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【フィナンシェ話#8 前編】お金の教育。はじめの一歩は子どもに伝えること

 様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。

 社会人から2歳まで、4人のお子様がいらっしゃる平田さん。コモンズ投信の受益者から社員になったという驚きの経歴をお持ちです。社会的課題にも関心が高い平田さんが、日常生活でどのようにお金のことを教えていらっしゃるのかを伺いました。前半は「寄付」を中心にしたお話です。

■ 大人になったときに思い出して、寄付してくれたらいい

ーお子さんにはどのようにお金のことを教えていらっしゃるのでしょうか。

平田さん:上2人の子どもたちにはあまり実践できなかったのですが、3番目の子とは、一緒にこどもトラストセミナー(コモンズ投信が開催)に参加しました。このセミナーは単にお金の使い方を学ぶのではありません。色々な社会課題があること、そこに向けて働いている人たちの存在、解決されるとどんな方向に行くのか、という内容が多かったと思います。

こどもトラストセミナー1

(平田さん親子が参加されたこどもトラストセミナーの様子)

―セミナーに参加された後、お子様とは何か会話をされましたか。

平田さん:必要な情報は揃っているんですけど、セミナーだと時間が限られています。だから、子ども心に何かしら疑問を抱くようですね。当時小学生の子からは、「こんな話があったけど、実際はどうだったの?」とか「活動している人たちのお給料はどこから出てるの?」という質問がありました。これらに対して、「自治体や国が助成金を出して、生活できるようなお給料は出ていて・・・」という説明をしました。

こどもトラストセミナー2

(こどもトラストセミナーに参加されたお子様の様子。紹介動画で「写真を見て、色々意見を言えたので嬉しかったです」とコメントされています。)

―子どもから疑問が出るのもすごいと感じますが、きちんとその疑問に答えられているのですね。

平田さん:自分で寄付をしたいという気持ちに結び付いてくれたら、というのはずっと思っていたことなので。私自身が寄付していることも、子どもたちには伝えるようにしています。例えば、寄付先の障がい者スポーツ、盲導犬、人権問題などに関するニュースが流れたとき、「これを解決しようとしている人たちに寄付をしているんだよ」と話しています。

 ただ、『わずかでも自分のお金を出すことで、困っている人が少しでも助かるんだったら』と慈善の気持ちで思えるようになるのと、『自分で寄付したい』というのは別だと思います。子どもにとって、銀行引き落としやクレジットカードの寄付は現実的ではない。だから、大人になったときに思い出して、寄付をしてくれたらいいなと。

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―確かに、子どもが寄付できる選択肢はまだまだ少ないですよね。寄付付き商品もありますが…。

平田さん:チョコレートはありましたね。森永のチョコを買うと1円寄付される、というのがあるじゃないですか。「チョコレートでもこれを選んだら、こんなことに使われるよ」と小学生のころから教えています。

 だからか、大きくなった今もその商品を買おうとしますね。子どもが自分のお金で買い物をするとき、そういう気持ちを持っているのは嬉しいことです。だから、生活の中できっかけがあれば、できるだけ一言二言だけでも、必要な情報を伝えようとしています。
 寄付付き商品はもっとあっても良いと思うんですが。子どもが買える商品は少ないので、もっと広がってくれたらいいなと思います。

■ 伝えることで、子どもは自然と行動できるように。

平田さん:私の場合、体系立ててお金や寄付のことを子どもたちに教えよう、とはしていないんです。私自身、寄付やお金以外の自分の労働力やボランティアなど社会課題に対して色々してきたので、子どもたちに伝えたいなと。だから寄付はお金だけでなく、もっと広く自分の持っている何かを他人に無償で差し出すことだ、と子どもたちに話しています。
 どこから聞いたのか分からないのですが、ある時、長女と次女はヘアドネーションをしたんです。特に「これしなさい」と言った訳ではないのですが。子どもたちが自身で考えたんですね。本当に良い判断をしたなと今でも思っています。

ー平田さんのように何かしら情報を伝えていく、というのは難しいことだと感じる方も多いと思います。

平田さん:断片的な情報でも、何かしら話すこと。それがどこかのきっかけで子どもが思い出し、自分の判断や行動に結び付く。そんな物事の方向性を決めるようなことに、子どもたちの中でつながってくれれば嬉しいです。
 伝えるのは言葉だけでなく、日々の行動を示すことでもできているかなと思っています。例えば「休日にボランティアに行くから遊べないよ」と言うとか。肉体労働のボランティアに長男を一緒に連れて行ったり、子どもたちに声をかけて要らなくなった本を寄付に出す、などもしていました。

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ー先ほど寄付付き商品の話もありましたが、買い物の面からお子さまたちに伝えていらっしゃることはありますか?

平田さん:私自身の話になりますが、買い物でレジ袋はもらわない、ペットボトルはなるべく買わない、などルールを決めているんです。子どもたちと一緒に出掛けて話をするとき、「なんで?」と子どもに聞かれたら話をする。こちらから能動的に伝えるのではなく、聞かれたら説明する。
 私自身はできるだけサステナブルな買い物をしたいと思っていますが、子どもには私の行動で関心や疑問を持った点に答えていきたいです。背中で伝える、と言うんでしょうか。いくら言葉で「良いお金の使い方をしなさい」と話しても信用されないから。親自身がサステナブルな生活をしないといけない。もちろん、プレッシャーはかかります。

 それに高学年になると、親が言ってもなかなか聞いてくれないんですよね。たとえばお小遣い帳を付ける、とか。お金の4つの使い方(※)を説明しても、押し付けられた!と感じたようで、うまくいかなかったという反省があります。だから、ある程度高学年になると、コモンズ投信のこどもトラストセミナーやFP協会が行なっているような、親以外の大人が伝える金融教育が必要なのでは、と痛感しています。

 確かに、「持っているお金の数%は寄付するものだよ」と小さいころからの生活習慣として育つと自然に身に付くかもしれません。未就学から小学校低学年できちんと身に付けばベストだと思います。それより大きくなってしまったら、外部の金融教育を活用するのが良いでしょうね。

(※)4つのお金の使い方は、消費・貯蓄・寄付・投資の事

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 寄付を教えることは、遠く離れた人のことを思いやれる想像力を育むことにもつながると思っています。確かに、寄付やお金のことをきっかけがある度に子どもに説明する、というのは共働き家庭が増える中、大変なことかもしれません。でも、習い事や1回きりの授業での説明だけでは、寄付やサステナブルな買い物を実践できないのではないでしょうか。平田さんの言葉だけでなく、行動でも伝えていらっしゃる様子は、私たちもぜひ真似したいものです。 

 後半は、平田さんに寄付に留まらない金融教育に対しての考えを伺いました。併せてぜひご覧ください。

(取材日:2020年11月25日、取材:Mari Kamei)


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