』
 リングは鳴き声で返事する。人間換算だと同じ歳になる、最近亜人課に異動してきた32歳の人間の女保護官は、恐怖を押し殺しているような口振りで話を続けた。
『OK。ヒュウラはリーダーが補助しているから安心して。私……私しか今此処に居ないから……私が其方に直ぐ向かうわ。…………あ、
 絶望的だろうけど、何でも良いから植物や苔が近くに生えていたら、少しでも多く拾って集めておいてね。植物課に送りたいから』
 リングが鳴く前に、新参の女保護官は一方的に通話を切った。砂を含んだ風が吹き鳴らす音と、鳥と鮫の盛大な鼾声が聴覚を絶えず刺激してくる。
 リングは、ミト・ラグナル保護官が今何をしているのか尋ねたかった。彼女が付けている発信機は受信専用で、ヒュウラ達のように己から相手に電話する事は出来ない。

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