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映画『LOVE LIFE』、オッパァを聴いて孤独を知る

深田晃司監督作品を観ると鈍器で後頭部を殴られたような衝撃が走ります。だからと言ってそれで死ぬわけではないんですが、なんだかモヤモヤしたものがしばらく残るんですよね。

『LOVE LIFE』も当然モヤりました。次第に薄くはなってきましたが、いまでもスッキリ晴れ渡っているわけではありません。そんな視界不良のなか感想文をお届け致します。

まあひどい話ですよね。
あの韓国での出来事は。妙子が一方的に抱いていた想いが一刀両断されたと言ったらそれまでなんですが。でもパク・シンジ。嘘はいけませんね。

パクはあんな感じですから、それこそ野良猫のように近寄って来て、ふっといなくなる。読めません。もちろん妙子はパクがどんな人間かはもちろん知ってたはずで。しかも一回彼に捨てられている。にも関わらずまたパクを追いかけてしまう。

でも結果的にはパクがいたからこそ、彼女は息子の死と向き合うことができた。それがポジティブなラストへと繋がっていく。
ものすごい皮肉だけれど、どこでどう繋がるか分からないのも人生。
それにしてもなんですかあの謎の名曲「オッパァ〜」って。もう笑うしかないですよ、あそこは。誰ひとり笑ってませんでしたけど。


そして俳優さんはホント皆さん素晴らしかったですね。とくにパクを演じた砂田アトムさん。正直知らなかったのですが存在感のある俳優さんですね。他の出演作品も見たくなります。そして妙子の姑・明恵を演じた神野美鈴さんホラー。怖かった、素晴らしかった。やはり今年公開作『百花』でも似たようなキャラを演じていましたね。ああいうキャラ、いま需要あるんでしょうね。

砂田アトムさん、圧倒的存在感でした。

「どんなに離れていても愛することはできる」

『LOVE LIFE』は矢野顕子の同名曲から深田晃司監督が着想を得たといいます。だからでしょうか、この楽曲が流れるラストのカメラの長回しはなんだかいろいろふつふつ湧き上がってきました。

この遠く離れている存在って、息子、パク、両親、そして二郎もなんでしょう。つまり、みんな。だから妙子のそばには誰もいない、結局はひとりなんだと思うんです。

孤独を受け入れることで一歩前に踏み出せる。
妙子と二郎のどこか前向きな後ろ姿に、わたしは彼らの決意のようなものすら感じました。
でもそれがいつまで持つかは分かりません。
二郎が元恋人・山崎との関係を続け夫婦は破局、なんてことも十分ありえます。

目の前にいる大切なひとが奪われたり、信じるものに裏切りられたり。確かなものなど何一つありません。すべては所詮、まぼろしなのかも知れません。しかし頼りなく、不確かな人生であると思うからこそ、妙子と二郎のようにやり直すことが出来るのだと思います。



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