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いい写真とは何だろう?       田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」

いい写真とは何だろう?
田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」

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田村君の2つの展示のポストカード

田村君は数週間前に、日本に帰ったばかりです。

この1年のベラルーシ(本と自由)と数年の東欧の写真展(ギャラリー718)を、広島市内2カ所で同時開催中です。

まず、ギャラリー718「EAST #1 Ostland」に行ってみました。



田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」

田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」
田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」


気持ちの良い街中のギャラリーに、ここ数年の東欧の写真が並んでいます。

田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」
田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」
田村虎之亮写真展「EAST #1 Ostland」

日本から遠く離れた東欧、ソ連とヨーロッパの境界に位置する国々は、気候的にはソ連と同じような厳しい寒さの国のようです。ここ数年のウクライナ侵攻やソビエト連邦解体後のロシアとその周辺、特に東欧と呼ばれる国は、私たちから見ると常に、巨大な国家、ロシアとヨーロッパの力関係、侵攻、支配のもとで揺れ動いてきたような印象があります。

巨大なロシア、ソビエト連邦と戦前はヨーロッパ列強や第2次大戦中のドイツなどの影響を受けてきた国々の印象です。

現在、旧日本銀行 広島支店で開催中のポーランドの「1944年ワルシャワ蜂起」でも、ヒトッラーの第3帝国とスターリンのロシアからの過酷な支配と収奪と破壊を受けてきた歴史が象徴的に物語るように、そのはざまで辛抱強く生き続けたイメージは、日本からすれば、極寒の気候にも思えるマイナス10度~20度の環境で春を辛抱強く待つ人々の姿にも重なるように、思えてしまいます。


こちらは、現在開催中の旧日銀広島支店でのワルシャワ蜂起の展示です。
旧日銀広島支店でのワルシャワ蜂起の展示
旧日銀広島支店でのワルシャワ蜂起の展示

実際に、旧日銀でのワルシャワの20世紀の歴史は、非常に酷薄な歴史でした。しかし、こうした歴史を何とか乗り越えて、今のワルシャワを作り上げた国、人々は、とても辛抱強く、様々な困難にも屈せない芯の強さを感じてしまいます。

田村君の写真の中にもポーランドのワルシャワの姿があり、また現地で、「ワルシャワ蜂起」の博物館を訪問したそうです。

田村君 ワルシャワの現在

こうした歴史的にも、また現在でもウクライナ侵攻が現しているように、東と西の間に存在している国、人々は、どのような気持ちで暮らしているのだろうかと思ったりします。

いろいろな紛争、侵攻、戦争があっても、人々はその中で暮らしながら自分たちの人生を生き抜いていきます。

それは、日本が太平洋戦争で苦難の歴史の中でも、人々は、この世界の片隅で、で描かれたように、自分たちの生活を必死で、またひたむきに生き抜こうとしたように、日々の生活があるのだろうと思います。

そうした歴史の中での現在の東欧の国々の、街中の普段の生活が、さりげなく写し止められています。

なにかの色がつくでもなく、何かに執着するでもなく、静かで、さえた視線で、今のこれらの街の空気感、大気感をすくあげてきたような写真です。

プリントも田村君が作っており、それぞれの街で彼がカメラを持ちながら、視線の中に感性の中に入り込んできた風景がすくあげられています。

淡々とも見えるその視線は、何かにこだわって、きれいだったり、うつくしかったり、力強かったり、いきがったりするような視線とは違った映像があります。

特に1枚1枚に物語や強い印象を埋め込んでいるわけでもない、何気なく見えるような風景は、しかし、単年に選び取られた映像であり、ずっと見ていてもこちらに圧迫感や押しつけてくるような感じがなくて、見ることが自由で、何かを思いながら、ゆっくり物を想うことのできる自由さがあり、長い時間でも何度でも眺めていることができます。

そういった意味では、表面的にはそうは見えなくて、一見ぶっきら棒だったり、撮ることの意志が希薄だったりするようにも見える写真ですが、じつは非常に意識と意志がはっきりしている写真だろうと思います。

今の巷に氾濫する写真の多くは、美しくあろうとしたり、うまく写そうとしたり、力強く写そうとしたり、そういった上手い写真や美しい写真や上手な写真がおおく、また写真を始めた多くの人は、そうしたものが良い写真、めざすべき写真だと思ったり、教えられたり、思いこんだりしているようにも思えますが、そうした事とは一線を画す写真のあり方、写真の力があることを、知っていただきたい、学んでいただきたい、気づいていただきたいと思うことが良くあります。

最近も、ある写真展の会場で、ここ数年で写真を始めた若い方とお話する機会がありましたが、彼は「写真が、うまくなりたい.」と強く言っていました。

彼のインスタを見るととても美し写真が多く並んでおり、十分写真の美しさ、写し方はできているように思えました。

しかし、かれは、「もっともっと、うまくなりたいんです。自分は、まだまだです。」と言っていました。

私は、彼に聞きました、「どうしてうまくなりたいの?」

「うまくなって、どうするの?うまくなって、なにがしたいの?」と。

彼は、写真を通して、ネットやそこでの情報で、写真スポットに行き知り合った人から、教えてもらいながら写真を撮る方法や季節や時期や撮り方などの情報を吸収しているようでした。

彼のめざす、良い写真、うまい写真・・・とはなんでしょう?

その先にどんな世界が開けているのでしょう?

彼に、今回の田村君の写真はどのように見えるのだろうか聞いてみたい気がします。

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田村虎之亮写真展 「EAST #1 Ostland」

12/19〜12/24 11-18時(最終日17:00まで)

ギャラリ-718 広島市中区袋町7-18

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「ベラルーシ案内~今日のベラルーシ~」

12/15〜12/29  平日16-24時(木曜休)土日14-24時

本と自由 横川
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