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3月3日(金):運動と脳の関係を知ったら「運動しなきゃ損だ」

昨日は運動と認知機能の相関関係の研究をもとに運動が脳にもたらす効用について触れましたが、本日も関連した話を続けます。

前述の研究では記憶力を競うメモリースポーツやeスポーツなど思考力が重要なゲームを競技するマインドスポーツのプレーヤー達が運動プログラムを通じて認知機能が平均で10%向上、その中でも問題解決能力9%、短期記憶能力12%、処理速度と注意力もそれぞれ10%の向上がみられ、自信や不安感などのメンタルヘルスの状態も改善したとの報告でした。

運動が脳に対してプラスな影響を及ぼすことは予てから至るところで報告されていてもはや周知の事実といえますが、そのメカニズムについて少し補足をしておきます。

昨日は認知や記憶に関する部分で昨年にベストセラーになった書籍「運動脳」をはじめ、10年以上の前の書籍である「脳を鍛えるには運動しかない」でも言及されている「BDNF(脳由来神経栄養因子)」について取り上げました。

BDNFは脳細胞が有害な物質などによって傷ついたり死んだりしないように保護するほか、脳の細胞間のつながりを強化して学習や記憶の力を高めたり、脳の可塑性を促して細胞の老化を遅らせる働きがあります。

そんなBDNFを増やす自然な方法が運動であることは昨日に記しました。

このBDNFはシナプスの近くの貯蔵庫に蓄えられ、血流が盛んになると放出され、その際にはIGF-1(インスリン様成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)、FGF-2(繊維芽細胞成長因子)といったホルモンが招集され、そのプロセスを手助けるといいます。

運動するとこれらの成長因子が血液・脳関門を通過し、脳内でBDNFと協力して学習にかかわる分子メカニズムを活性化させるのだそうです。

成長因子は脳内でも作られて幹細胞の分化を促しますが、運動中はその働きがより顕著になるということです。

もう少し突っ込んだ話をすると、IGF-1は活動中の筋肉がさらに多くの燃料を欲する時に放たれるホルモンで、筋肉にとって主要な、そして脳にとっては唯一のエネルギー源であるグルコース(ブドウ糖)をIGF-1はインスリンと協力して細胞まで運びます。

この時に脳内ではIGF-1が燃料の管理ではなく、学習に関連する働きを担います。

運動中にBDNFは脳のIGF-1の摂取量を増やし、そのIGF-1はニューロンを活性化して、信号を送る神経伝達物質であるセロトニンやグルタミン酸を盛んにつくらせます。

またIGF-1はBDNF受容体の生成を促し、ニューロンの結びつきを強くして記憶を確実なものにするなど、BDNFが長期記憶にとって重要な役割を果たしています。

年齢を重ねていくと前述した3つの成長因子とBDNFの生産量は次第に減り、それに伴ってニューロン新生も少なくなっていきます。

また加齢だけでなくストレスやうつ状態が長引くことでも、これらの因子やニューロン新生は減っていきます。

そうしたなか、投薬や服薬といったことをせずに自らの体内でBDNFやIGF-1、VEGF、FGF-2を増やすことができるのが運動ですから、これはむしろやらないほうが勿体ない、とも言えるでしょう。

そんなこんなで今春からは是非とも多くの方に運動を再開してほしいし、フィットネスクラブにも足を運んでほしいと思います。

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