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「握る男」 何を握る?

初の原宏一さんの作品。

「寿司屋で働く日常の中で、どこにフォーカスした作品なんだろう」と気軽に手に取った記憶があります。

昭和56年、鮨屋「つかさ鮨」で働く徳武(通称:ゲソ)と主人公の金森(ゲソの兄弟子)の話。
ゲソは個人店乗っ取りから外食産業を手中に収める策略家であり、主人公の金森の視点からの物語になります。

奇策とも思えるゲソの策略により圧倒される金森。
ゲソが手中に収めるのは、兄弟子、女将や親方に始まり、仕入業者、新聞記者、銀行員、上場会社の役員などと実に幅広い。
全てに共通していることは「相手のキンタマをゲソが握っている事」
(早速のタイトル回収)

この作品を通して、学んだことは下記の三点になります。
①咄嗟の判断力の重要さ。
②次の高みへと繋げるためにする事。
③プランド・ハップンスタンスセオリー。
(③に関してはつい最近知り、この著書の内容を連想しました。)


それぞれ少し掘り下げてみます。。。

①咄嗟の判断力の重要さ。
皆さんは、重要な判断をするときかなりの時間をつぎ込みますか?
心理的に、誤った選択をしないように、選択し自分自身後悔をしないように様々な理由を作ってしましますよね。
時には相手の合意も求め「総意」として決めて、選択した事が失敗に終わった際に、なるべく責任が問われないようにしてしまうのではないでしょうか。
しかし、悲しいことにここで判断までに要した時間はほぼ無駄に終わるという事をゲソは伝えています。
「ファーストチェス理論」という話もあり、それとは少し通ずる点もあるかと思います。

ファーストチェス理論とは、チェスの名人がチェスを行う際に「5秒で考えた打ち手」と「30分考えた打ち手」のうち、86%は同じになるという理論のことです。 つまり、どれだけ長く思考しても、“最初に思いついた手段”に戻ってくることが多いということです。

https://liginc.co.jp/560476

例えば、気になる人を食事に連れていく店を選ぶケースでは、、、
「咄嗟出た結果」、、、行きつけの和食居酒屋
「長時間考えて出た結果」
なるべく雰囲気がいい所?個室席の方がいい?価格帯が高すぎても逆に気を遣わせてしまう?店の周りに詳しい方がいいよな?飲食店サイトで評価が高い所?、、、と色々考えますよね。
ファーストチェス理論ではこの結果が、行きつけの和食居酒屋になる可能性が大きいという感じですね。

つまり、「咄嗟に出た判断結果」と「長時間考えて出た判断結果」が同じであるなら、、、
判断に要する時間は必要最小限にして、判断によって生まれる問題点に二の矢三の矢と用意するスタンスが大事ということです。


②次の高みへと繋げるためにする事。
これは「自分のバネを補填する」すると言ったほうが分かりやすいかもしれません。
本書では”恨み”に対しての事を指して綴っています。
この恨みの部分は「高みへいくためなら、なんだっていいよね!」ということです。
(もちろん犯罪はダメですよ。闇バイトダメ!ゼッタイ!)

例えば、学生の頃、サッカー部に入部するケースで考えてみてください。
入部の理由はなんだっていいですよね。
「サッカーがうまくなりたい」「足が速くなりたい」「瘦せたい」「女子生徒からモテたい」など。

同じくらいの技術を持つ学生二人がいます。
A君は「将来メジャーリーガーになって、スポンサーからたくさんお金をもらい、サッカー施設の整っていない貧しい国の子どもたちに、サッカー場をプレゼントする」とします。
B君が「有名になって学校のマドンナのKちゃんと付き合いたい!」とします。

B君の方が早く上達することって十分あり得ますよね?なんならB君の方が実現可能性が高く、そういった学生っていましたよね。
大層な夢を持つことは素晴らしいことですが、その人がやる気になるなら理由は「なんだったいい」ですよね。

つまり、その時の感情が一番動き、行動に出やすい理由を見つければいいんです。その時、綺麗ごとは一切いらないということです。


③プランド・ハップンスタンスセオリー
忘れてはいけない、まずは引用。


プランド・ハップンスタンスセオリーとは
プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance)は、日本語で「意図された偶然」や「計画された偶発性理論」と訳される、比較的新しいキャリア論です。20世紀末にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した理論で、これまでになかった偶発性とキャリア形成の関係を示すものとして注目を集めました。

日本の人事部 プランド・ハップンスタンス

つまり、「偶然の出来事に対してチャンスとして掴める準備をしているか」というニュアンスです。

よく「人脈づくりは大切」と言いますよね。
確かに、人脈って相当大切ですよね。。。

「年齢は首に出る、苦労は手、健康は爪、清潔感は髪、センスは服装、育ちは食べ方、色気はしぐさ、自信は歩き方、美意識は姿勢、成功は人脈」

(https://voicy.jp/channel/941)

納得ばかりのキングコングの西野さんの話Voicyで聞けます。
話が若干脱線しました。。。

このプランド・ハップンスタンス(意図された偶然)は人脈だけでなく、自分の理想から逆算してこれから起きる事を想像して、機会損失をしない準備をしているか?とも言えます。

例えば、ある大きな音楽団の話です。
音楽団は披露会で演奏する際に各楽器で一番上手な人が抜擢され演奏しますよね。
抜擢されなかった補欠の人は演奏する機会を失う訳ですが、ここでしっかりと本番に向けて準備をしているかが問われます。
もし、抜擢された人が急遽披露会に出場できなかったとします。
ここで、補欠の方で交代の要員として挙手できるか、その場の突発的な勇気だけでなく、「もしも」に備えて楽譜を完コピしている補欠が偶然をものにする訳です。

つまり、いかなる場合も偶然が生まれるのでそれを常に想像して、備えるまでしなければ他人との差別化は図れない事になります。

本書では、この偶然をゲソがほぼ強引に創り出して、備えまくっている故に獲得した機会がとても多く見どころでもあります。


以上、三点本書を通して学んだ事を自分なりに解釈し、抽象化させて揉んだ感想になります。
最後に特に印象に残った(三点に触れる)セリフを紹介して締めくくります。


「恨みってものは百年かかっても晴らさなきゃ、決して次の高みには上がれない」
「物事の成否は全て、咄嗟の判断で決まる。熟孝ほど無意味なものはない」
「世の中金より人なんすから、見定める奴のキンタマを握れるチャンスがあったら力業で握りにいかなきゃダメなんすよ」

握る男


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