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肢体不自由のある生徒を職場体験実習で受け入れたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ライフハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~

はじめに(チームより)

「こどもたちのために、日本を変える。」事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、こども・子育て領域の社会課題解決活動と価値創造を行う国内最大規模のNPOである「認定NPO法人フローレンス(詳しいご紹介はこちら>>)」において、総務関連チームで障害者雇用スタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ライフハック」をご紹介しています。


▼本日のお悩み
「肢体不自由のある生徒を職場体験実習で受け入れたいのですが、どのような準備をしたほうがよいでしょうか」

肢体不自由生徒の就職率6%を変えたくて、フローレンスでは職場体験実習はじめました」でご紹介した通り、通常、就労を希望する知的障害などのある特別支援学校の生徒には企業実習の機会がありますが、同じ特別支援学校の中でも、就労を希望する肢体不自由のある生徒向けに実習の機会はほとんどありません。なぜなら実習受け入れ可能な企業が少ないためです。

今回は「特別支援学校の生徒を新卒採用したい:現場実習編」の番外編として、車椅子を利用していたり、手や腕を動かすことが難しい肢体不自由のある生徒を実習生として受け入れる場合にあると良いアイテムをご紹介します。

ライフハック①昇降デスク(電動スタンディングデスク)とタブレットがあると便利

車椅子の状態では通常の椅子より足の位置が高くなり、デスクに足を入れるのが難しくなる場合があります。

また、手が動かない場合には口でタッチペンなどを咥えてタブレット等に入力作業をしたり、指が動かない場合には手にはめた補助具で食事をするなど、通常よりもぐっと高い位置にテーブルがあったほうが使いやすいことがほとんどです。そこで、高さの変えられる電動スタンディングデスクの出番です。自由に机の高さが変えられるので、作業や食事が格段にスムーズになります。

写真は車椅子の実習生用に準備した昇降デスクです。2万円前後で購入しましたが、車椅子でない社員も立ち作業をする際に高さを変えて便利に使っています。

上の写真は低い状態で、下の写真は高くした状態のデスクです

また、パソコン作業をお願いする場合は、ノートPCやデスクトップPCを準備することが多いと思いますが、手が不自由な方にとってはキーボードを打つよりも、タブレットが使いやすいようです。

指などの身体のパーツでタッチ操作をしたり、口に咥えたタッチペンで操作したほうがスムーズに作業が進んでいました。実習前の面談で学校でどのようなPC機器を使っているか聞いて準備できると良いでしょう。

ライフハック②ファシリティを整えて、働きやすい環境をつくる

車椅子では、ちょっとした段差や障害物でも、自力で前に進むことが出来ないことが多くあります。また、電動車椅子も様々なものがあり、車椅子の重さが100キロ以上あり大人でも持ち上げるのが難しいものもあります。ちょっとした段差であれば、折り畳み式の段差解消スロープを準備することで解決することもあります。

写真はフローレンスが入居するオフィスビル入り口にある段差解消のために購入したスロープですが、車椅子での移動のためだけでなく、カートで重い荷物を搬入する時などにも使えるので、1台あるととても便利です。

また、可能な範囲での作業環境の整備もあると良いでしょう。以前、ある車椅子の実習生に郵便仕分け作業を依頼したのですが、車椅子から手を伸ばしても届かない位置に写真のような部署ポストがあり、投函作業が出来ませんでした。

全ての棚を手の届く高さにするのは難しいですが、車椅子で作業する棚は手の届く範囲にしようとレイアウト変更を考えています。

職場の通路なども、車椅子でどこでも通りやすくしたいところですが、全てがの通路で対応することが難しい場合は、まずは作業を行う場所だけでも車椅子が通れる広さに机の配置を工夫するなどしていきたいと思います。

そして、車椅子ユーザーの方の実習で、一番念入りに確認が必要なのが『トイレ』です。利用できないと実習受入が難しいのが現実です。車椅子はサイズも機能も様々なので、

・実習前に必ず本人にオフィスを見学してもらい、トイレまでの経路を確認する
・見学時にトイレに実際に入ってもらって使用可能か確認する

ことが必要になります。

また、いざという時の対応に備えて、車椅子の操作方法について実習初日に本人から説明を受けて操作できるようにしておきましょう。

ライフハック③Googleの入力フォームなどでPC作業をしやすく

タブレットでタッチ操作をする実習生に手書きのアンケートの文字入力を依頼した際、スプレッドシートに直接入力する方法をとっていました。しかし、キーボードであれば『Enter』で改行が簡単に行えるのですが、タッチペンでの改行は入力に時間がかかることがわかったため、Googleなどのフォームに入力することで、スプレッドシートに反映される仕組みにしたところ、飛躍的に入力が早くなりました。

現代では、指以外の頭や視線などで入力操作ができるパソコン入力デバイスや、音声認識技術を使って声を文字化する方法などありますし、学校でそういった方法を活用しているかもしれません。どのようなパソコン作業を学校で勉強しているのか、事前面談で先生に相談して、実習の場でも反映すると良いでしょう。

最後に

今回は車椅子であったり、手や腕を動かすことが難しい肢体不自由生徒を職場体験実習生として受け入れる場合にあると良いアイテムをご紹介しましたが、「そんなに準備できないから受け入れできなそう」とは思わないでください。

最初はわたしたちも全てがあったわけではありませんし、生徒が学校で使っているタブレットや補助器具等を持ってきてくれる場合もあります。実習で作業してもらう内容も事前に相談できますので、「企業での仕事(就労)を体験してみたい」と希望した生徒に、実習の場を提供してみようかなと少しでも思っていただけると幸いです。

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。

執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

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