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8月17日(木):「エコロジカル・アプローチ」とコーチの役割

先般には自社のトレーナーに勧めてもらった書籍「エコロジカル・アプローチ『教える』と『学ぶ』の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践」を読了しました。

このエコロジカル・アプローチは欧州をはじめとしたサッカー界に浸透しつつあって、それを援用したプレーモデルや戦術的ピリオダイゼーションの書籍なども読んでいたので大枠での概念は把握をしていましたが、本書を通じて諸々への理解が深まった感があります。

エコロジカル・アプローチは運動の学習やスキルの習得といった「運動学習理論」に属する領域です。

こうした運動学習理論における従来的なアプローチはコーチが正しい運動(動作)を言葉で規定する言語的な指導が中心でした。

あるべき姿としての「型」を言語で示し、そこから外れたエラーが生じるたびにそれを正し、反復によって再現性を高めようとするやり方です。

私の場合はサッカーでしたが、どんなスポーツでもコーチのダメ出しを受けながら反復する光景は見られる通りでしょう。

これに対してエコロジカル・アプローチでは人を複雑なシステムと見なし、周囲の環境に柔軟に適応していく現象として運動学習を捉えています。

そのなかではコーチが言語的に答えを示すのではなく、学ぶべき運動が学習できるように練習環境を整える(デザインする)ことに重きをおく考え方です。

ここで言う練習環境のデザインとは、ターゲットとする運動やスキルが習得できるように意図して練習環境に制約を加えることを指し、「制約主導アプローチ」と呼ばれています。

従来型の指導をするコーチ像が運動課題の解決方法や答えを示す「ソリューションセッター」であるのに対して、エコロジカル・アプローチのコーチ像は運動課題を設定する「プロブレムセッター」という違いです。

こうした制約主導アプローチの利点としては以下のような点が挙げられていました。

・習得できるスキルの質、スキルの量、スキルの維持で従来型の指導アプローチよりも優れている

・優れている理由は一人ひとりの異なる個人制約に適した動作を探索・学習し、自己組織化できるため

・学習したスキルを実際の試合で発揮できる「転移」の度合いも、従来型の指導アプローチよりも勝っている

これらの状況を考慮した時のあるべきコーチ像は「制約のデザイナー」であるべき、との考え方が示されていました。

内容については実際に長くスポーツをしてきた自分自身に照らし合わせたり、運動指導に携わる身として納得できる面が多々ありましたね。

私たちはフィットネスクラブの運営が主たる事業で、スポーツ指導が本業ではないものの、学ぶべき点は多いと思います。

本書の副題に「『教える』と『学ぶ』の価値観が劇的に変わる」となっているように、ある面では考え方の転換を進める必要性を感じた次第です。

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