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人を惹きつける場所作りのコツは何?パブリックスペースの活用方法を紹介

ネイバーフッドとは、場所に根差した人間関係のこと。昔ながらのご近所づきあいや友達、職場の同僚との付き合いなどがネイバーフッドに当たるでしょう。

現代のネイバーフッドは、急激な都市化や資本主義の台頭でその活力を失いつつあります。

「人との豊かなつながりを目指しながら、誰もが人生の主人公になれる場を作ろう。」

そんな思いでFUTURE NEIGHBORHOOD ON PAPAERはコミュニティ型ワーキングスペースON PAPERの有志により始動しました。

今回はパブリックスペースの活用というテーマで、(株)ヴィレッジーズの田村さんと(株)文化工学研究所の北川さんにお話を伺いました。

人がつながる場所作りのヒントを求めている方は、ぜひ参考にしてください。

活動内容

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岩田さん:まず初めにお二人の活動内容についてお聞きしてもよろしいですか?

田村さん:説明が難しいんですが、アートとファッションを通じて遊休資産を活用する仕事をしています。出身は徳島県で思春期はずっとファッションに夢中になっていました。時代的にもファッションが盛り上がっていた時期だっだので、都会に出てファッションの仕事を極めました。

BEAMSに11年勤務した後、一転して親の都合で農家に転職して年間150トンのイチゴを生産販売していました。

現在はヴィレッジズという会社を立ち上げ、空き家や使われてないスペースなど地域で埋もれている資産とアートを融合させてる事業を展開しています。

例えば、スナックを面白く解釈して普段行ったことの無い層に翻訳して伝えるべく、東京のアーティストさんとコラボしたり、古民家で展示会などもやっています。

私の事業に興味を持ってくれたアーティストさんやIT事業者なども巻き込んで、空き家のDIYもしています。単なる空き家を改修するだけでなく、どんな人を呼んで盛り上げるかを意識していますね。

北川さん:文化工学研究所という建築の会社を経営しています。建物の意匠設計だけでなく、風や熱の流れをシミュレーションしたりしてます。ずっと建築設計をやっていたのですが、機械設計をやっていた父と一緒になにかやれば、面白いことができるのではと思いました。

コロナが流行っている今、移住が注目を集めているから郊外の空き家を改修したりもしています。単に改修するだけでなく、少しでも地域に貢献できるように活用できないか考えている。

またCOCCAというプラットフォームを運営しています。コンセプトは「人と時間、場所が閉じた’()「カッコ」を反転してつなげること。時間なんかまさにそうで、どこの会社も四半期決算の事しか頭にないから100年先は見据えていません。

コミュニティもカッコで閉じているケースが多く家族なんか典型ですね。

コラボレーションはどこでもやっているけれど、世代ジャンル組織を超えてやりたい。普段我々が無意識に閉じているものをひらきたいという思いでCOCCAを運営しています。とくにリーダーがいるわけではなく、自律型のコミュニティにしていますね。

地域の魅力を引き出してネイバーフッドを実現する方法

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浅井さん:田村さんは、地域の魅力を引き出して可視化しようと思ったきっかけはなんですか?

田村さん地域へのコミットを意識しているからです。見てくれという表層的な意味ではないその場所の美しくありたい、表現したいという思いの先を目指したい。その、ダメダメだけど美しいみたいなところを実現するために、地元との結びつきが重要かなと思ったんです。僕が運営しているヴィレッジズもそこに理念がありますね。

浅井さん:ふつうは気づかない地域の魅力を発見できるのは、地元愛があるから?

田村さん愛憎の両方が必要だと思います。神戸も長いが好きなところもあれば嫌いなところもある。表裏があることが気づきの原点ではないですかね。逆もあります。僕も最初は徳島のことをキライキライと思っていたけれど、見落としていた良い点に気づけた。

浅井さん:場所と時間軸を意識しているような気がするのですが、そのような捉え方をしたのはいつくらいからでしょう。

田村さん:転職してからですかね。ファッションから農家という違うジャンルに飛び込むような人は、両者を切り離してやるイメージが強いと思います。しかし、僕は不器用だからできなかった。しかし、イチゴの業界でアートを混ぜている人はいなかったから、わりと上手くいきました。

