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マーケティングの新潮流

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記事一覧

マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング13

これからの新しいエモーショナル・レスポンス・マーケティングの形

かつて満員電車のなかで奇妙な感情にとらわれたことがある。

朝の中央線でのこと。車内の圧力のために不快そうな顔の女性が私の前に立っていた。駅が過ぎ、また駅が過ぎ、人に揺られて位置が変わるなかで、私は彼女の背後に立っていた。その角度は、彼女が手で玩(もてあそ)んでいた携帯電話の画面が見えてしまう位置だった。

残念ながら、私に女性の携

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング12

3 エモーショナル・レスポンス・マーケティングが利用する3つの人間心理

◎空、絶望感、自意識

昔、会社勤めをしていたころ、私の昼休みの娯楽は、ひとりで何もない空間を散歩することだった。会社横では、田舎にふさわしく、ただただ畑が無秩序に広がっていた。広大に存在する空、そこにひとり佇む自分。風の音が聞こえてくる。感傷だけがざわざわと音を立てる。会社の横にある小道を抜けて、ぐるりと40分の旅。その景

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング11

◎「人格提供」にはさらに2つのパターンがある

話が少し逸れてしまった。女性をターゲットとしてのみ語りたいわけではない。この人格を提供するという手法は、男性だろうが、女性だろうが、とても有効だ。

客が求めていることは、結局自分にどういうメリットがあるか、ということしかない。もちろん、社会的に意味があるとか、将来の世代のことを考えている人もいるだろう。しかしそれでも人間というのはどこまでいっても自

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング10

2 情報やサービスにおけるエモーショナル・レスポンス・マーケティングの手法

◎3つの手法

次に、「新商品」である情報や「コト」に関わる商品において、いかに売り手が相手を思考停止に陥れていくかという解説をしよう。

具体的に「新商品」とは、情報商材やノウハウの提供、「痩せた自分が手に入る」ためのエステや整形などのサービス提供、ゲームや映画などの娯楽、「明るい自分を手に入る」ための自己啓発セミナー

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング9

◎返報性の思考停止術

 そして、3番目は「返報性」だ。これは要するに、相手から何かをされてしまうと、ついそのお返しがしたくなってしまう、という心理だ。前章でも「プレゼント販売」の箇所で触れておいた。

これは、相手からタダでモノを貰うと、何かお返ししないといけないと考えてしまうという、人間の自然な感情だ。この心理はいたるところに使われている。

ある宗教団体が、道行く人にバラを差し出して受け取っ

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング8

1 モノを売る際のエモーショナル・レスポンス・マーケティング

◎いらないものを売りつけるための5つの心理戦略

まず、旧商品、実際のモノからだ。

エモーショナル・レスポンス・マーケティングに限らず、モノを商品とした場合には、消費者が「もうこれ以上モノなど必要がないと考えている」ことを前提とした販売活動が行われている。

冷蔵庫のない家庭はない。テレビを持たない家庭もない。その現状で、すでにモノ

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング7

エモーショナル・レスポンス・マーケティングが利用する心理テクニック

・哀しい大人たちの偶像

だいぶ前の話だけれど、ビジネスマンたちの勉強会を主催していたことがある。対象者は22歳から35歳までの、若手たちが中心だった。勉強会といっても、高尚なことは何もない。さまざまな業界の講演者たちの話を聞いて、その後、酒を飲む。それだけを繰り返していた。

勉強会と飲み会、どちらの比重が高いかというと、参加

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング6

【④新たな思想を埋めこむタイプ】~これまでの概念・思考とまったく違う思想を注入することによって、批判を抹殺し、盲信させるタイプ。

A・ 自己啓発:これも説明は不要だろう。ポジティブシンキングや自己改造を目的とした一連のセミナーのことだ。種類は大きく二つに分かれ、「人生を変える~」「夢を実現するための~」というフレーズがつくことが多い「積極的人生転換型」と、「トラウマの克服」「癒し」を売り物にする

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング5

C・ プレゼント販売:これも「訪問販売、勧誘商法」と通じるものがある。これは「返報性」を利用したものだ。「返報性」とは、人は何かをもらったら、それにお返ししたくなる習性を利用したものだ。世の中の商売の多くが、「無料プレゼント」を実施しているのは、慈善事業ゆえではない。人間のこの返報性を利用しているのだ。これは商売だけにとどまらない。よく「人から好きになってもらいたければ、まず自分がその人のことを好

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング4

ギャンブルを重ね、借金を重ね、ついにはゲームオーバーを迎えた人にも、このエモーショナル・レスポンス・マーケティングが待っている。エモーショナル・レスポンス・マーケティングは「利息を払い過ぎていませんか」と、過払い金差し戻し請求を勧めてくる。弁護士費用が払えません、という人たちには、優しく「奪取した過払い金から払ってくれれば良いのですよ」とささやく。あるいは債務整理のときにも、エモーショナル・レスポ

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング3

帰国した私は、仕事の関係で立ち寄ったJR新宿駅からから西武新宿駅に歩いていた。時間は10時前。私の前には二つの大きな行列が飛び込んできた。パチンコ店の開店を待ちわびる行列。もう一つは、スロット店の開店を待ちわびる行列だった。開店前の寒いなか、多くの人たちがただただそこに立ち尽くしていた。明らかに学生とわかる人、主婦、そして気つぶしたジャンパーを身につけたおじさんたち。常連客同士で仲が良いのだろうか

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング2

エモーショナル・レスポンス・マーケティング

年末、ばたばたしながら香港行きの飛行機に乗り込んだ。見えてきた1年ぶりの光景は、何も変わらないままだ。久々の休暇。最高気温18度は、歩く私を汗ばませる。その気温は、私に昼間から麦酒を欲させるに十分だった。九龍から始まった麦酒の旅で酔いつぶれた私は、ふらり入った女人街横のレストランで現地の料理を満喫した。動けないほど満腹になったのは久しぶりだった。

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マーケティングの新潮流~エモーショナル・レスポンス・マーケティング

呆然としてしまった状況をどのように説明したらよいだろう。

会社から自宅に持って帰ってきたハードディスク。それを買ったばかりのMacBook Airに差し込んだときのことだ。会社のOSはWindowsだから、それがそのままMACで使えないことくらいは予想できる。

しかし、そのときは焦っていたのだ。会社では終わらない作業。それをなんとか自宅で終わらせることはできないか。USBをつなぐと、ハードディ

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