『ブルーアーカイブ』ゲームデザインレビュー
今回は今年の2月に配信開始した、『ブルーアーカイブ』についてレビューします。
ゲーム性について
ブルアカのゲーム性は一言で言うと、「編成の面白さはプリコネ風、操作の面白さはクラロワ風」と呼べます。
▼敵との相性を見極めながら編成する
ブルアカのキャラクターには、5種類の攻撃タイプと4種類の防御タイプがあります。
キャラクター同士が敵対した時に、自分の攻撃タイプと敵の防御タイプの相性によって、ダメージに差が出ます。
「重装備の敵には爆破より貫通が効く」し、「軽装備には貫通より爆破が効く」といった感じですね。
この相性を考えながら、ステージごとに配置される敵の相性に応じて編成するキャラクターを考える楽しさがあります。
ステージが進むと敵のタイプが複数持つことも多くなるため、「今回は爆発キャラ2、貫通キャラ2の編成にしようかな、回復はまぁいらんかな・・・」と考える面白さが増していきます。
また余談ですが、この相性システムがあるために、
・相性に合ったキャラクターがほしくなる
・それぞれの攻撃タイプの最強キャラがほしくなる
という気持ちにさせられて、マネタイズに繋がる設計になっています。
▼スキルの発動順番と発動タイミングを見極めて敵を倒す
続いてバトル中のゲーム性について見ていきます。
勝敗条件は「時間内に敵を倒し切る」です。
(モードによっては「一定時間の間、全滅を免れる」という勝敗条件もあります)
バトル中、プレイヤーは、「スキルを発動するタイミングと場所」を決めることで、バトルに介入することができます。
発動できるスキルは全5つのうち3つがランダムに選出されて、その中から選んでいきます。
スキルを発動するとコストを消費します。
ブルアカのバトルには、コスト管理をしながら、スキルを出す順番とタイミングと場所を考える面白さがあります。
上記のゲーム性はクラロワとも似ているので、「クラロワ風」と呼びました。
(このようなリアルタイム性のあるゲームは僕は大好きです)
ゲームサイクルについて
ブルアカのゲームサイクルを1枚の図にまとめてみました。
初心者がどのようなモードの回遊を経て、そしてどのような欲求が生まれて中堅、上位となっていくのかが一目で分かるようになっています。
最終的には、「戦術対抗戦」(PvP)と「総力戦」(PvE)での「ランキングトップにいきたい」と思えるように、そこに至るまでに育成要素を散りばめていることが分かります。
ゲームサイクルに関わる要素として、特徴的な要素をピックアップしたいと思います。
▼育成要素
キャラクターのレベルは、プレイヤーのレベル分までしか上げることができません。
この仕様を採用した背景として3つのメリットがあると思っています。
1つは「極端なPay to Winを防ぎやすく、レベルデザインしやすい」ということです。
ゲームを始めた初日からキャラクターを最大レベルまで一気に強化できる仕様の場合、後発のユーザーが古参ユーザーに対して一気に追いつけるため、
古参ユーザーにとっては不公平感を感じやすいです。
それを「プレイヤーレベル以上にはキャラクターレベルを上げられない」という仕様があれば、ある程度時間をかけて頑張ってゲームをプレイしないと
古参ユーザーに追いつけないため、「古くからコツコツ頑張ってきた方が勝てる」構造になり、納得感を得やすいです。
2つ目のメリットとしては、「どのレベルまでレベルアップしていれば、どのステージまでクリアできるかを容易に設計できる」ところにあります。
例えばプレイヤーレベルが30なら、キャラクターのステータスもレベル30以上の数値にはならないわけですから、
「プレイヤーレベル30くらいに遊ぶステージはこのくらいの強さかな」と設計がしやすく、また実際に遊ぶプレイヤーとしても、設計通りのそれなりに手応えのあるステージを体験することができます。
3つ目のメリットは、「自分と生徒が一緒に成長している感覚を得られる」ということです。
この手の仕様でよくある体験としては、「自分のレベルが1上がる→キャラクターのレベルを1上げる」ということが繰り返されるようになります。
そのため、自分がレベルアップして嬉しい感覚のままキャラクターを強化するので、一緒に強くなっている感覚をより感じられるようになっています。
ブルアカは先生と生徒の物語ですから、そういう意味でも相性が良い仕様と言えます。
▼素材収集
このゲームサイクル図を見れば分かりますが、キャラクターを強くしていくには「装備Tierアップ」「スキルLvアップ」「神秘解放」をしていく必要があり、そのために別々のモードを周回して素材を集めていく必要があります。
プランナー視点としては、この素材収集部分が継続要素に大きく絡んでいくことになります。
素材自体はバトルにクリアしても確実に手に入るものではなく、ランダムでドロップするものなので、
といった変数を考慮に入れて、強化にかかる時間、1日に必要なプレイ回数などを決めていき、継続プレイを促す仕組みを作ります。
それぞれの強化アイテムに対して、そのアイテムを獲得できる任務を教えてくれて、さらに遷移できるUIは良いですね。
(プリコネ系ゲームとしてはもはやこれが必須要素とも言えます)
これは余談ですが、ブルアカのUIも良いのですが、プリコネのUIはさらにその上を行っていると個人的に思います。
必要なクエストを教えてくれる上に、その場でクエストをスキップできるし、さらにクエストの結果いくつアイテムを獲得できたかまで教えてくれる。(ブルアカも獲得アイテム数の表示はアップデートによって追加されたみたいですね)
