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【シリーズ】魔女見習い

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魔女見習いである相澤 汐里(あいざわ しおり)のお話。
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小説|魔女の卵

小説|魔女の卵

 空は相変わらず青かった。どこまでも続いていく薄い雲が、空の広さを強調しているように見える。まるで写真に取られた風景のように、完成された風景が目の前に広がっていた。
 反対側では、大変なことが起こっているというのに。
「それじゃあ……。相澤、この問題をやってみろ」
 教師から指名をうけ、黒板の前に出る。簡単な文字式の計算だった。公式を確認するまでもなく展開していく。ふと、脳内をかすめた記憶を黒板に

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小説|魔女見習い

小説|魔女見習い

 魔女というのは、どうにも面倒くさい職業である。
 古くから童謡の中に取り入れられてきた、悪役の象徴ともいえる魔女。大抵はしわがれた皮膚に大きな鼻、曲がった腰に黒いローブ。薬草の匂いが充満した薄暗い部屋の中で、気味の悪い色をした鍋を掻き廻す、そんな悪い人物のことを指すのだろう。過去の魔女はそうだったのかもしれないが、今は全く違っていた。
 魔女と一口に言っても、たくさんの種類がいる。何かを操る者か

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