北川さん:アーティストを呼ぶにしても地元の人を呼ぶにしても、そこにあるいいものを使おうとしているのを強く感じましたね。

田村さん今あるもので、一緒に面白がれることが大切だと思います。僕の地元にさびれたホテルがあるんだけれど、そこには400円で入浴できる温泉がある。しかもフリードリンクでWiFiつき。これって400円でドロップインできる温泉付きのコワーキングですよね。こう考えると面白いから紹介した。

浅井さん田村さんは面白さに気づく能力が高いと思う。そしてアイディアを膨らませるのも上手い。

岩田さん:ネガティブな質問ですけど、田村さんが面白がっているものに反対する人がいる場合はどう対処していますか?

田村さん:僕は乱暴ですけれど無視しています。分かってくれない人に使う時間はないからね。しかしオープンな場所にして面白がってくれる人を集めていれば、いずれ反対していた人も足を踏み入れてくれる。

対話の深さがコミュニティの良さを引き出す

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北川さん:日本で建築の勉強をした後にイタリアの建築事務所で働いたことがあるんですが、大きな違いがある。日本人は作品を作るときは一人で完結する一方で、イタリア人は個がしっかりしているから、コラボレーションの仕方を教え込まれる。だから西欧の人は地域単位で何ができるか考える人が多い。

日本人は同調するかケンカするかのどちらか。プロジェクトを良くしたいなら誰の案でもいいはずなのに、日本人は閉じている。実は日本人の方が自己中心なのではと思ってしまいます。地域のことをあまり考えていない。

僕は毎晩飲み歩き、建築やっている人と出会ってコラボレーションの話もでてきた。その中で、COCCAというプラットフォームを考案。建築の人が多かったけれど、一人だと行き詰る人が増えてきた。

浅井さん個性があればあるほど、バラバラになりますよね。そうするといかに深く対話するかが重要。そこを疎かにするといいものは生まれない。僕はアートディレクターをやっているんだけれど、一般的なやり方の場合、ディテイルまでプランをきっちり固めてメンバーにやるべきことを投げかけるんです。しかし、それでは面白くなくなるんだよね。

だから、企画の大枠だけ決めてメンバーにアイディアを出してもらいながらそれらをディスカッション、ブラッシュアップし、統合していった方が予想外で豊かで面白いものができ上がる。ただクリエイティブディレクターは、本質から逸れないようにだけ舵取りをする必要はありますが。

北川さん:グーグルの哲学で1人の天才より10人の凡人っていいますもんね。ただ浅井さんの話はそれだけじゃなくて、不確実性を上手くコントロールしているような気がする

浅井さん:そうですね、いいもの出てきたらトクした気持ちになる。出発点は最初はやせ細った木だったけれど、枝葉や花がついてリッチなものが育っていく。最終的に作品としてまとまるんですよね。多様性もでてくる。

田村さん:僕が徳島いた時はもっとひどくて、不確実性がポンポン出てくる面白さを優先して、コントロールしようとしなかったんだよね。結局、それを面白がることができるようになった。地域と言う寛容なプラットフォームで実現できたのはいい経験でした。しかし、アートプロジェクトだと難しいので、それを受けて、しっかりまとめられるようにしたい。もちろん不確実と面白さをキープしながら

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浅井さん:相手が出してくれたカードで新しい気づきが得られる。それからまた新しい気づきを得て投げ返すんだよね。そのキャッチボールがまた面白い(笑)

北川さん:シンポジウムに出るときに上の世代からよく言われるんだけれど「君妥協しているんじゃないの」って言われるんですよ。民主主義的に進めているんじゃないかってね。

田村さん:岩田さん:浅井さん あ~(同意)

北川さん:とある有名な建築家が「建築は独断と偏見で進めるべきだよ」って言ってたんだけど、確かにそれには同意したんですよ。10人集まったって出来上がるものも独断と偏見だよ。ただ僕は民主主義的にやっているわけではない。ABCDという4つの中から一つを選ぶんじゃなくて、弁証法的対話を通じてより面白いものを生み出そうとしているのですよって返した。

