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美術鑑賞の楽しみ方

私は普段、美術鑑賞が今よりもっと楽しくなる、大人の知的好奇心を満たす講座の講師をしています。
場所は教室とオンライン、両方で活動しています。
今日は、美術鑑賞の楽しみ方について、思っていることを書きます。

美術鑑賞が趣味の方とお話しすると、時々「この絵を見てどう感じればよいのかわからない」という感想をきくことがあります。
私は思います、「何も感じないのならそれはそれでいいじゃないか、その絵に興味がない、つまりその絵が好きじゃないんだから」と。

ただ、そう言ってしまうとその絵を鑑賞する楽しみはそこで終わってしまいます。
今はわからないけど、鑑賞して楽しめるようになりたいと思ったときにどうすれば良いか?
感性を磨けば何か感じられるようになるかもしれません。でもどうやって?
感性を磨く方法は人それぞれ違うと思うし、感性が以前より磨かれたとどうやってわかるのでしょうか?
全てあいまいでぼんやりしていて具体的なイメージがつかみにくいと思います。


フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》 1798年 ルーヴル美術館

この絵を見てください。
若い美しい男女が向かい合っています。
二人とも裸です。なぜ?
男性の背中には翼がありますが、天使ではありません。
また、女性は男性とは関係ない方向を見ています。なぜ?
女性の頭の上には蝶々が飛んでいます。なぜ?

観察すると色々疑問がわきおこりますよね。
そこで、自分の感性をフル稼働して妄想して世界を作り上げて楽しむ。
それも一つの美術鑑賞の楽しみ方です。

しかし、この絵の作者ジェラールは、見る人に自由に感じてもらうようにとこの絵を描いたのではありません。
絵のタイトル「アモルとプシュケ」がそれを示しています。
ギリシア神話の中のアモルとプシュケの物語を土台にして、その中の一場面を描いたのです。
ならば、まずはアモルとプシュケの物語の内容を知ると、上記の疑問は解決します。
解決した上で、さらに自分の感性で鑑賞すると、物語を知らずに見ていた時と比べて、想像もしなかった新しい世界が広がります。
どうでしょう、アモルとプシュケの物語を知りたくはならないでしょうか???

絵画に関する知識を得ることそのものが目的ではなく、知識を手がかりとして鑑賞の楽しみを広げる・深めることができるのなら、その手がかりは多いほど楽しみが増えます。

私自身、絵画にまつわる知識を得ることで、鑑賞の楽しみがずっと深くなるということを体験し、それを美術鑑賞が好きな人たちにお伝えしたい、と思うようになってこの仕事を始めました。今もいつも、どうしたら皆さんの美術鑑賞の楽しみの役に立つだろうかということを考えてお仕事しています。

ちなみに、今日ご紹介したジェラールの「アモルとプシュケ」はルーヴル美術館の所蔵です。
2023年3月1日から東京の国立新美術館で始まる「ルーヴル美術館展 愛を描く」展覧会のメイン・ビジュアルです。この展覧会は6月末には京都市京セラ美術館に巡回します。

これに合わせて、アモルとプシュケの物語を詳しくわかりやすく解説するオンライン講座を開設しました。

キューピッドとプシュケの恋物語 絵画で読み解くギリシア神話
・3月12日(日) 10:00〜

詳細はリンク先をご覧ください。
ハッピー・エンドの物語なので、ギリシア神話初心者の方にも親しみやすいかもしれません(感じ方は個人差があるので保証はいたしません)。

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