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【フィナンシェ話#7】子どもにお金の話を教えられる?(後編)

 様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。

 前編では、小学校6年生のお子さんを持つコモンズ投信の投資家でもある岡さんに、お小遣いのことやどのようにお金のことを教えていらっしゃるのかを教えていただきました。後編では、投資信託についてご存じなかったところから、どのように子どものお金の教育を考えるようになったのか、をお話いただきます。投資を遠い存在だと考えている方も、共感する内容が多いと思います。

■お金の使い方を子どもに任せると、子どもの考える力が育つ

―お金を4つの使い方に分けられる貯金箱(ピギーちゃん(※1))を持っていらっしゃるそうですが、それぞれの使い方はどのようにされているのですか。

岡さん:ピギーちゃんの貯金箱は子どもが小学校3年生くらいの時にセミナーで知り、これは面白い!と感じたんです。幼稚園や小学校の子どもたちに、まず「使う(消費)」「貯める(貯金)」「増やす(投資)」「譲る(寄付)」の4つにお金を分けることから覚えましょう、というところから始まるので。子どもにも分かりやすいです。それで、お小遣いをあげると同時に使い始めました。

 寄付に関しては、コモンズ投信が開催する子ども向けの「寄付の教室」で紹介されたNPOを気に入ったようなんです。「ここを応援したい!お小遣いから200円出すから、ここに寄付して」と言い始めて。じゃあ、子どもの200円とママとパパも一緒に出して、親子で毎月1,000円寄付しましょう、というのをずっと続けています。

 私自身が気に入ったNPOに寄付をしていたことを知っていた影響もあると思いますが、子どもがお小遣いから寄付をしたい、といったのには驚きました。

寄付

―自ら寄付したい、と言うのはすごいことですね。その他のお金の使い道はどうでしょうか。

岡さん:月初に渡すお小遣いは、この寄付の200円、『あつまれ動物の森』にオンラインで入るためのお金200円を親に渡すところから始まります。残った2,600円からやりくりします。でもその内訳をどうしているか、についてはあんまり関知しないようにしている。できるだけまかせるようにしている。

やっぱり練習ですから。お小遣い帳の残高さえ合っていれば、問題なし、と。時々高額なものを買う前に確認してくることもありますが、「パパのお金じゃないから、自分で考えて買って」と言っています。


―お年玉はどのようにされていますか?
岡さん:小学4年からお年玉は全部渡しています。額が大きいので、自分の使いたい分だけお小遣いにして、それ以外は郵便局に預けます。欲しいものがあって、お年玉を下ろすときは、親に相談する。ということで、お年玉も全部自分で管理させるようにしました。親が貯金したい、という気持ちはあるんですけど(笑)
 
 でも、あんまりお年玉を下ろすことはないですね。ポケモンセンターに買い物に行く前に下ろして、レジでお金が足りないとい時がありましたが。その時は、「買っていい?」と聞かれ、「お金が足りないなら諦めないと。約束だからね」と言いました。ここで「買ってもいいよ」と言ってしまうと使い方を間違ってしまうのかなと思います。かわいそうですけど、いつまでも親は手助けできないし、自分でちゃんと判断することにもつながっていく、と考えています。

 それ以外は、滅多にお年玉を使うことはないですね。お誕生日やクリスマスでゲーム機などは手に入れているので、貯めているお小遣いで足りているようです。

通帳

―大きい金額のものは計画的に誕生日でもらおう、など意外と計算しているのかもしれないですね。

岡本さん:口には言いませんけど、しっかり考えていると思います。自分が欲しいものをクリスマスまで、誕生日まで我慢すれば買ってもらえる、という計算ははたらいているんでしょうね。

