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92歳 三石巌のどうぞお先に 29

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


キトサン秘話

カニの甲羅利用から出発

 インターフェロンってことばは聞いたことがあるだろう。例のC型肝炎にきくっていわれているくすりだよ。
 これはアメリカで評判になったもんだから、日本でも使うようになった。だが、おなじC型肝炎でもアメリカものと日本ものとではウイルスのタイプがちがう。それで日本じゃ評判を落としたってことさ。
 もともとインターフェロンは、ウイルス干渉因子として東大の 元教授、長野泰一先生らが見つけたものだ。これはウイルスに感染すると、細胞が自前でつくる。そうしてウイルスがふえるのに干渉(インターフェロン)するんだ。そのうえ、NK(ナチュラルキラー)細胞を元気づけて、ウイルス感染細胞のどっでぱらにトンネルをあけるんだな。そればかりじゃない。がん細胞をそうやって殺すってことなんだ。
 人間の体ってやつは、ミクロの世界でなにをやっているのか見当もつかない。いっさい見えないわけだからな。
 前回、インターフェロンをつくるのには、ビタミンCとタンパク質がいるって書いた。キミはそれで安心したんじゃないかな。魚も食うし、やさいも食うから大丈夫ってわけだ。
 ところが、この考えがいちばんこまる。ビタミンCにしたってタンパク質にしたって、出番がものすごく多い。ひっぱりだこなんだ。だから、どっちもたっぷりとっていなかったら、インターフェロンが必要なだけつくれないことになる。これは算数の問題だ。
 ボクはかぜをひかない。ひきかけてもすぐになおる。インターフェロンがつくれるようにしているからだ。
 つまり、タンパク質もビタミンCもふんだんにとって、不足のおそれがないようにしている。たったそれだけのことなんだ。
 カニの甲羅はむかしはゴミだった。これをどうにかしたいという願いからうまれたのが、キチン・キトサンの抗菌作用だった。あの甲羅を酸やアルカリで分解したものを畑にまこうというアイディアだった。これで作物を病原バクテリアからまもろうってわけだ。
 やがて地面にまくより人間に食わせるほうがカネになるって話になった。キチン・キトサンは菌類、つまりキノコやカビにもある。キノコはどれでもいいだろう。カビはカマンベールチーズにたっぷりある。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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