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小説

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これまで書いた小説・短編・掌編集(公開歴問わず)。 こちらに登録されたものについては、他の媒体での掲載を取り下げています。
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記事一覧

小説|世界の記憶

 眼を閉じれば、すべてのことが頭の中で処理することができた。あらゆることが、僕の頭の中で…

Te
4か月前
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小説|難しい話。

【注意】 物語の演出上、同性愛について一部否定的な表現があります。ご自身の判断でお読みく…

Te
4か月前
1

小説|祝福のチョコレート

 一つ咳をしたところで気が付いた。どうやら私は死んでしまうらしい。  あまりにも唐突な思…

Te
4か月前
1

小説|本の上

「たとえばさ」  古本屋で買ってきた文庫本を破りながら、彼女は呟いた。いくら一番安いのを…

Te
4か月前
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小説|白いキャンバス

 子犬ほどかわいい生き物は存在しないだろう。いや、こればかりは犬に限定した話ではないかも…

Te
4か月前

小説|まわる世界

 遠くの方で何かの生き物が大きな雄叫びをあげていた。見上げてみれば、白いクジラである。青…

Te
4か月前

小説|おかしなおかし

 お腹がすいた時はいつも空を見上げていた。青い空の上を流れる雲が綿あめみたいでとてもおいしそうだったから。口に入れる想像をして、味わって、飲みこむ。ただそれだけのことなのに、不思議と腹は膨れるのだった。つねに空想の中で生きているからかもしれない。現実のと境界線が自分の中で破綻しているからかも。どんな理由にしても、僕は目に見えたものを想像を付け加えることによって好きなように食べることができた。  別に特別お金に困っているわけでもなかった。高校生として普通くらいの小遣いはもら

小説|春の風と冬の少女

 頬を撫でる風は暖かかった。春にふさわしい、落ち着いた空気。僕は深呼吸をしてそれを肺へと…

Te
4か月前

小説|光る唇

 真っ暗闇の中では、彼女の唇はとても便利である。どんな趣味をしているのかわからないが、少…

Te
4か月前
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小説|誘光

 私たちの住んでいる街の奥の方には、昔から変わらない森がある。そこには何かよからぬものが…

Te
4か月前

小説|文字隠し

 眼を開いたら、大きな黒い塊が目の前を通り過ぎた。ごつごつ、ざらざらとした物体が白い海の…

Te
4か月前
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小説|扉の向こう

 部屋から出てみれば、冷たい風が強く吹きつけてきた。思わず目を細めて、扉を閉めてしまう。…

Te
4か月前
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小説|風船とカッター

「あなたはどんな死に方をしたい?」  飲み終わったペットボトルを弄りながら彼女は言った。 …

Te
4か月前
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小説|羽無し天使

 羽が生えていれば天使なのだそうだ。動物だろうが魚だろうが、とにかく背中のあたりから白くて光る羽が生えているのだとしたらそれはもう天使なのだ。それでは、まったく天からの使いという意味を無くしているような気もするが、この時代において、天使というものが存在しているかどうかも怪しいし、もし生きていたとしても、普通の姿では厳しいのだろうということは、何となく想像することができた。  それは、まったく違ったけれど。  私の背中には羽がある。肩甲骨のあたりから新たな骨が生まれ、そのまま乾