見出し画像

『リトルキャプテン』 11 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜

 ジョーイを家まで送ったバトンは「またね」と言って笑顔で去っていった。その日の夕方過ぎ、晩御飯を食べ終えたジョーイ一家は各々に別のことをしていた。母は洗い物、父は読書、そしてジョーイはテレビを見ていた。最初は「ぼー」とテレビを見ていたジョーイだったが、少しずつあるテレビ番組に引き込まれていった。それは、ジョーイよりいくつか年上の男子高校生が出ているドキュメンタリー番組だった。男子高校生は吹奏楽部の指揮者で、その高校は昨年の全国大会で見事優勝に輝いていた。指揮者の少年は中学時代、交通事故で肩腕を切断しなければならない状況になった。事故に会うまでは吹奏楽部でトランペットを吹き、腕前もかなりのものであった。だが片腕をなくしてからは不登校になり、家に引きこもる毎日を過ごすようになる。絶望の淵に立たされた少年は気力を削がれ、しばらく生きる意味を見出せなかった。そんな少年にあるとき「転機」が訪れた。

 ある日少年の両親が彼の気分転換のために、人気の少ない海岸へ彼をドライブに連れていった。海岸に着いた三人はは少しだけ散歩することになった。三人が歩いていると、前方に絵を書いている男性を発見した。その人の後ろを通り過ぎようとした三人だったが、思わず立ち止まってしまった。その人の描いている海の絵が、実物よりもはるかにきれいな海だったからだ。少年の父親は声をかけずにいられなくなり、男性に話しかけてみた。「素晴らしい絵ですね」すると相手の男性は「ありがとう」と言った。「失礼ですが画家の方ですか?」少年の父親は続けて質問した。「はい、そうです」と男は返事をしたが、なぜか少年の父親と目を合わせようとはしなかった。ちょうどその時、遠くから走ってやってきた女性が画家の男に喋りかけた。「あなた帰るわよ」その瞬間三人は気づいた。この女性は画家の奥さんで、目の見えない夫を迎えにやってきたということを。







#小説 #長編小説 #物語 #ストーリー #本 #書籍 #小説家 #声ブロガー #カーター #リトルキャプテン

サポートして頂いた金額は、子供達の「本代、ノート代、筆記用具代」として使わせて頂きます🥳✨今後もお役に立てる記事を書いてゆきます❣️ありがとうございます🌺