被疑者番号「10」【前編】


これは、とある事件の記録である。
留置場の構造や生活リズムは警察署ごとに違っているため、詳しく説明するとどこの警察署にあるかわかるらしい。


【2/15(水)】 

20:00 某所

その日は大した慌ただしさもなく、私は日々の業務をこなしていた。
「もうそろそろ戻りますね」
そう私は仕事仲間に話して別の現場へ向かう。

当時、私が雇われていた会社は、キャバクラ・ガーズルバーをはじめとして様々な事業を展開していた所だった。
飲食業を続けていた関係で、調理を任されたりすることもあって大変ながらも楽しんでやっていた。
時間は20時を回っていたが、まだまだ業務は残されていた。
足早に車で30分の距離にある別の店へ向かう。
店近くの駐車場に止めた時、計ったかのようにスマホが振動した。
上司からだ。
「ちょっと店がトラブってるみたいだから向かってあげて」
はて?店にはもう一人従業員がいるから大丈夫なはずだけど……。
そんなことを思いながら急ぎ荷物を肩にかけて店へと向かった。

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