育成のためのUI、操作性が抜群に良いですね。
その他良いと思ったところ
特に良いと思った所をざっと挙げていきます。
▼ストーリーと任務(バトル)を切り離しているのが潔くて良い
これまで、「ストーリーパートを読んで、読み終わるとバトルパートがあって、クリアするとまたストーリーパートが出てきて・・・」と進捗していくゲームが多かったと思います。
対してブルアカは、「バトルだけずっと進められるし、ストーリーだけずっと読めるよ」という風にバトルパートとストーリーパートを切り離しています。(ストーリーを読むためにバトルをクリアしなければならない、という継続率に影響する仕組みはきちっと実装されてあります)
ブルアカがフォローしているプリコネもこの形式ですね。
なのでそういう意味では不自然さはあまりないですが、改めて「なぜこの形式にしたのか?」という点について仮説を考えてみました。
・仮説:ユーザーニーズに沿って、ストレスを軽減した。
要するに、「ストーリーは置いておいてゲームだけを楽しみたい人もいるし、ストーリーを一気見したい人もいる。だとすれば、ゲームとストーリーを切り離せばストレスなく楽しめるのではないか?」という仮説です。
そもそも前提ですが、スマホゲームではコンソールゲームのように「物語の流れからそのままバトルへ突入する没入感」を演出することがまだ難しいです。(とはいえ原神のようなタイトルは出てきましたが)
スマホゲームの場合はテキストメインで物語が展開されますし、バトルも出てくる敵は違えど、パッと見の印象は直前のバトルと同じ見た目です。
そのため、「ストーリーを一気見して、しっかりキャラクターを愛でられる場所と、戦略を考えてしっかりバトルを楽しめる場所を分けるのもアリなんじゃないか」という結論に至ったのではないかと思います。
▼マスギミックの追加頻度がちょうどいい
任務には、バトルに入る前に簡単なすごろくゲーム的な要素があります。
遊びとしては、「指定マス数以内に移動して、敵を全滅させれば評価S」といった感じで、「いかに少ないマス数で敵を倒せるか」を考える遊びとなっています。
そんな中、エリアが1つ進むたびに新しいギミックを1つ追加する、といった頻度でギミックが追加されていく難易度になっています。
例えば、「マスが消える」や、「マス間の移動ができるようになる」など。
この追加されるマスギミックの追加頻度が、飽きがギリギリ来るか来ないか辺りで追加されるので、ちょうどいいなぁと思いました。
ギミックの内容も難しいものではなく、1つずつ段階的にチュートリアルが追加されていくので、わかりやすいです。
また、マスの上で自分ができることが増えていくので、成長している感覚が得られて良いと思いました。
(内容は違えど、アクションゲームで自分の発動可能なスキルが増えていく感覚に近いと思いました)
▼任務失敗時のスタミナ変換が良い
ブルアカでは、任務(バトル)に失敗すると、スタミナの一部が返還されます。(スタミナ10消費のうち、1だけ消費して9は返還される)
これはYoster運営というものあって、アークナイツの仕様を引き継いでいて良いですね。
また、任務に失敗した時に「レベルを上げましょう」と次の具体的なアクションに導いているのも良いです。
ゲームでは「迷い」や「不明点」が生まれると離脱につながってしまうので、こういう細かい所ですが、離脱を防ぐのに役立っていると思います。
▼1つの任務の中でコストを引き継いでいるのが良い
1つの任務の中で、3回ほどバトルを行います。
その中で、細かい部分ですが、「直前のバトルが終わった時のコストをそのまま引き継いでいる」という仕様がとても良いと思いました。
バトルが1回終わると、次のバトルではコストがリセットされて4から始まってもおかしくないのですが、1つの任務の中ではコストが引き継がれているんですね。
これだと、バトルが複数回あっても任務が地続きに続いている感覚があって、「任務を行っている」というゲーム体験がより濃くなって良いなぁと思いました。
▼ホーム画面での仕掛けが良い
ホーム画面にいたまましばらく放置していると、全UIが消えてキャラ画像だけになります。
これは良いなぁと思いました。
ブルアカのようなゲームでは、「キャラクターとの2人の濃い関係をどのようにして感じられるようにするか」という部分がとても大切だと思うので、このようなホーム画面での仕掛けは地味なところですが、ここまで行き届いていると没入感が高まります。
また、ホーム画面では絆トークのシーン(アニメーションあり)をホーム画面に設定できるのも良いですね。
▼モモトークが良い
LINEのようなチャットの会話からスタートして、トーク内で会う約束をして、と段階を経て絆が深まっていくのが良いですね。
あと、ストーリーの内容によっては絆ストーリーが終わったあとにもフォローのように会話がなされるのもリアルで良いと思いました。
2人だけの秘密を共有している感覚を感じることができます。
まとめ
基本的なゲームサイクルやUIはプリコネを踏襲しながら、バトル部分はリアルタイム性があって手応えのあるバトルで面白いゲームだと思いました。
また、「先生と生徒」という関係をどのように濃くしていくか、という世界観を作り込むための仕掛けや見せ方も秀逸だと思いました。
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