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戴冠式を飾るフォント

こんにちは、フォントかるた制作チーム2号こと、伊達です。

2022年9月8日、イギリスのエリザベス女王が死去され、新たにチャールズ3世新国王が即位。それに伴い、イギリスではチャールズ3世の肖像が描かれた紙幣や硬貨、切手が新たに発行されたり、国歌の歌詞が変更(「God Save the Queen」を「God Save the King」に)なったりしたそうですね。

そして2023年5月6日。ロンドンでチャールズ3世の戴冠式が行われ、その様子は世界中に中継されました。わたしは外出中だったので、翌7日に動画を見ました。歴史ある建物、司祭や各宗派の法衣、世界のセレブたち、儀式用の宝物や馬車などなど、映画の中のような映像を楽しませてもらいました。

まあでもわたしたちフォント好きにとっては、気になるのはやっぱり文字。特に気になったのが、国王夫妻を乗せた馬車がパレードで通過した、アドミラルティ・アーチに飾られた青いフラッグです。


アドミラルティ・アーチに飾られたフラッグの下を馬車が通過

あいにくの雨模様ですが、ロイヤルブルーのフラッグには上部に花のモチーフ、下部にHAPPY & GLORIOUS(幸せと栄光を)の文字が見えます。
またフラッグの上には、丸い形の戴冠式のエンブレムが配置されています。このエンブレムは、2022年までAppleの最高デザイン責任者を務めておられたジョナサン・アイブ氏によるデザインだとか。フラッグの上部の花のモチーフと同じに見えるので、フラッグのデザインも氏によるものではないかと思われます。

このフラッグに書かれた「HAPPY & GLORIOUS」の書体は、MonotypeのAlbertus Nova。

線の端が広がり尖った形になっているのが特徴

2017年にMonotypeのシニア・タイプディレクター(当時)の大曲都市さんが復刻デザインした書体です。大曲さんのブログに書体の詳細がありました。

これは嬉しいですよね。そして戴冠記念切手にも使用されていたんですね。英国王の戴冠式に日本人の書体デザイナーさんのフォントが使われるなんて、同じ日本人(こちらはただのフォント好きですが)として大感動です。

わたしがこのフラッグで感動したポイントがもうひとつ。フラッグの7枚目にあたる「&」の左右(つまり6枚目と8枚目)には文字のないフラッグが下がっています。こんなふうにスペーシングする方法があったのか!と。
ラテンアルファベット圏内の方々には普通のことなのかもしれませんが、これはわたしにはとても新鮮でした。

控えめながら華やかな花のモチーフ。これは連合王国を構成する4つの国を象徴しているそうで、イングランドはバラ、スコットランドはアザミ、ウェールズは水仙、北アイルランドはシャムロックなのだとか。
花のモチーフに彩られ、歴史ある書体の復刻フォントが現代の王国行事を飾る。こんな光景をリアルタイムで見られたことがとても嬉しい2号でした。

フォント名を読み上げて、そのフォントで書かれた札を取る。「フォントかるた」の制作チームです。書体やフォントに関するあれやこれを楽しく綴ります。https://www.fontkaruta.com