浅井さん:建築だと弁証法的アプローチは大切かもしれないですね。建物はみんなが使う場所だから。いろんな人のニーズの調和がとれている物を作ろうとすることで精度があがる。広告業界でもバックグラウンドの違う人3人の意見を聞けって言われるんです。そうするとバランスが取れた精度の高いアイディアができあがってくる。自分のビジョンだけで突っ走ると失敗しますね。

岩田さん:そのあたりって自分のカッコを外すことが大切なんでしょうか。でも「こうだ!」って思いたい部分もあるんじゃなかなーと。そもそも、どうやったら自分というカッコに気づけるんでしょ。

浅井さん自分というカッコってずばらしい言葉ですね。今回のテーマと言えそう。

岩田さん:いいコラボレーションって自分のカッコを外すところから生まれていると思うんです。

北川さん:見えない境界って自分でも気づいていないところがあって、外に出て初めて気づくんですよね。

浅井さん:やっぱ、対話ですよね。

多様性を生むパブリックスペースにするには?

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北川さん:いろんな人との話を聞くと意見が薄まるって言われるけれど、実はそうじゃない。日本の都市計画でも問題になっている所があって、居住区と商業エリアが完全に分けられているんですよね。あれでは多様性は生まれない。とあるビルが全てスナックとか典型的な例です。結局そこには似たような人しか集まらない。

浅井さん:今、パリやバルセロナなどで取り組みがされている15分都市って構想があって、徒歩15分圏内に生活に必要な全てのものが揃うというものなんです。そうすると車移動がなくなってサスティナブルになるし、エリア内にコミュニティーや地域ごとの独自カルチャーが生成されていきます。一方日本は何でも合理的にしてネイバーフッドを壊している。

田村さん:その点では田舎っていうのはすごくいい機能があるとおもうんですよ。田舎は強制的にネイバーフッドが確立されてるから、異分子な人を取り込むと思いもしない人と意気投合することがある。よそ者が地元の飲み屋で建設業のおっさんと盛り上がるとか。

北川さん:特定の目的に頼らない場づくりをしたいと思っているんですけれど、僕もどうやって実現したらいいか分からなくて悩むんですよ。特に下の世代にとって、すごく敷居が高いんじゃないか。僕たちは気軽に来てほしいけれど。

田村さん下の世代の人にアクセスするのが難しいですよね。俗にいうソーシャルな場所を作ると、意識高い子は来るけれどそれだけじゃあ・・・。

岩田さん:そうなんですね!

浅井さんONPAPERって週1でイベントやっているんです。いいなあって思うのはお勉強会的なことをしているうちに、気づいたら、ただの飲み会になっているということがよくあるんですよ(笑)そこでテーマから外れて、話題が雑談になり、多様化していきます。それもカッコを外す事になることになるんですよね。

この前つまみ1グランプリなんてハッチャけたイベントがあったけれど、すごく盛り上がった。

参加者一同:笑

北川さん:僕らが試しにやろうかと言っているのが、誰かの棚を売ろうかという店。10代から60代の人が本などを売れば、違う世代の人に興味を持ってもらえそう。

浅井さん:クロスカルチャーでいいかも。ただ自分の本棚は恥ずかしくて見せられないな(笑)

田村さん:世代ことにセグメンテーションされる多様さが面白いですよね。

北川さん:電子化でクロスカルチャーになりにくくなるっているような気がしますね。興味のなかった本をチラっと見るみたいなのができにくくなっている。電子書籍は結構進んでいるし

浅井さん:SNSも競争社会になっているから、自分のカッコイイ物しかみせないんですよね。それって自分の本棚じゃないから面白くなくなる。

北川さん:これはDJあるあるなんですけれど、自分の曲をMP3だとシェアできない。CDであれば貸し借りしやすい。アクシデント的な感じで。

田村さん:アクシデントで言うならぜひSNSで男性の方試してほしいんですけれど、インスタの虫眼鏡マークいっぺん押してみてください。メチャメチャ恥ずかしいのでてきますから(笑)自分の具みたいなのがでてくる。

岩田さん:それは一回も見たことないようなものが出て来るんですか?

