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かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~草のもつ力~

 さて、これまでかつての里山に生きる動植物について、キノコ、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、昆虫、樹木などのことを書いてきた。しかし、どうして自分はこんなことを書いているのだろうかと、ふと考えてしまうことがある。書きたいことがあるから書いている、といえばそれまでなのだが、ではどうして書きたいのか、そして、どうしてその書いたものを他人になど見せたりするのだろう。そんなことを思ったりしてしまうわけです。

 自分が感じた(良かった、悪かった、おいしかった、まずかった、面白かった等々)もの(こと)を他人に伝えたくなる、というのは人間の本性のようなものなのかもしれません(もちろん、そうでない人もいるでしょうが)。しかし、感じることにはさまざまなものがあって、「○○という店のカレーが旨かった」とか「昨日、街で見かけた女性がかわいかった」というものもあれば、「きょう読み終えた△△という本は、わたしのいままでの概念を覆すような内容で、鳥肌が立つような思いをして・・」などというものもあります。

 結論から言うと、わたし自身はそこに不思議というか、謎というか、つい、考えたくなるような何かがないと書く気にはならないようです。おもしろいなと思ったもの(こと)を、ああじゃないかこうじゃないかと書きながら考えるというか、整理するというか。そして、その考えたことを自分の言葉で書き記すことで、一応、答えのようなものを出す。さらに、その答えのようなものを他人に見せることで、「こんなことを考えたのだけれどどうだろう」と、第三者(読む人)の客観的視点も得たいのだと思います。

 さらに、恥ずかし気もなく書くと、そんな、考えたり、考えようとしたりして出てきた答えのようなものは、必ずや読んだ人のためにもなる、なんてことも思っていたりもするのです。

 なんだか本編とは関係のないような話になってしまいましたが、ここからもかつての里山に生える動植物・草編を続けるにあたり、自分なりに、書いたものを見せるということの意味を再考してみました(まあ、読まれる方には関係のない話かと思います。すみません・・)。


 というわけで、かつての里山に生きる動植物シリーズはこれから”草”編となります(一応、これが最終編)。というわけで、上はややピント外れですがスペード型の葉が十字に付いたアカネです。アカネは”赤根”、”茜”であり、この草を使ってかつて赤色を取り出したことはご存じでしょう。アカネはアカネ科という植物グループのなかの1種で、このグループの植物はどれも、葉が十字に付く(「十字対生」という)という特徴があります。

 昔から人里近くに生えていたからこそ、この草で染色をしたのでしょうが、いまもかつての里山を中心に、わたしたちの住む町の周辺にも普通に生えていたりします。


 では、アカネのどの部分を使って赤色を出すのかというと、それは文字通り、上のような”根”です。まさに”赤根”。わたしは前職で草木染のプログラムをする際にこのアカネを使ってみようと思い、初めて根を掘ってみました。すると、上のようなものが出てきたので、「なるほどっ」と強く納得した覚えがあります。アカネは多年草なので冬に地上部は枯れても地下部は生き続けるため、根は年々、太っていきます。上の写真はまだまだ細いですが、長年、生きたものだともう少し太い根になります。

 それでも出てくる色はかなりのもの。掘ったものをしばらく乾燥させ、細かく刻んで煮だしてやると、驚くほどの茜色が出てきます。植物のもつ力、というものを強く感じました。確か薬としても使われたと思います。

 ごくごく小さいものですが、ちゃんとかわいらしい花も咲かせます。茎には下向きの細かいトゲ(といっても、触ってもほとんど痛くない)が付き、角ばっていて断面が四角なので散歩のついでにでも探してみてください。

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