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絵のない俳画「馬酔木」俳句+

人界とヤマを隔てて咲く馬酔木

 日が暮れたらここから先へは行っちゃだめよ。と、母は言った。

 暖かい春の陽は沈むのが遅くなり、遊びすぎて気が付くと夕刻だった。夕闇が山から迫っていた。
 山裾にぼうっと白い揺らめきが見える。昼間は気付かなかった小さな花の茂み。チリチリと鈴の音が聞こえた気がした。
 ここから先はだめだ。胸がしんとなってあわてて振り返って走り出した。

 どこをどう走ったか、家に着く頃には半べそをかいていた。

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