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Type& 2023に登壇しました

こんにちは。フォントかるた制作チーム、2号こと伊達です。

Type&(タイプアンド)は、世界最大のタイプファンダリーであるMonotype社が日本で主催する書体のセミナーやワークショップなどのイベントです。タイプデザイナーやカリグラファー、組版、デザイナーなどさまざまな書体に関わる方々をゲストに毎年開催されています。
ロゴもその年ごとに違っていて、それを見るだけでも楽しいです↓

コロナ禍でオンライン開催が続いていましたが、2023は3年ぶりのリアル開催となり、なんとフォントかるた制作チームをゲストスピーカーとして呼んでいただきました!
「書体で遊ぶ・親しむ」をコンセプトに活動を続けてきたフォントかるた制作チームにとって6年目の大きな節目となるできごとなので、記録として残しておきたいと思います。

2023年6月17日(土)渋谷ヒカリエホールB
我々はSession 1の『フォントかるた的 欧文フォントの遊び方』というテーマで1時間、Monotypeの小林章さんとお話させていただきました。

MCはクリス智子さん(いつもラジオで聞いているあのお声で、タイプデザインにもお詳しい。本当に素敵でした…❣️)。Instagramで『フォントかるた』もご紹介くださいました!ありがとうございます。


写真提供:フォントおじさん

セッションの内容については、いずれアーカイブがMonotypeのWebサイトに掲載されるそうなので、そちらでご覧いただくとして、ここではセッションで語りきれなかったいきさつなどについて書いておきます。

そもそもフォントかるたって?という方はこちらをご覧ください。

2017年の1月。仲間うちの新年会で余興のために1号ことせきねめぐみが作った『フォントかるた』。これを製品化したのが2月でした。
勢いで500部を作ったけど、どうやって売ろうかと思ってたらあっという間に売り切れて増刷することに。「やったー」と浮かれているちょうどそのタイミングで、上田寛人さんたちが主催されている『和文と欧文』に、中村征宏さんと小林章さんが登壇されることを知ったのです。

実は『フォントかるた』には、写研書体への憧憬が各所に詰まっています。中でもナールとゴナは、DTP以前のデザインで見ない日はないほどの人気書体であり、その両書体を作られた中村さんへのリスペクトはかなり大きかったのです。しかもナビゲーターとして小林章さんがアサインされているとなれば、これは行かない手はありません!
1号、2号、4号の3人で大阪へと向かいました。

ここで1号が急にOsaka(フォント)の話をし始めたのはいい思い出
「おおさかってさー」という(周りから聞かれたら)大き過ぎる主語だったと思われます…


貴重なお話がもりだくさんで、至福の時間でした
グラフィックレコーディングがまた素晴らしかった!

『和文と欧文』の上田さんは「自分が知りたいことを話しに来てもらってるだけです」とおっしゃっていましたが、『和文と欧文』の人選眼とそれを実現させる力は本当にすごい!特に中村さんは、なかなか表に出てきてくださらない方だとと思っていたので、お話を聞けただけでなく、ナールやゴナの原字を見せていただいたり、テレビのタイトル文字などの原稿を拝見できて大感激でした。
そしてこのトークショーのおかげで、中村さんと中村さんのご家族の方、小林章さんに『フォントかるた』をお渡しできて、面白がっていただいて、その後もお話ができるようになったことも本当にありがたいことでした。フォントかるたの第二章<欧文編>もここから始まったと思います。

ゴナUの原字。のびやかで美しくて力強い。
中村さんがフォントかるたキーホルダーと一緒に写真を撮ってくださいました(感激)

Type&では、この懇親会の席で小林さんと「フォントかるたの欧文版も作りたいので、監修をお願いできませんか?」「いいですよ。やりましょう!」というやりとりがあったとご紹介したのですが、そんなずうずうしいお願いを誰がしたのか…。たぶん2号(わたし)なのでしょうが、今でもよくそんなことを言えたなと呆れます。

ともあれ、このときに小林さんにご快諾いただけたのが、わたしたちの心の支えになっていました。それは実際に監修いただけるからではなく、欧文フォントでの『フォントかるた』があってもいいんだ。ということを確認できたからだったからです。

書体を作るということは、一貫したデザインで少なくとも数十字から、多いものでは数万字を形にしていく途方もない仕事です。わずかな線の太さやカーブの違いが、書体の印象や使い道を変えます。
われわれはグラフィックデザイナーやイラストレーターであり、普段はフォントを使わせていただくだけの立場です。本当はあの書体がいいとか悪いとか、好きとか嫌いとか、そんなことを口に出すこともおこがましいんです。実際に悪いフォントなんか世の中にひとつもなくて、使い方が合っていないだけだったりします(創○角ポップ体のように)。タイプデザインのことを知れば知るほど、そう思うようになりました。
が、我々はその書体を、あろうことかゲームになんてしてしまい、勝手な解釈と印象で解説なんぞつけてしまい、「書体いっぱい!みんな違うね!楽しい!楽しい!」なんてやっているわけです。
いつも心の中にどこか申し訳ないような気持ちがあって、特にファンダリーの方やタイプデザイナーの方に会うと挙動不審になっていました。

