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【通学カバンを科学する】#6 これからのジェンダーフリーとは?『ストリートファイン』『ルーモ』誕生秘話。

ランドセル国内製造販売本数No.1※ブランド『フィットちゃん』の魅力を伝えるnote。#6では、2024年度モデルとして新たに登場したジェンダフリーのランドセル『ストリートファイン』『ルーモ』の誕生秘話をご紹介します。

  • 左/橋本 昌樹(はしもと まさき):ハシモトグループ代表取締役。2021年に就任。

  • 右/渡辺 陽子(わたなべ ようこ):2020年入社。デザイナー兼富山ショールーム販売担当。


※「フィットちゃん」は、株式会社ハシモトが商標権及び背負ベルト取り付け具に関する特許権を持ち、複数社で製造販売するランドセルブランドです。[調査対象期間]2022年1月~12月[調査範囲]メーカーに限る[調査機関]株式会社東京商工リサーチ
https://www.fit-chan.com/catalog

【通学カバンを科学する】#1〜5はこちら▼
#1 私たちがつくっているのは、道具としてのランドセルではない。
#2 100メートル先まで存在を知らせる!『安ピカッ』誕生秘話。
#3 軽く感じる!『楽ッション』誕生秘話。
#4 軽いのに、高機能。『ゼロランド』開発への挑戦
#5 本質を探りながら開発を続けていく。新代表・橋本昌樹が描く未来


1.赤やピンクでかっこいいランドセルがほしい


−新たに登場したジェンダーフリーモデルの概要と、開発の経緯について教えてください。
 
橋本:以前noteで詳しくお話ししたゼロランド(#4)と、『ストリートファイン』『ルーモ』の3シリーズが今期新たに投入したジェンダフリーモデルとなります。まず『ストリートファイン』は、黒をベースに赤やピンク、パールオレンジ、エメラルドグリーンなどの鮮やかなカラーを取り入れたランドセルです。開発のきっかけは子どもたちの声で、昨年から「ピンクのランドセルはありますか?」と男の子に聞かれることがすごく増えたんですよ。

2024年新シリーズの『ストリートファイン』。クロをベースに全7色展開。
※画像をクリックすると商品ページへリンクします。

渡辺:スーパー戦隊シリーズの影響が大きいと思うのですが、これまで女性が担当していたピンクのキャラクターに、昨年初めて男性が抜擢されたんです。ピンクのランドセル自体は以前から展開していますが、これまでの女の子向けのデザインではなく、「ピンクでかっこいいランドセルがほしい」という男の子からの要望を多くいただくようになりました。

橋本:だったら男の子向けに全面ピンクのランドセルをつくってみようかとさらにヒアリングしてみると、親御さん側は基本的にNGだったんです。子どもたちに喜んでもらうことが我々のものづくりの根底にある考え方ですが、同時に親御さんにも納得していただけるランドセルをつくりたいので、カラーの分量や配色のバランスを考えるところから始まりました。

−どんな風にバランスを決めていったのでしょうか?

橋本:まずカラーリングの参考にしたのは、大人の男性用のスニーカーです。ピンクやゴールド、パール調のカラーなどが差し色で使われていることが多いので、これくらいのバランスであれば親御さんにも受け入れてもらえるのではないかということで、かぶせ(=収納部に被せる蓋)のフチ部分だけをピンクにしてみようとか、ランドセルに合う比率を考えて足し引きしていきました。最初のデザインの段階で複数回、サンプルを作成してからも修正を重ねて、合計6〜7回は修正しましたよね?

渡辺:そうですね。子どもたちの憧れを最大限形にしつつ、親御さんにも受け入れていただけるバランスを見極めるのはかなり難しかったです。全部で7色のラインナップがあるのですが、中でも特にピンクは可愛らしくなりやすいので、他のカラーと配分を変えて肩ベルトを黒にしています。またステッチに使っている糸の色も、黒に馴染むピンクになるように試作を重ねました。

橋本:側面や内側のカラー配分にもこだわりましたね。例えば前ポケットの部分は、子どもたちがかぶせを開けた時に気分が上がるようにアクセントカラーを全面に使っているのですが、ファスナーまでアクセントカラーにすると浮いてしまったり、逆にベルト部分を黒にすると弱い印象になったりと、ちょっとした差が全体のバランスを左右するので、細かく調整していきました。

−完成までには険しい道のりがあったんですね。

橋本:実は、できあがった時にも社内では賛否両論あったんですよ。でも我々にとって一番大事なのは、子どもたちの声にまずは応えてみるということなので、もし受け入れられなかったとしてもそこから何か得られるものはあると思っていました。それでいざショールームで販売してみると、すごく好評だったんです。あるお子さんは一直線に『ストリートファイン』のところに走ってきて、パールオレンジをバシッとつかんで、「これこれ!」と言ってくれました。