田村さん:そうなんです。しかも男性と女性で出てくるものが全然違う。実はSNSでもアナログの本棚みたいに個人的な嗜好を共有できる部分は結構あるんですよね。

浅井さん僕もFacebookもtwitterもやっているんですけれど、見え方を考えて投稿していると疲れちゃう。

岩田さん:そうやって自分の偏愛や興味関心を検索を通じて育てるのも大事なんですかね。調べたことが幹になっていくと言うか。

北川さん:SNSでも自分の興味を超えた不確実性に出会える事が必要ってことですか。

田村さん:それは絶対に必要。足らない部分ですよね。本屋的というかレコード的と言うか。

浅井さん:SNSではバックでAIが動いていてユーザーの行動に合わせたおすすめの商品やサービスを出してくるんですよね。だけど似たような物ばかり推薦してくるからつまんなくなる。spotifyなんて似た曲ばかりレコメンドしてくる。AIによって人々がちっちゃな島にくくられていってる。フィルターバブルっていうんですけれど。だから、その枠を壊さなくちゃいけない。

岩田さん:それこそ浅井さんが言っていたアソシエーション(都市によくある同じ興味関心を持った人の集まり)になるんででしょうか。ネイバーフッドみたいに地域とのつながりを通じて自分の常識や殻を打ち破って、多様性を保てそうな気がします。

浅井さん:そのとおり、東京でも仕事に関係する人しかつながらない。

田村さん:ストリートという目線はいいと思います。例えば、スケートボードとかだと、何気ない通りの縁石とか、どこが擦れているかで、どんな滑り方をしたかわかる。スケートボードに限らず、散歩中に思いもしない店に目をとどめるだけでも全然視野が広がる。自分の嗜好性を持ちながら町を歩いて色々デコードしていくのは面白いんじゃないかーと思う。

ストリート

岩田さん:普段歩いてる町をあえてスケートボードで回ると見える景色も違ってくる。それは自分のカッコを外すことになっているんでしょうか。

田村さん:それもあると思います。

浅井さん:時間軸を超えた体験とも言えそう。

田村さん:そうですね、ストリート考古学的な感じ

浅井さん:田村さんと北川さんの話や今回の企画もそうだけれど、触媒だなーって思ったんですよね。個性のある人が点在しているんだけれど、その人たちをどうつなぎ合わせるかが触媒の役割だと思います。

田村さん:そうですね。僕の関わるところは触媒にしていきたいなーと思っています。町にベンチを置いたりとか。

浅井さん:COCCAとかも先鋭的な触媒な気がしますね。

北川さん:触媒的なところで今やらなきゃいけないなと思ってできていないことが、場をマッサージすることなんですよね。

岩田さん:場をマッサージというのは?

北川さん:みんなカタいんですよね。世代の違う人が初めましてで始まるあの感じ。クロスポイントとかったらもっとほぐれると思うんですけれど。アイスブレイク的な物が必要ですね。

浅井さん:それは岩田さんの得意とするところですよね。コミュニティマネージャなので。

岩田さん:実は私も感じているところがあって、私青学のワークショップデザイナー育成コースに参加しているんですけれど、オンラインで全く知らない人たちとチームを組まれるんですよ。もちろんみんな固いんですけれど、一人めっちゃ安室ちゃんすきなおじちゃんがいてバーチャル背景も安室ちゃんなんですよ。それだけで緊張がほぐれると言うか。

みんなが真剣に考えているところをギャグかましたりとか(笑)みんなはそのおっちゃんをマッサージ師と呼んでいます。ああいうの大事やなと思いました。

田村さんスナックにもいますね。その人がいるだけで場の雰囲気が変わるみたいな。僕はその雰囲気づくりを人に頼らずできないかって考えていますね。そういう意味ではアートは結構いいツールですね。面と向かってしゃべらなくても作品を見ながら話せばいいから。

ネイバーフッドの実現においてパブリックスペースの活用は不可欠

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今回の対談では田村さんと北川さんにパブリックスペースの活用方法をお話していただきました。

ネイバーフッドの理念である「場所に根差した人間関係」を築くためにパブリックスペースの活用は不可欠。

地域の資産を利活用し、多くの人を巻き込んだプロジェクトを展開しているお話は大変興味深かったです。

人が出会う場づくりに悩んでいる方にとって、この記事が役立つと幸いです。

この記事を書いた人:喜多村道秋

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