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この世の果てまで

今日突然、「あ、『ジ エンド オブ ザ ワールド』を読み返したい」と思って電子書籍のライブラリの奥の方から引っ張りだしてきました。

というわけで、今日はこの本と私の出会いをお話しさせてください。

そもそも、この本と出会ったのは今日のような「読み返したい」がきっかけでした。

中学生の長期休暇中だったと思います。
「あの話をもう一度読みたい!」と前触れなく突然、強烈に思い出しました。

少年が、小さい頃に住んでいた町を訪れ、そこで泣いている男の子に出会います。彼はそれが幼いときの自分だと気づきます。男の子を助けてあげて家に帰るのですが、家族からその町はもうなくなっている、と指摘されるのです。

記憶にあるのは、塾のテストに出てきた問題か、テキストに載っていた国語の小説だということ。記憶では中学生の予習でやったような気がしていました。

取っておいた塾のテスト問題やテキストを並べて、片っ端からめくって見ていきます。
小6の終わりから中1の始めの頃のものを見てもありません。
うーん、もっと後だったか、と中学生に入ってからのものを見たのですが……ない。
小学生のときじゃなかったと思うんだけど、ていうか小学生のときのは捨てちゃったのもあるな、私小説文しか解いてないな、論説文とかすっ飛ばしてる……と思いながら調べていくと……ありました。

探しておいて、本当にあった!とうわあ!となりました。

文章の最後に書かれた出典を食い入るように見ます。
那須正幹「まぼろしの町」

さて、目的は果たしましたが、国語の問題は一部しか載っていないもの。今度は「全部読みたい!」となります。

ちょうどそのとき「買い物に行くよ」と声をかけられて、本屋にも寄ってほしいと頼みました。

本屋さんに行って、どきどきしながら本棚へ。作者の名前を頼りに探します。
「あった!」と見つけると、小学校の図書館でよく見かけた『ズッコケ三人組』の本がズラリ
「え、この人、『ズッコケ三人組』書いた人なのか!」と驚きました。「まぼろしの町」とはちょっとテイストが違う気がしたのです。
さて、周りを見ますが「まぼろしの町」という本はありません。
短編なのかも、と思って、『ズッコケ三人組』ではない本を選んで手に取りました。
ページをめくって、目次を見たら……ありました。「まぼろしの町」。

そのときの気持ちを、どう言ったらいいんでしょう。

すごく嬉しくて、目の前がぱあっと明るくなりました。大事にレジに持っていって、お金を払うときも嬉しくて嬉しくて。

今ならインターネットでぱぱっと調べられるのですが、ちょっと大冒険したような気持ちになれました。
(このとき買ったのがこの下のバージョンのもの)

この本は短編集でした。家に帰って、まっさきに「まぼろしの町」を読んで、はあーと満足のため息をつきました。

結局、幼いときの泣いている自分を迎えに行けるのは、自分だけなんだと思います。

さて。
そうして、今度は最初から読みました。一番最初が表題作、「ジ エンド オブ ザ ワールド」でした。
「まぼろしの町」のおまけくらいのつもりで読み始めたのですが。

中東で起こった戦争をきっかけに世界各地で核爆弾が爆発。避難したシェルターの中で母も父も死んでしまい、ひとり生き残った少年は、無線機でか細い声を受信します。短く話した少女に会うため、彼はシェルターから出て父の車で誰もいない道を走り出します。

最後は、車内でラジオをつけようとして誤って触ったスイッチによって流れ出した、タイトルと同じ曲が流れます。
あなたの愛を失ってしまったのに、私の心臓はまだ動いているし、太陽は輝くし、鳥はさえずる。
少年は少女に会えることを確信しながら、物語は終わります。

なかなか重くて、でも終わりが心地良くて、でも手放しで「この話好きー!」というよりもなんていうか……なんて。思ったことを覚えています。

その後、実家に置いてきてしまったので電子書籍で買い直しました。折に触れて読み返しています。

決して明るくはないお話が必要なときもありますね。


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