■長い目線でお金を教えることが必要

―お子様が幼いころからお金のことを教える機会を与えてきた岡さんですが、なぜお金を教えることが必要だと考えるようになったのですか。

岡さん:偶然、子どもが小学1年生の時にテレビでコモンズ投信の方が出演されていたんです。「子どもの将来のための資産を育む投資信託」というような話をされていて、「今ではなく将来にお金を託しましょう」という言葉に共感して。どんなところなんだろう、とネットで調べて、子どもと一緒にコモンズ投信のセミナーに参加しました。

 そこで、自分があまりにも知らない、ということに気付いたんです。「使う」「貯める」「増やす」「譲る」の4つに分けることも知らなかったですし、実は、それまで寄付先としては赤十字しか思い浮かばなかったです。投資も株主優待はもらっていましたが、投資信託という言葉も知らなかったんです。だから子どもよりも親の方が衝撃を受け、子どもに教えるために、親が学ばないといけない、と思いました。それがきっかけでしたね。

 

―現在、投資信託に投資をされていることは、お子さんにお話されているのでしょうか。

岡さん:話しています。投資信託を積み立てているよ、と。でも、投資を子どもに教えるのはなかなか難しいですね。親が丁寧に説明しないといけない。実際、私の子どもは保守的な性格なので、「減るのは嫌」となります。だから大人も踏み切れない人がたくさんいるわけです。

 でも慌てないことも大事です。積み立て投資も、お金の教育も時間軸を長くとって取り組むことが必要だと思います。私は毎月定額を投資し続ける長期投資をしていますが、今回のコロナショックでは、マイナスになる時期があったものの、すぐに資産はプラスに転じました。長期投資の特長を聞いてきましたが、本当にその通りなんだ、と実感できたのは、積み立て投資を始めてから10年後なんです。実感できると、もっと続けようという気持ちになりますよね。

 お金は道具の一つです。同じ道具のスマホやパソコンだって、1日や2日で上手に使えるようにならないんです。何年もかけて、ゆっくりとできるようになるので、子どもに対しても時間をかけて見守っていこうと思っています。

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―投資を始めとするお金の教育は、なかなか広がっていないという面があると思います。

岡さん:私たち自身がお金や金融の教育を受けていないので、子どもにどう伝えたらいいのか分からない、という方は多いのではないでしょうか。お金のことを子どもにちゃんと教えてくださる方々や会社はあるんです。でも、普通の人がなかなかそこにたどり着けない、という課題はあると思います。

 また、お金のことは学校が教えてくれるんじゃないか? と思う方もいらっしゃるかもしれません。私も色々と調べてみたのですが、小学校でも中学校でも教えてくれません。他の授業でいっぱいで、だいたいお金の話は省かれてしまっているんです。

 だから、私自身も何かお金の教育に関しては行動したい、と思うところがあります。子どもにお金のことを教えるのは、単にお金の話だけでなく、自分で判断して考えることができる、ということにもつながると思うんですよね。それに、これからの時代、人生100年と言われて運用も非常に大事になっています。だから、子どもたちにはしっかりと知識を身に付けてもらった方が良いと考えています。

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 すぐに点数が出るような教科と異なり、日常生活で試行錯誤しながら学んでいく要素の多い金融教育。そんなお子さん自身が学べるきっかけを作るためには、親が一歩引いて長い目線をもって見守る、ということが重要なのだと感じました。前編のお話も含めて、まず私はお小遣いについて子どもと話し合い約束事を書くこと、そして夫にもこんな考えがあるよと共有することから始めてみたいと思います。みなさんは何から始められますか?


 お忙しい中、貴重なお時間をくださった岡さん、そしてご紹介くださったコモンズ投信の馬越さん、ご協力くださり本当にありがとうございました。

文中の注釈に関連するリンクはこちらご覧いただけます。
※1 ピギーちゃんの貯金箱 

(取材日:2020年7月27日、取材:額賀佑佳、Mari Kamei)


 フィナンシェの会では、「お金がどこから来て、どこへ行くのか?」を軸に親子でお金のことを学ぶための情報発信をしています。お金を学べるアイディアや絵本も紹介していますので、宜しければ他の投稿もぜひご覧ください。


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