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エッセイ:オールドデリー

<本文>
<オープニング>
「ナンの、オカワリイリマスか?」
インド料理屋の店員が言う。
「んっふっ、お願いします。」
私は答える。
学生時代、よくインド料理屋で食事を取っていた。カレーが好きだったからだ。私を含めて、全ての日本人は、おそらくカレーが好きだろう。
日本人が経営しているカレー屋とインド人が経営しているカレー屋との決定的な違いは、ナンのおかわりが、自由と言う点だ。さらに付け加えると、南インド料理屋では、ご飯(バスマティライス)とサンバル、ラッサム(スパイスを使ったスープ)のおかわりが自由だ。底なしの胃袋を持っている人物ならば、店が潰れるまで、永遠にその店で食事をとることができるであろう。
利益を考えると、「なぜ」ここまで過剰におかわり自由を行うのか疑問だった。

<デリー>
「チャーイ、チャイチャイチャイ」
気づいたら、私はインドのデリーにいた。疑問に対しての答えを求めて来たのではなく、友人にしつこく誘われてきたのだ。そもそも私は、海外に行くことに抵抗があった、自分が見たことない、行ったことのない場所に行くのが怖かったからだ。インドという国も観光客に取ってある程度の危険が伴う国だ。正直、行きたくはなかった。しかし、今では、その友に感謝している。この国に来たことを。

<オールドデリー>
オールドデリーは、「人」の町である。とにかく人が多い。日中は人が多すぎて、地面が見えない。
オールドデリーのシンボル、ジャマー・マスジットの正面にある通りは、長い商店街になっている。衣類、食品、食器、調理器具、何でも売っている。もちろん、飲食店も揃っている。
朝、オールドデリーで見たのは、飲食店の炊き出しの列だ。貧しいものたちに、食べ物を与えているのは、飲食店だった。
食べれない苦しみを彼らは、理解している。ナンのおかわり自由とこの考えが繋がるかわからない。インドに来て、少しばかり、インドの食文化についてわかった気がする。
私には、食べれない苦しみがどのようなものかわからない。しかし、お腹いっぱいに食べれる幸せはわかる。帰国しても、お腹いっぱいインド料理を食べようと思う。
ちなみに、インドでナンは食べなかった。あまりインド人の中では、一般的ではなかったようだ。 <了>

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