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かつての里山に暮らす動植物 その3  樹木 ~バラエティに富んだ生態~


 さて、今回もかつての里山に生える低木の話。上の純白の花はコバノガマズミという木のもの。高さはせいぜい1~2メートル。木漏れ日の差すような林のなかでもよく見かけます。初夏の日差しを純白が反射してそれは鮮やか。わたしの好きな花の一つ。

小さな花が集まり合って大きな一つの花のように見えます。実際、こうして集まり合うことで、少し体の大きな虫が来てもその上に乗って蜜を吸ったり、花粉を食べたりできるようです。一見、アジサイの花にも似ているのですが、アジサイはアジサイ科、こちらはレンプクソウ科。でも、系統的には近かったかな?・・

 上はなにかの木の実が釣り下がっているように見えますが、よく見ると花。

とても可愛らしいキブシという木の花です。こちらも高さはせいぜい数メートル。小さくて地味な花ですが、まだまだ寒さの残る早春に咲き、この花を見つけるといよいよ春が来るな、と少しうれしくなります。

 こんな低木もありました。ご存じクチナシ。静岡に暮らすまでは、クチナシが自然に山のなかに生えるとは思っていませんでした。

人家の庭先には八重咲の派手なものが植えられているのをよく見かけますが、それは品種改良されたものなので、いわゆる”クチナシの実”は成らなかったかな・・?

 花から漂う香りはとても強くてかぐわしく、離れていても「ああ、クチナシが咲いてるな」とわかるほど。その匂いに誘われて、ホウジャクというガの仲間が蜜を吸いにやって来るようです。夜に。白色は月あかりを反射することもあるのでしょうか。

 上の写真が実。このなかにタネが入っているわけですが、実が熟しても割れたり、はぜたりしないことからクチナシ(口無し)の名がついたそうです。では、どうやってなかのタネが散布されるのかというと、鳥なんかがこの実をつつくそうですから、その際に落ちたり、食べて運ばれたりするのでしょう。

 ご覧のとおり鮮やかな橙色をしており、この実をつぶしてご飯を染めたり、各種染め物の染料になります。

 低木類の花は、花粉を風で飛ばすことなく、虫たちに来てもらって運んでもらわなければならないため、その姿形や発する匂いなど、とてもバラエティに富んでいます。

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