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保護猫モモの忠心


 ジョウビタキは美しい鳥だ。勿論オスに限ったことだがオレンジ色の胸元がひときわ目を引く。


 もう随分前の事、その日私は普段怠けている掃除をするために窓を開けた。すると庭の葉が落ちた木の枝にジョウビタキのオスが止まっていた。素直にその美しさに感嘆する。「綺麗!」思わず大きい声が出てしまった。この偶然は私を幸せにした。ジョウビタキは声に驚き、そのまま飛んで行ってしまった。


 さて翌日、今日の天気を確認するべくカーテンの隙間から外を覗く。「えっ」私は違和感を覚えて、もう一度外を注意深く見る。
 そこには窓に対して垂直にきれいに横たわっているものがある。そうだ昨日のあのジョウビタキだ。もう、生きてはいない。私は溢れてくる涙が止められない。


 誰がこんな事をしたのかわかっている。猫のモモだ。その頃は猫達にせがまれると庭に出していた。そして、モモは普段から飛ぶものを捕まえるのが上手だった。私が鳥に感嘆したのを見ていて、これは飼い主が欲しがっていると思ったのに違いない。



 横たわったジョウビタキの胸のオレンジがますます鮮やかで私は声をあげて泣く。おんおん泣く。なぜ自然は平和に収まってくれないのだろう。
 ただ、鳥を愛でただけだったのに、私が声を上げたばかりに彼は命を落とした。モモにしても飼い主である私を喜ばせたかっただけだ。 簡単には涙は止まらない。

 

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