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ミュージカル『ベートーヴェン』2023/12/24ソワレ配信

ミュージカル『ベートーヴェン』大千秋楽おめでとうございます。今日の配信も観たいところでしたが、アーカイブを含めて時間を取れそうにないため、前回観た公演のあれこれを綴りながら、舞台に思いを馳せたいと思います。

2023/12/24ソワレ公演をライブ配信にて観劇しました。Wキャストは、海宝カスパール、佐藤フランツの回。

アーカイブもあったのに、年末年始の慌ただしさで2回しか観られず、記憶も薄くなってしまいましたが、メモ書きを頼りに書き留めておきます。

*井上ベートーヴェン*
    ミュージカル『モーツァルト!』と重ねて観てしまう場面が多々。主人公が自らの才能に追い詰められて苦しむ姿は、『ベートーヴェン』がより現実的に感じられました。井上さんの演じるベートーヴェンは、気難しくて心を閉ざしている雰囲気がリアルに伝わり、対照的に存在する弟カスパールが、よりベートーヴェンの心の翳りを引き立たせているようでした。
    1幕終盤にようやくベートーヴェンの幼少期も表現されていましたが、幼い頃から音楽だけが自分を生かす術であったことに、心が苦しくなりました。音楽の化身たちが、「自由、愛、信じることは諦めて、音楽を生み出し続けること」をベートーヴェンに求める場面は、幻想的でありながらベートーヴェンにとっては現実そのものだったのかもしれません。そう思うと、恐ろしさも覚えました。そして、音楽が引き寄せたトニの存在。トニが「支えているから今のままでいて」と歌い、譜面が舞台全体に降り注ぐラストの場面は、ベートーヴェンの運命に抗えない哀しみとそれに立ち向かう凄みを感じ、ゾクゾクしました。

*海宝カスパール*
   信じることを諦めない人、として終始存在していました。兄ベートーヴェンに対しても、妻となるヨハンナに対しても。1幕では、兄と決別したかのように思えましたが、2幕での兄との場面。どんなに分かり合えない時間があったとしても、心を閉ざさずに待ち続けたカスパール。「兄弟だから離れない」、「深い愛に別れはない」と言い切っていたその心情がそのまま貫かれていました。「愛を知らない哀れな兄さん」という歌詞も、カスパールだからこそ言えた言葉だと思います。(直球な表現でドキリとしました)

*実咲ヨハンナ*
    ヨハンナについては、受け取る側に委ねられているのか、考えさせられました。ベートーヴェンが心配するように、私個人としてもヨハンナの真の姿はどうなのか、心に引っ掛かりました。カスパールとの出会いも、まるで「吊り橋効果」の典型例のようでしたから。しかし、きっかけはどうあれ、カスパールの真心で最後に愛は勝つ的なことなの?とも思えたり。もう少し、ヨハンナのことも描かれていれば、と思います。

*木下ベッティーナ*
    ベッティーナもヨハンナ同様、描かれ方が薄くてあれこれと想像で解釈せざるを得ない存在。絶対的な兄フランツに逆らえなかったのか、兄を想う妹の気持ちからなのか、トニを裏切る結果となった経緯はハッキリとはわかりません。

*佐藤フランツ*
    限られた場面でしか登場せず、出てくるときは常にイライラを募らせているキャラクター。思い通りにならない妻へ苛立つ一面だけを切り取られているキャラクターでした。限られた場面でしか登場しないため、そうならざるを得ないのかもしれませんが、存在感は抜群。佐藤さんの重厚な歌声が威圧感を高めていて、印象深く残りました。トニとの言い合いになる場面も迫力が伝わり、しみじみ劇場で観劇したかった、と思いました。

*花總トニ*
    子どもたちといるとき、ベートーヴェンといるとき、夫フランツと対峙するとき、それぞれの心情が豊かで、心の内が湧き出すようでした。哀しみを湛えて歌声に感情が混ざり合う感じが、印象的で。また、花總さんの纏う世離れした穏やかな雰囲気が、物語の生々しさをマイルドにしているように感じました。

*全体のこと*
    舞台とオーケストラピットの使い方も興味深かったですし、映像の組み合わせ方も美しく、衣装も豪華でした。物語は、ベートーヴェンとトニの二人が軸となっており、もう少し周辺の人物たちも描かれていてもいいのでは、とも感じました。
    カーテンコールでは、まだ物語が続いているパフォーマンスになっており、目が釘付けに。ベートーヴェンと心が通じたのは、弟カスパールと、最愛の人トニだけだったということもそのパフォーマンスから伝わりました。

これからも再演されていく作品になるならば、進化を続けていってほしい、と個人的には思います。ぜひ、一度は劇場で味わいたい作品です。


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