見出し画像

かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~種類豊富な低木たち~


 前回は、なぜ低木は低木のままなのか、といったようなことを最後に少し書いた。そして、それには理由があると考えられるのだが、まあ、そんなことをわざわざ気にしなくとも、林や森にある草木をそれがどういったタイプのものなのか(低木なのか高木なのか、陽当たりのいい場所を好んで生えるのか日影がいいのか等々)、という視点で見ていくことはなかなかオモシロイと思います。

 さて、そんなかつての里山に生える低木を続けて見ていきます。上の桃色の花が咲いているのはヤブウツギ。高さは2~3メートルほどになり、陽当たりのいい森や林の縁で、なおかつやや湿り気の多い場所でよく見かけます。

やや筒状というか、釣鐘状の個性的な形で、紅と桃の中間のような微妙な色合いの花を咲かせます。一つの木にたくさんつけるので、新緑を過ぎた初夏の緑の葉との組み合わせで目に鮮やか。虫たちもたくさん集まります。

 さて、上はヤブコウジという低木。写真ではわかりづらいかもしれないが、高さは10~20センチ。茎のような部分が木質化していて、これでも”木”に分類されているのです。これ以上、大きくもならないし、太くもなりません。完全に木の概念を逸脱してしまっているように思えます。

 花は純白で可憐。森の地面でこの花を見つけると、思わずうれしくなります。

 上はヤマウルシ。高さはせいぜい1~2メートル。大きくなっても数メートルの低木。そう、いわゆるあの”かぶれる”木です。コナラやアカマツといった比較的日当たりのいい、かつての里山によく生えています。光をたくさん受けられるように葉が放射状に伸びている。
 人によってはこの木に近づくだけでかぶれてしまうこともあるようですが、わたしの経験上ではそういう人はごくまれ。わたし自身は葉に触ったぐらいではかぶれず、葉の茎のような部分(上の写真では赤く見える部分)が折れると出てくる、いわゆる”樹液”が肌に付いてはじめて”かぶれ”ました。ただ、少し付いただけでとてもかゆかったです。さらに、かゆいからといってかいてしまうと、まだその成分が残っていたからか、かゆい部分が広がってしまい、1~2週間、悩まされました。お気を付けください。

 ウルシとはいえ、このヤマウルシは漆塗りのウルシとは別物。高さ1~2メートル、幹の太さが数センチほどではそこから出てくる樹液の量はわずかでしょう。漆塗りに使うウルシの木は高さ10メートル以上、幹の太さも数十センチになる中・高木です。種名はたんに”ウルシ”といったかな?

 上は花。目立ちませんが、ちゃんと蜜を吸う虫がやって来ます。

 実はこんな。実といっても果肉の部分はほとんどありませんが、どういうわけかタネを覆っている皮のような部分に塩分が付いています(実際になめてみるとしょっぱい)。ひょっとするとこの塩分を求めて鳥やなんかが実を食べ、糞としてタネは離れた場所に運ばれていくのかもしれません。冬の山に入る猟師やきこりの人たちは塩分補給のためにこの実をなめた、とどこかで聞きました。


 上は三角帽子をかぶったような冬の芽(冬芽)、下は葉の落ちた跡(葉痕=ようこん)。葉痕は赤い顔のサルに見えなくもなく、植物の造形の面白さがあります。

 春の芽吹きは上のようなので、”山菜の王”と言われるあの”タラの芽”と間違って食べてしまう人が結構いるよう。食べたらどうなるのかは知りませんが、こちらも気を付けて。ちなみにタラの芽には小さなトゲがあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?