 でも、中村さんや小林さんは、「面白い」と言ってくださいました。「こうやって楽しみながら覚えてもらえるのは、タイプデザイナーとしても嬉しい」と。書体の知識やタイポグラファ(書体を使って制作する人)としての力量も足りていない我々に、「あななたちが面白い、楽しいと思うものを作ることが、一番ですよ」と言ってもらえたことが、本当に大きな心の支えになりました。

その気持ちを忘れず、自信を持って『フォントかるた 欧文版』を作るために、2号のパソコンモニタにはずっと、大阪でお会いしたときにいただいた小林さんの名刺をくっつけてました。「づ」は、このときリリースしたばかりの、たづがねの「づ」。

『フォントかるた 欧文版』ができたらすぐに送って見ていただこう、と思っていましたが、
実際にお送りできるまでには時間が経ちすぎていて、もう住所が変わっていました…

そして実際に、Type&という大きなイベントに呼んでいただき、たくさんの人の前でお話をさせていただきました。これはわたしたちにとって、またひとつ上の大きな自信につながるイベントになるはずです。
できる限りの準備はしたつもりでしたが、緊張のあまりうまく説明できなかったことや、飛んでしまった内容もありました。お聞き苦しかった点は、お詫びします。

我々にとって何より楽しく幸せだったのは、懇談会での小林さん+3人の勇者たちによる『フォントかるた 欧文版』デモンストレーションでした。優勝は小林さん。フォントの見極めはもうもちろんなんですが、パシーンと札を飛ばしながら取る、かるたゲームもめちゃめちゃお強かったです!
動画も撮影していますので、掲載の確認が取れたらTwitterやInstagramで公開したいと思います。

2号手作り(レーザー加工器とUVプリンターの力を借りて)のキーホルダー
Monotypeさま所有のガチャマシーン!で楽しんでいただきました

Type&でもお話させていただいた、『フォントかるた 欧文版』ができるまでのあれこれも、いずれnoteにもまとめたいと思います。

ここではどんなゲームなのかを知っていただける遊び方動画をご案内。

わたしたちが少しずつ、これでいいんだと確認しながら進んできた5年間。今回のnoteでご紹介できたのは、上田さん、中村さんやご家族、小林さんのお話だけでしたが、ここに至るまでには『フォントかるた』を応援してくださった、文字界隈のみなさま(名前を挙げ始めたらキリがなかったのでやめました。このnoteを読んでくださっているあなたです)のお力があってのことです。

『フォントかるた』に収録した、あるいは収録しきれなかった多数のフォントを作ってくださったタイプデザイナーの方々、ファンダリーの方々はもちろん、書体やその歴史などの知恵を授けてくださった偉大な先生方、参考になる文献を残してくださった諸先輩方(我々の存在は知ることもないと思いますが)に改めて深い敬意と感謝を申し上げます。

タイプデザインについて、あるいはゲームとしての『フォントかるた』にアドバイスや協力をしてくれたたくさんの方々。あの人もこの人もいなければここまで来ることはできませんでした。ありがとうございます&引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

そして「フォントかるたって面白い!」「フォントってこんなに種類があったんだ」「見比べてみると違いがわかるもんだね!」「解説を聞いたらわかった!」「推しフォントだけは絶対取りたい!」と、『フォントかるた』を遊んでくださったみなさま。その声が我々の喜びになり、次への原動力につながっています。出会ってくださって、柔軟な心で楽しんでくださって、本当にありがとうとお伝えいしたいです。

最後に、Type&でもお知らせさせていただいた通り、わたしたちー(ぼくたちー)『フォントかるた 欧文版』=『Font Karuta』を、日本だけでなく世界の方々に楽しんでいただく活動、新しいステージ(フォントかるた第3章?)にチャレンジします!(チャレンジします!)

手始めに今年の10月にドイツのエッセンで行われる、シュピール・エッセン(SPIEL ESSEN)2023という、世界規模のボードゲーム見本市に出展することを決めました。

かるたは世界ではあまり知られていないそうなので、ゲームの説明がうまくできるか?ドイツ語どころか英語もおぼつかないメンバー2名(2号+4号)で乗り込むので、不安もいっぱいです。

シュピール・エッセンに参加するよ!という方や、アドバイス、現地情報などお持ちの方はいろいろ教えてください。海外での販路や販売についての知識をお持ちの方もいらしたらぜひ。

これまでにみなさんに与えてもらった自信を胸に抱えて、精一杯珍道中してこようと思います。どうか引き続きあたたかく見守ってください!
珍道中+文字旅の模様も、このnoteでお伝えできたらと思います。

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

それぞれ推しフォントで作ったスタッフTシャツ
和文版と違って「普通に着られる」と好評です😅

フォント名を読み上げて、そのフォントで書かれた札を取る。「フォントかるた」の制作チームです。書体やフォントに関するあれやこれを楽しく綴ります。https://www.fontkaruta.com