柔術を武術的に再生する -その5- 下からの「腕ひしぎ十字固め」

1 私は、BJJの稽古を始めてから今日に至るまで、クローズドガードからの「腕ひしぎ十字固め」を一度も極めたことがない。毎日のように道場でドリルをしているにも関わらず、である。
 思い返すと、白帯の頃は動きにキレのある先達に何度も下から「腕十字(アームバー)」を極められていたが、青帯になる頃にはクラシックな下からの「アームバー」を喰らう事も(同じ道場でいつもスパーリングしている相手だから、という慣れの要素も大きいと思うが)ほとんどなくなった。

 先月ミヤオが主催する「カラテ・コンバット」という格闘技イベントが行われた。マットの4隅が45度の傾斜の壁で囲まれているのが特徴らしいが、私はこの大会で行われたグラップリングマッチ(ダナハー門下から3人出場していた)に注目していた。

 ヘレナ・・クレバー(注1)は今もっとも活躍している女性のグラップラーである。

注1)


 さて、「カラテ・コンバット」におけるヘレナの試合を振り返ってみよう。ヘレナは下からの「アームバー」でフィニッシュしている。動画を見ていると、ヘレナが「ラバーガード」に入った。「デッドオーチャード」を仕掛けている、という実況がなされているが、厳密に言うと、ヘレナは「ラバーガード」も「デッドオーチャード」(注2)も使っていない。

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