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大人のスマスイ

須磨海浜水族園が5月31日をもって閉園します。神戸市民(兵庫県や大阪府なども?)であれば、小学生の頃にのびのびパスポート片手に何度も訪れたのではないでしょうか?私も魚についてはそれほど興味があったわけではないのですが、海が好きで、いろんな動物が観られることから、親によく連れて行ってもらいました。中学生になるとほとんど行かなくなりましたが、閉園するにあたり最後に行ったのはいつなのか思い出してみたら、忘れていた記憶が出てきました。

先輩に誘われて

就職して5年ほど経った頃、大学院の時の先輩がスマスイに勤めていることを知りました。その頃、スマスイで寄生虫の特別展示が行われおり、魚類の寄生虫を研究していた大学院の先輩が主催していたようです。この特別展示を見学しに行った知人(教え子)が、私の知り合いがスマスイにいることを教えてくれました。その先輩から職員対象の講習があるから、受講しないかという誘いを受け、寄生虫の専門家の講義を受けたのですが、その専門家も大学院の先輩でした。いうなれば、プチ同窓会になっていました。その先輩は、今は鹿児島に引っ越しています。

ハオコゼの水槽の写真です。メバルを釣る時にいつも邪魔をされていたので、どんな場所にいるのかじっくり見ていました。

メバルを探して

就職してからも、大学院のころに行っていたメバル属3種に寄生する単生類の研究を続けていたのですが、1番の課題は神戸でメバルが釣れないことでした。別の地域で釣ってもよかったのですが、どうしても神戸にこだわりがありました。というのも、メバルの寄生虫は1958年に神戸市垂水で見つかったことから、神戸のメバルの寄生虫を調べることで研究に重みを持たせたかったためです。この時も、知人(教え子の保護者)を通じて、メバルに詳しいスマスイの職員を紹介してもらい、メバルを釣るためによい時間帯、エサ、場所など色々と教えてもらいました。また、展示されているカサゴを観察して、根魚がどのような場所に隠れているのかを研究していました。小学生の頃はこんな視点で魚を眺めていませんでした。肝心のメバル釣りですが、職員さんのおかげで、釣りの理屈は分かりましたが、実際に行うのは難しく、必要な数が釣れるようになるのに数ヶ月かかりました。

地元のありふれた魚を展示してくれているのもよかったです。子供の頃は、あまり面白いとは思わなかったのですが、釣りとかをすると、どのように生活しているのか関心を持つようになりました。

助成金

残念なことに最後にスマスイに行ったのは、助成金の受け取りの説明会です。スマスイは、『スマスイ自然環境保全助成』という瀬戸内の環境保全に関わる活動をしている団体や個人の助成を行っていました。私は『瀬戸内海東部に生息する魚類に寄生する寄生虫相の調査』というテーマで2019年に助成を受けることができました。経費として認められる物品の説明や報告書の提出方法など説明を受けたのち、学術主任から証書を手渡されました。その時に主任から「申請内容は、採用するかどうかのボーダーだった。君はDNAで寄生虫の種類を分けると言っているが、大事なのは形態だから。しっかりした標本を作って、観察してほしい!」と強めに言われたのが印象的でした。そのころ、DNA解析のやり方を習得できたときだったので、生物学の基本である形態観察をおろそかにしていたことを気付かされました。
その年は仕事も忙しかったのですが、助成金があることから釣具や魚を思い切って買うことができ、多様な魚を調査することができました。残念ながら、報告会は新型コロナウイルスの感染が広まり始めた影響で中止になりました。スマスイの助成金で行った調査結果は、論文にするほどの成果ではなかったのですが、この助成金で思い切って色々挑戦できたことは、その後の科研費の取得や論文の作成につながりました

子供の頃に興味をもっていたのは、世界のさかな館でした。蒸し暑い館内に、普段は見ることのできない熱帯の淡水魚がたくさんいました。リニューアル後も残っているのでしょうか?

意外と行ってたスマスイ

メバルや寄生虫の相談以外にも、「亀楽園」にミシシッピアカミミガメを持ち込んだこともあります。「亀楽園」は、人間の都合で持ち込まれて野に放たれ、駆除対象になっているミシシッピアカミミガメの面倒を見ているところでした。野外で採集したミシシッピアカミミガメを持ち込んだ場合は、入園料をタダにしていた時期もあったようで、生態系保護を直接訴えかけている良い取り組みになっていました。
小学生以来行っていないと思っていたスマスイですが、大人になってからも結構行っていました。しかも、自分の研究の手助けをしてくれていました。2024年6月には神戸須磨シーワールドとしてリニューアルオープンします。シャチやイルカの水槽があり、泳いでいる様子を見ながら食事もできるようです。日本でシャチが見られるのはこれで3カ所目となるようで、最近元気のない神戸を盛り上げるきっかけになるのでしょう。その一方で、子供に生物への興味を持つきっかけを与えたり、地域の水性生物の調査や生態系保護をする昔ながらのスマスイも残っていてほしいです


最後にスマスイを訪れた時にとった写真です。ペンギン好きの知人に頼まれて、説明会の後に撮りに行きました。


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