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かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~植物にとっての花、人にとっての花~


 さてさて、やはり草の種類は木に比べると圧倒的に多い。それだけ、さまざまな微地形・微環境に適応しようと分化を続けてきた結果だろう。上はオトコエシ。秋の七草にオミナエシというのがあるが、オミナ(女)に対し、こちらがオトコ(男)。全体的な姿や花の形はよく似ているが、花の色はオミナが黄。また、昔の人がこう認識していたかどうかはわからないが、オミナは繊細で、いま、各地でその数を減らしているのに対し、オトコは図太いのかそれほど減っていない。


林の縁のような日当たりのいい場所で群生するため、咲き誇ると上のよう。じつに美しい。

オミナ(女)の花は独特の匂い(臭気)がするのに対し、こちらはあまり香らない。このあたりのことも昔の人はその名前に込めていたのかどうか。

こちらは地面と同化しそうな色のカギガタカンアオイの花。暗い林の地面に冬、ひっそりと咲く。


 上はつぼみ。葉を撮った写真がなくて残念なのだが、いわゆる”葵の御紋”の葵は、この植物の仲間の葉をいう。どうしてこんな地味な植物の葉を家紋にしたのか正確には知らないが、寒い冬でも青々とした葉を付けているところが生命力の旺盛さを象徴したのだったか。
 できたタネにはアリのエサになるようなものが付いており、アリが巣に運ぶことによって子孫が広がっていくという。なので、遠方にまでは運ばれず、地域ごとにさまざまな種が存在するようになった。

 最後はカンスゲ。名前に”スゲ”と付いているようにカヤツリグサ科の植物なのだが、この仲間は花といってもご覧のとおりのものである。ちなみに上は雄花で下が雌花。花は虫をおびき寄せる虫媒花ではなく、風で花粉を飛ばし、それが雌しべにくっつくことで受粉が達成される風媒花である。

まあ、いずれにしろ普通は花とはいえないような花なのであるが、どういうわけかわたしは早春の森の地面に咲くこの花が好きである。

花とは思えないような花、という希少さがいいのか、薄黄色の小さなハケのような姿が愛らしいのか、とにかくこの花に会うとうれしくなってしまう(春が来たことを感じるからかな)。

 人は鮮やかな色や香り、そしてその愛らしい姿に花の魅力を感じるのだろうが、植物自体はそんなこととは無関係に花を咲かせ、子孫を増やす。そういえば、この春からわたしの住む浜松では”浜名湖花博”という、各地の様々な花を集めたイベントが始まった。それはまぎれもなく、花の色や香り、そしてさまざまな姿を楽しむためのイベントなのだが、そうした人間の側からだけ見た花の楽しみ方にわたしはあまり関心が湧かず、「行きたい」と言っている家族に対してあまりいい反応をせず、反感を買っているようだ。



 

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