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『ラスト・ディール』/映画感想文

『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(One Last Deal)
(副題いらんやろ。。)

フィンランド映画。マイナーですが良作だったのでレビューします。

1. あらすじ

廃業寸前の頑固な美術商のじいさん。オークションである絵画と出会う。これは名画だ!と気づいたじいさんは、職業体験で手伝いにきてくれた孫と力を合わせてその名画を買い取ろうとするが。

2. 点数

72点

胸糞もドキドキもアクションもない。しかし北欧独特のゆったりとした空気感、泣かせにこないリアルさ、美術商という職業の魅力がマッチしていてよかった。

3. 感想

絵画?画廊?

私は美術に関する知識はない。美術館は苦手だ。絵画をみてもなんの感情もわかない。
「画廊? 銀座のマダムが着物でフラッと寄って大金出して買うところでしょ?」
そんな人間でも大丈夫、しっかりこの映画は楽しめます。

美術商という職業

これもなじみがない。オークションなどで絵画を仕入れて、買いたい人に売る。
かっこよく言えばバイヤーで、かっこ悪く言えば転売ヤーだ。本作は美術商という職業の紹介ムービーにもなっている(みんな素手で持ってたけどあれが普通なのか?)。

本作で伝わる美術商にとって大事な要素は、
・絵画の豊富な知識
・同業者との横のつながり
・優良顧客のツテ
・時代に乗り遅れない
・勝負をかけるときの度胸

そう、他の仕事でも大事になることばかりだ。美術商だからといって特殊な要素が加わることではないことがわかる。

ただ、作中でじいさんは「最後にいい取引がしたいんだ」と嘆く。
これこそタイトルの「One Last Deal」だ。

では美術商にとっての「いい取引」とはなんなのか。
「いい作品が、その作品の価値がわかる適切な人の手元にわたること」ではないかと個人的に思った。

まず作品そのものの価値があること。金銭的価値というよりは、その作品への愛情。
そしてその価値がわかる人に売ること。たとえ名画だったとしても、絵画の教養がない人や粗末に扱う人に売り渡されると、宝の持ち腐れとなりいい取引とはいえない。

本作では孫に名画が手渡されることになる。孫に美術の教養はなさそうだけど、この名画を手に入れるための苦労を共有した戦友に委ねたかったのだろう。

北欧らしさ

本作はヘルシンキが舞台。全体を通して画面にセピア色が広がっている。
北欧特有の乾いた空気やじいさんの寂れ感を色彩でよく表している。

銀行、カフェ、マック、葬儀場なども無駄におしゃれ。北欧デザインが主張しすぎずさりげなく画面に登場する。

ほんとにKiitos、Heyhey って言ってるなとか、やっぱりスウェーデンとは近い関係にあるんだとか、フィンランドの日常が垣間見えるのもいい。


他にも娘(孫の母親)との交流も主題になっていて、全体としてはホームヒューマンドラマといったところ。
のんびりしたいときにおすすめの作品です。

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