クロとオレンジの配色は今までなかった『ストリートファイン』のクロ×パールオレンジ。

−それは嬉しいですね。

橋本:その時に親御さんともお話ししたのですが、その子は昔からオレンジが好きだそうで、「どこを探しても気に入るオレンジがなくて、まさにこういう色を探していたんです」と言ってくださって。お客さまの声に耳を傾けるというものづくりの姿勢が間違っていなかったことを改めて実感できましたね。

渡辺:これまではどちらかというと「『安ピカッあんピカッ』のランドセルはどれですか?」など、機能について聞かれることが多かったのですが、今年は『ストリートファイン』をめがけて来店されるお客さまが多い印象です。

−黒ベースですが、差し色が効いているので女の子にも選ばれそうですね。 

元々は女の子に人気だった「パールラベンダー」や「パールエメラルド」も使用。

橋本:そうですね。この間は男女の双子のお子さんが来られて、色違いで購入されましたよ。特定のカラーに偏らず万遍なく人気があるのも、幅広いニーズに応えられている結果なのかなと思います。またデザインのこだわりだけでなく、『安ピカッあんピカッ』や『楽ッションらくッション』などの機能もしっかり搭載しています。

2024年新シリーズの『ストリートファイン』。赤やピンクでもかっこいいデザインに。
※画像をクリックすると商品ページへリンクします。


2.大人のトレンドが子どもの憧れにつながる


−それでは、もう一つの『ルーモ』について教えてください。

橋本:『ルーモ』は今トレンドの“くすみカラー”を取り入れたランドセルで、親御さんの要望から生まれました。なので『ストリートファイン』とは逆のアプローチですね。先程お話ししたスーパー戦隊シリーズのようなメディアだけではなく、身近な大人が持つアイテムを見て憧れが生まれることもあるので、今後子どもたちからもこうしたカラーを求める声が増えてくるだろうということで開発に踏み切りました。

2024年新シリーズの『ルーモ』。くすみカラーで全4色展開。
※画像をクリックすると商品ページへリンクします。

渡辺:金具にはアンティーク調の落ち着いた色味を採用し、背当てもグレーにするなど、全体的にクラシカルな印象になるようにこだわりました。フックを固定する「ナスカン吊り」と呼ばれる部分は基本的にプラスチックが使われるのですが、ランドセル本体と同じ素材を使うことで世界観を損なわないようにしています。『楽ッションらくッション(#4)』や『フィットちゃん背カン』などの機能も搭載していて、トレンド感と使いやすさを両立しているのも大きなポイントです。

アンティーク調の金具に独自のグレーの背当てをカラーリング。側面のナスカンもルーモ独自のオリジナル形状となっている。

−お客さまの反応はいかがですか?

橋本:まず親御さんが一目惚れして、お子さんに勧めるという流れが多いですね。男女比は同じくらいで、性別に関わらず人気があります。大人のアパレルのトレンドを起点にして、子どもたちにもしっかり気に入ってもらえるデザインにできたなと思っています。

2024年新シリーズの『ルーモ』。男女どちらでも背負いやすいデザイン。
※画像をクリックすると商品ページへリンクします。


3.自由な感性で“好き”を選び取る時代


−多様化が進むランドセル業界ですが、『フィットちゃん』が考えるジェンダーフリーとは?

橋本:私たち大人は、ジェンダーフリーなデザインというと“男女どちらも使える”みたいなイメージを持ちがちだと思うのですが、子どもたちと話してみると少し感覚が違うんです。男の子はかっこいいもの、女の子は可愛いものがほしいというベースはあるものの、“ピンク=女の子”というような固定観念がないので、ほしいものに対してすごく純粋なんですよね。ジェンダーという括りで判断するのではなく、個人の感性で自由に好きなものを選び取る時代に変わってきているのかなと思います。

渡辺:『ルーモ』の4色のラインナップのうち、スモークブラウンというカラーがあって、最初私は男の子が好むカラーかなと思っていたんですね。でも販売してみると女の子からの人気も高くて、勝手な先入観で選択肢を狭めちゃいけないなって思いました。やっぱり正解は子どもたちが持っているんですよね。

橋本:ランドセルの企画を進めていると、基準がわからなくなったり、迷走することもあるのですが、ショールームで子どもたちと話すと、あるべき場所にきちんと振り戻されるんですよね。ちょうど今、2025年度の企画の真っ只中ですが、人気のアニメやファッショントレンドなど時代の流れも加味しながら、お客さまの生の声をしっかり反映していきたいと思います。 

渡辺:ショールームでお客さまとお話しする中で、昨年とはまた違った要望もいただけているので、できる限りたくさんのアイデアを出した上で、ギュッと絞り込んでベストなデザインにしていきたいと思います。カラー展開もさらに増やしていく予定ですので、楽しみにしていてください!

富山ショールームで実際に接客をする渡辺さん。お子さまの好みや親御さまの反応など直接得たものを企画開発に活かしている。